とたとたとた

軽い足音が近づいてくる


シュナイゼルは手元の書類から顔を上げると走ってくる人物を出迎える為に立ち上がった







ぎゅってして?






シュナイゼルが立ち上がったのと同時に書斎のドアが開く
いつもの彼女なら絶対にしない行為
いつもの彼女なら必ずノックをし、相手からの返事を待って入ってくる筈
つまり今の彼女には余裕が無いという事だ

シュナイゼルが腕を広げると、彼女は部屋に入ってきた勢いそのままにそこへ飛び込んだ

「・・・どうしたんだい?スザク」

シュナイゼルは茶色い髪をなでながら優しく囁く
理由は解っている
これまでに何度も何度もあった事

「・・・さん・・・・父さん・・・僕は・・・」
「怖い夢を見たのだね」

大丈夫、私がいるよ
シュナイゼルはスザクを抱き上げ、ゆるく波打つ髪に口付ける

「僕は・・・なんて事を・・・」
「あれは君のせいではない。君は悪いことはしていない」



日本とブリタニアの戦争
その戦争終了直前、スザクの父は自害した
敗戦を悟っての自殺であった

スザクの父は残される娘の身を案じたのか、それともただのエゴか、スザクを道連れにしようとした
だがスザクはそれに抵抗し、結局娘の目の前でその命を終わらせた

愛する父を一人で死なせた
父に最後の最後で歯向かった

スザクは自分を責め続け、シュナイゼルが引き取るまで殆んど死んだ様な状態となっていた



その後ブリタニアへと渡り、心の治療を重ね、やっと最近落ち着いてきた

しかし傷はなかなか消えない
時折傷は悪夢となってスザクを傷つける

「・・・シュナイゼル様ぁ・・・」
「君は私がいる。私が君を守ってあげる」

シュナイゼルはスザクの背中を擦りながら何度も何度も大丈夫だと囁く
少しずつだが落ち着いてきたようだ


「シュナイゼル様・・・」
「・・・スザク」

スザクは涙をポロポロと流しながらシュナイゼルの名を呼ぶ
シュナイゼルもスザクの名を口にし、二人は見つめあった


「ぎゅってして?」
「ああ・・・」
「怖い夢を見ないように・・・シュナイゼル様以外解らないように・・・」
「ああ・・・そうしよう」

シュナイゼルは細く薄い身体を抱きしめる
スザクも力の限りシュナイゼルへと抱きついた




抱きしめて

貴方しかわからない様に

私の世界が貴方だけになるように

ぎゅって、抱きしめて