みつばちはに




三時のおやつです と出された『ソレ』にスザクは目を輝かせた
食べるのは初めてじゃない
まだ故郷が日本と呼ばれていた頃
まだ父が生きていた頃に家政婦が作ってくれたのを食べた事がある
しかしソレはこんな風にふかふかではなかった
こんなに厚くて美味しそうな物ではなかった

「・・・」

こくり とスザクの喉が鳴る
傍にいたメイドの一人がクスリと笑ったが、全く気が付くことはなかった
ワクワクとした気持ちを抑えつつ、スザクはフォークとナイフを手に取った

「ああ、やっと食べるのかい?」
「っ!?」
「なかなか食べないからホットケーキが嫌いなのかと思っていたよ」

かけられた声に驚きスザクは慌ててその声のするほう気と顔を向ける

「シュ・・シュナイゼル殿下?」

そこにはこの屋敷の主人でスザクの保護者でもあるシュナイゼルがクスクスと笑っていた

「いつからそこにっ?」
「君の目の前にソレが置かれてすぐくらいかな?」

一応シュナイゼルは入室後すぐに「スザク?」と声をかけたのだが、目の前のおやつに心を奪われていたスザクの耳には入らなかった

「ずっと見てたんですか?」
「ああ。一体いつになったら君が食べ始めるのか、そしていつになったら私に気がつくのか試してみたくなってね」
「・・・・」

意地の悪い とスザクは顔を赤らめる
シュナイゼルはクックッと笑いながらスザクの正面の席へと就いた

「では改めて三時のおやつを頂こうか」
「・・・殿下の分はありませんよ」

用意されたのはスザクの分だけ
シュナイゼルの分は無いのだ
それを言うとシュナイゼルは「かまわないよ」と微笑んだ

「君が美味しそうに食べているのを見ているのが、私のおやつだよ」
「・・・・恥ずかしい方ですね・・・ホントに」

真っ赤な顔のままスザクはぱくりとホットケーキを一口頬張った
ふかふかのホットケーキは生まれてからこれまで食べた事がないくらい美味しかった

「・・・美味しいかい?」
「はいっとっても」

にこっと笑って答えたスザクにシュナイゼルは優しく微笑む

「そうか。それは何よりだ」


三時のおやつはふかふかのホットケーキ
甘い蜂蜜をたっぷりかけて、召し上がれ