僕が騎士を辞めた訳





マリアンヌは「ほえ」と言葉をもらした
彼女は家族のアルバムを見ていた。そしてその中にジノと色違いのマントを着たスザクの写真を見つけた
その写真は二枚あった
一枚は蒼いマントのスザク。もう一枚はジノと同じ白のマントだ
白のマントはナイトオブワンの色
それを思い出して「あ」と呟いた

そうだった
母スザクは嘗てラウンズのセブンの地位にあり、父が即位した数年後、ワンに昇進したのだった
しかしマリアンヌはそれを知らない
彼女が生まれる前にスザクはラウンズを、軍人を辞めてしまったのだ


「ワンということはお母様ってお強かったんですよね?」


なのに、どうして辞めてしまわれたんでしょう?




マリアンヌの疑問に答えてくれる人は、その場にはいなかった
(一人きりだったから)










「辞めた理由?」
「はい」


マリアンヌは疑問をまずジノにぶつけた
スザクの後任はジノ
そしてジノはスザクとセブン時代から付き合いがある
知っているはずであった

しかし・・・


「ククッ・・・・辞めた理由ですか・・・・」


クックッとジノは笑い出した
マリアンヌは??と首を傾げるが、ジノは笑うだけで答えてはくれない


「ジノ様・・・?」
「クッ・・・いえ、すいません・・・ククッ・・・」


ジノは笑うだけ笑うと、アレクシス殿下に聞いてくださいと言い残し、去っていった







「母上がラウンズを辞めた理由?」
「はい、お兄様」


アレクシスは数秒間マリアンヌを見つめると、はぁ・・・とため息をはいた


「お・・・お兄様?」
「思い出したくもないね」
「ふぇ?」


アレクシスは「やだやだ、思い出してしまったよ」と怒りながら何処かへ行ってしまった







「スザクが辞めた理由?」
「・・・はい、お父様」


マリアンヌの前で怒った事がない兄が怒った事で、ビックリして半泣きなマリアンヌは父の元へ向かった
ルルーシュは皇帝
スザクをワンに任命したのもルルーシュ。辞任を許可したのもルルーシュだ
父ならば知っている
マリアンヌは確信していた


「理由・・・ねぇ・・・」


ルルーシュは暫く考え込むと、ニヤリと笑った


「お・・・お父様?」
「今思い出しても最高だったな、あれは」
「はぁ・・・」
「またやるか・・・ククク・・・・フハハハハ」
「・・・・」


なにやら思い出して御満悦な父を残し、マリアンヌは母の元へと向かった










「辞めた理由?」
「はいお母様・・・」
「?どうしたの?そんな泣きそうな顔して」


ぎゅっとスザクに抱きついたマリアンヌはホッと息をはいた
母の腕の中というのは安心するものなのだ


「辞めた理由ねぇ・・・どうしても知りたいの?」
「はい。皆教えてくれないんですもの」


笑ったり怒ったりして・・・とマリアンヌは頬を膨らませた
スザクは苦笑すると「あのね・・・」と言いにくそうに口を開いた




****


あれはマリアンヌが生まれる前だった
その頃のスザクはバリバリ現役の騎士だった
しかもナイトオブワン
帝国最強の地位にある騎士だった
しかし最近では補佐官職と子育てが忙しく、軍事関連の指揮を執っていたのはジノとアーニャだった
ランスロットの出番がないよ〜とロイドが嘆いていた時期


「ランスロットに乗るのも三ヶ月ぶりだ」


新しくバージョンアップしたランスロットの起動実験
それをスザクは行なっていた


「それじゃ、スザク君。歩いてみて」
「はい」


ロイドに指示されてスザクはランスロットを歩かせた・・・筈だった


****


「今思い出しても情けないよ。ランスロットで思いっきりこけちゃったんだから」
「・・・こけた?」
「そう。顔面からばったーーーん!って」






ロイドは泣き叫び、ジノは硬直し、アーニャですら驚いて口を開いて白くなっていた
アレクシスは倒れる寸前なくらい真っ青になっており、ほかの子供たちも半泣きだった


「・・・死んだか?」


ただルルーシュだけが冷静に見つめていたという






「で、ランスロットは傷だらけになっちゃって、僕もおでこに怪我したんだけど、アレクシス達がね」
「お兄様達が?」
「『こっちが死ぬかと思ったくらい心配したから騎士を辞めてくれ』って泣きながら頼むんだよ」
「・・・はぁ・・・」






ぼろぼろと涙を流す子供達の願いに答えてあげたかったが、スザクには騎士を辞めるつもりはこれっぽっちも無かった
騎士は有事の際、最前線で戦う
ラウンズなら尚更だ
つまりルルーシュや子供達を自分が一番に護ってやれるということ

それをルルーシュに告げると、彼は「ほう?」と怪しく微笑んだという







「・・・それで・・・どうなったんですか?」
「////詳しくは言えないけど、結局僕が折れて、辞任したんだよ」
「??はぁ・・・・」


良く解らなかったが兄弟達の頼みを聞き入れて、スザクがラウンズを辞めたと言う事が解った
ジノが笑ったのは、スザクがみっともなくこけたから
アレクシスが怒ったのは、スザクがこけて怪我したのが気に入らないから
ルルーシュが笑ったのは・・・・・良く解らないが、何かいいことがあったのだろう


「とにかく、僕はラウンズを辞めて今の僕って事・・・お願いだから深く突っ込まないで」


スザクは顔を赤くしてマリアンヌに頼んだ
彼女はそれが「こけちゃった」事が恥ずかしくて顔を赤くしているのだと判断した

お母様、可愛いw

マリアンヌは母を微笑ましく思いながら頷いたのだった







僕が騎士を辞めた訳

それは愛する子供達の母を想う『愛』の為





・・・・・?














「マリアンヌに言い訳できたか?」
「・・・・クソルル・・・」


その夜、寝室にやってきたルルーシュはニヤニヤと意地悪く笑っていた
スザクはジロリとルルーシュを睨みつけると、枕を投げつけた

それを受け止めながら、ルルーシュはスザクの隣に寝転ぶ


「あの時は面白かったな」
「面白くないよ!!僕が・・・僕がどんな目にあったと思ってんだよ!!」


『あの時』を思い出したのか、スザクは顔を真っ赤にしてベットに突っ伏した



****


「僕は騎士は辞めないよ。だっていざという時に君達の盾になれないじゃないか」
「・・・・・ほぅ?」


ニヤリ・・・
この時、スザクは自分の事で精一杯でルルーシュのこの笑顔に気がつかなかった

そしてこの翌日から一週間
スザクの姿を見た者はいない


****


「お前だって喜んでたじゃないか」
「喜んでないよ!苦しんでたんだよ!!」
「エロい顔して『ルルっ・・・ぼく・・・もう限界っ』なんて言ってたじゃないか」
「っ!!それは!君がっ・・・・その・・・」


スザクが姿を消した一週間
彼はこのルルーシュによって監禁されていた
『騎士を辞める』と言うまで、あの手この手で啼かされたのだ


「君ってば、僕が『辞める』って言った後も僕を抱いたよね?あの時の僕が寝不足なの知ってただろ?グースカ寝てた君と違って、僕はっ・・・・・その・・・」
「玩具を入れられてたから寝れなかった、と」
「////言うなぁぁ!!」


悪夢のような一週間
ルルーシュに啼かされ
ルルーシュ以外に啼かされ
体力的にも精神的にも攻められ続けた
この時ほどスザクは本気でこの男と離婚しようと思った時はない


「エロいお前が悪い」
「どうして!?ってか、エロくないよっ!」


いや、エロい
エロくない
と言い争いながら夫婦の夜は更けていった




本当の辞めた理由
ルルーシュに散々やられちゃったんですね・・・
ほらほら、言わないといつまでもここに閉じ込められたままだぞ〜とか言われながら
マリアンヌに聞かれて思い出したルル様は、「もう一度やってみようかな・・・」と思っています