● お父さんもいっしょ  --- 0 ●



はじめは

「山じぃの子供の頃が見てみたいな」

と思っただけだった





イライラしながら十二番隊と十三番隊の境目でウロウロしていたマユリに

「ウチの部下が怖くて外に出れないから他所でやってくれ」

と言いに行った

ついでに何をそんなにイラついているのかと

誰かに話せば楽になるぞと言うと

最初は「大きなお世話だ」とか言っていたのに結局話し始めた



なんだ、聞いてほしかったんじゃないか

と笑ってしまった





マユリが言うには

「貴族に若返りの薬を作ってくれと頼まれた

天才的頭脳を持つ私にかかれば何の問題も無かった

全ては上手くいくはずだったのに・・・」



つまり失敗したのかと言うと酷く怒られてしまった

彼は自分の失敗ではない

ネムがグズグズしているからだ

と他人のせいにしていた



「肉体だけ若返るはずが、精神も勿論記憶も若返ってしまう薬が出来た

しかも、薬を飲んで寝たら若返り、起きれば元に戻る

その間の記憶は残らない」



これでは依頼者の注文どおりの効果が得られないではないか

と、興奮しだした





驚いたのは明らかに失敗作だとわかっている薬の効果をちゃんと調べている事だ

てっきり、失敗作はすぐに捨ててしまうタイプだと思っていたので

そう言うとマユリはフンと鼻をならし言った





「だって面白そうじゃないか」





彼のこういう所は結構好きだ





色々調べた結果

どのくらいの量摂取すればどのくらい若返るのか解ったという

もし、欲しいなら分けてやるぞ と言われたが

「機会があれば」と返事をしておいた







その時に山ジィが冬獅郎くらいの頃を見てみたいと思ったが

かなりの量を使わないとあのじぃさんは子供にならないだろうな

と諦めた



















後日、父の日は一護と会うんだ

と嬉しそうに言う冬獅郎を見て、一護君に嫉妬した結果

マユリに頼んでその薬を分けてもらうことになるとは

思っても見なかった


























明け方

何となく予感があったのか

いつもより早く眼が覚めた



二度寝する気にもならなくて、とりあえず着替えた





一時間も経たない間に

ヒラヒラと地獄蝶がやってきた



何かあったのかと指に止まらせてみれば、聞こえてきたのは親友の声





『春水!今すぐ俺の所に来てくれ!!』





焦った口調

ボクは慌てて浮竹のところに向かった





「浮竹!?」





向かった先で見たものは、今までにないくらい生き生きとした親友と

起きたばかりでまだ眠いのだろう

眼をこする子供の姿だった













「今度の日曜日?・・・・一護に会うんだ」

「そう・・・かぁ」







ガックリと肩を落とす浮竹

何を言いに来たのかは予想がつく



今度の日曜日

父の日だ



総隊長と卯ノ花だけズルイといつも言っている浮竹は

父の日は俺とやちるの父親になりたいらしい



鬱陶しい



だが、俺も護廷入隊前から色々と世話になっているし

隊長になってからも助けてもらっている

だからと言うわけではないが、実は毎年夕飯か昼食かはいっしょに食べているのだ

それに気がついていないのだ、この男は



きっと何か形に残る物が欲しいのだろう

やちると相談してみよう

アイツは虚討伐があるとかで、あの日は留守になると言っていたし





「一護君と一緒に居て楽しいか?」

「?ああ。でなけりゃいないだろ」



一緒に居て楽しくないヤツといてなにが面白いんだ?

そう答えると一瞬だが、浮竹が複雑そうな表情をした

どうしたんだ?



結局その日はそれでアイツは帰っていった













父の日の前日、俺とやちるは浮竹のプレゼントを買いにでかけた



それはアルバムで

松本に「これを浮竹隊長に」と渡されていた俺とやちると浮竹の写った写真を一枚挿んだ





これで良し

準備は出来た

後は明日一護が来る前に浮竹のところに渡しにいくだけだ





それを机の上に置いた時

浮竹が部屋の前にやってきた



慌ててプレゼントを隠す



夜も結構遅い時間なのに珍しい と思いながら

























この後、隙をみて浮竹さんは冬獅郎に薬を盛ります

一度は部屋を出て冬獅郎が寝るのを待ち

明け方に再び冬獅郎のお部屋に

↑つまり徹夜

いつ子供になるんだろう

どんなカワイイ子だったんだろう

とわくわくしながら待ってたので興奮していたようです



ちょうど冬獅郎は起きたところで、辺りをキョロキョロしていました

その時浮竹を発見

にこっと笑った冬獅郎を瞬歩で攫うとすぐに京楽に地獄蝶を飛ばしたのです





ちなみに乱菊さんはマユリさんから薬の情報を聞きつけており

いつか冬獅郎に試してやろうと考えていました



冬獅郎が小さくなったのをなぜ知っているかと言うと

小さくなった為か、冬獅郎の霊圧がいつもと違っているのをいち早く察知し、様子を見に行った時

冬獅郎を抱えて去っていく浮竹を見たから



その後、こそっと十三番隊に覗きに行っています



ちなみにこの時の隠し撮りもやっており

浮竹と一護に高値で売りつけたりもしています