「・・・・っ・・・・・」
『る・・・ルルーシュ・・・』
彼の泣き顔
もしかしたら初めてかもしれない
スザクは驚きに目を限界まで開きながら頭の片隅でそんな事を思った
最高のGift
「誕生日には必ず帰ってくるから」
中華連邦の天子から是非にと望まれてスザクはジノと共に彼の国へと訪問した
スザクを心から大切に思うルルーシュは「スザクが行くなら私も行く」「ジノとだなんて絶対に許せない」と駄々を捏ね
帝国の重臣達を大変困らせた
このままでは国の恥を国外に晒してしまう(恥=子供のように駄々をこねる皇帝陛下)
そこで彼らはスザクに何とかルルーシュを説得するように頼み、時間はかかったがスザクはあの手この手でルルーシュを宥めた
こうしてスザクは中華連邦を訪問する事となったのだ
しかし、あちらでも色々と予定外の事が起こり、結局当初の予定通りに帰国する事が出来なくなってしまった
それを報告する為にルルーシュに通信を繋げ、その事を告げた途端ルルーシュはぽろぽろと涙を流し始めたのだ
「・・・お前・・・帰ってくるって言ったじゃ・・・か・・・」
『だ・・・だからね、さっきも言ったとおり予定が狂ってね・・・』
帰れなくなったんだ・・・という言葉はもごもごとスザクの口の中で呟かれた
「今日は何の日か・・・・忘れたのか?」
『わ、忘れるわけないだろう!』
今日は12月5日
ブリタニア帝国皇帝ルルーシュの誕生日
スザクにとって大切な記念日の一つ
忘れる事等あるわけがない
『君の誕生日なんだよ!?』
「だったら!」
どうして一緒にいてくれない?
ルルーシュの頬を再び涙が伝う
『・・・ルル・・・』
ズキリとスザクの胸が痛んだ
(・・・・駄目だ・・・僕にはどうしても出来ないや)
『待ってて、ルルーシュ!』
「・・・スザク?」
スザクはにこりと微笑むとモニターの前から姿を消した
「スザク?」とルルーシュが名を呼ぶ声がするがそれに振り返らず力の限り走った
「ルルーシュ!」
「ス、スザク!?」
ばたん!と通信室に飛び込んできたのは中華連邦に居る筈のスザク
そのスザクは驚くルルーシュを思い切り抱きしめた
「ごめん、ごめんねルルーシュ」
「・・・お前・・・一体どうやって?」
まだ信じられないといった表情のルルーシュ
その頬に残る涙の後に口付け、スザクはもう一度「ごめんね」と謝った
「君に・・・意地悪しようと思ったんだ」
ルルーシュが皇帝になってから、お互いの誕生日はどんなに公務が忙しくても一緒に過ごした
彼の誕生日という一年に一度しかない大切な日を最初に、そして最後まで祝えるという事は嬉しく、そして光栄だった
しかしそれが当たり前になってくると、心の中にあるスザクの意地悪な部分が囁いたのだ
『もし、誕生日を一緒に祝えないと言ったらどんな顔をするか、見てみたいと思わないか?』
怒るだろうか
拗ねるだろうか
もしかしたら嫌われるかもしれない
ワクワクするのと同時に不安を感じた
けれど、作戦を考えるのはどこか楽しかった
「ジノやロイドさんに相談して、中華連邦に行くって話をでっちあげてもらったんだよ」
「・・・だが、私はちゃんと天子から連絡をもらったぞ?」
「うん。そこはきちんとやらないと君に疑われるからって、ロイドさんのアドバイスで」
天子と友人関係である神楽耶に協力を頼み、中華連邦からブリタニアへ要請してもらったのだ
「・・・」
「怒ったよね?・・・ごめんね。僕が意地悪したいなんて思ったばかりに」
泣かせてしまったね、とスザクはルルーシュの頬を優しく撫でた
ルルーシュはふぅ・・・と息を吐くと、クスリと笑った
「良い。お前はちゃんと誕生日に一緒にいてくれてるから」
「・・・ルルーシュ・・・」
「プレゼントなんていらない。祝いの言葉もいらない」
ルルーシュはスザクを抱きしめると癖のある髪に口付ける
「お前が側にいる。それだけで良い」
「うん、ルルーシュ」
スザクはニッコリと笑うと、微笑むルルーシュに口付けた
欲しい物なんてない
言葉もいらない
必要なのは君
それが最高のGIFT
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『そうだ!忘れてた』
『なんだ?』
『誕生日おめでとう、ルルーシュ』
『ありがとう、スザク』