「ホンマに宜しかったんですか?」
尸魂界から虚圏へ着いたと同時に市丸がこんな事を聞いてきた
「あないにアッサリと斬ってしもうて
十番隊長さん、泣いてましたやろ?」
それは瀞霊廷で別れを告げた彼の事
「かわいそうに」
そう
彼は泣いていただろう
本当に私を信じていたから
私と彼が恋人同士だったから
「なぜ連れてこなかったんです?」
本気で付き合ってたんでしょ?
やれやれ
一番近くにいた市丸は騙せないということか・・・
連れてくる事は可能だった
死んだ事にする事も
洗脳でもして同士にすることも出来た
そうする事を一度も考えなかった
とは言わない
ガラにもなく暫く悩んだ
だが結局、そうする事はなかった
何故なら
「もし、無理矢理連れてきても彼は私の言う事は聞かないだろうね」
「せやったら、言う事聞くようにしたらええ話やろ?」
その斬魄刀で
と市丸は私の持つ斬魄刀を指す
完全催眠の力を持ったこの斬魄刀なら可能なこと
「だが、そうする事により彼の輝きが無くなってしまう事に気がついたんだよ」
洗脳し、新たな彼を作り上げたとしても、それは本当の彼ではない
私の愛した日番谷冬獅郎ではない
「それは私には絶えられない事だ」
だから残してきた
この手で斬ってきた
こうすれば彼は私を憎むだろう
恨むだろう
彼の心全てを私で埋め尽くせれる
他の誰にも心を奪われず
私の事だけを考えて
私の事だけを想うはずだ
それは憎しみという感情かもしれない
だが私には究極の愛と同じに感じられる
「私は待っているんだよ」
あの銀と碧の輝きが
もう一度私の前に現れる日を
この深い闇の中で