「今日はいい天気で良かったですね、殿下」
「あう〜」
神聖ブリタニア帝国の最強騎士であるナイトオブワン枢木スザクと、ブリタニアの第一皇子アレクシスは中庭を楽しげに歩いていた
ここ数日天気が悪くこうして散歩に出るのも久しぶりだ
スザクに抱かれて外に出かける事が大好きなこの皇子の機嫌はとても良く、すれ違う女官達の顔にも笑みがこぼれる
promise is eternity 〜After story〜
スザクは楽しげにキョロキョロと辺りを見回すアレクシスを見て微笑んだ
この国の第一皇子、勿論父親はルルーシュ。しかし母親は公表されてはいない
それというのもこの子供が少々特殊な生まれ方をしているからなのと、母親という言葉が正しいか解らないが、そのアレクシスの片親ともいうべき人物が公表する事を拒んだからだ
この問題に関してルルーシュは不満を抱いているが伴侶というべき人物が非常に強情な人物であった為未だに解決されていない
「明日も良い天気らしいですから明日のお昼ご飯は外で !」
スザクは言いかけた言葉を中断し、その場から慌てて後方へ飛び退いた
がしゃん!
次の瞬間、大きな音をたてて花が植えられたプランターが割れた
その位置は先程までスザク達が建っていた場所
「・・・」
スザクはキッと頭上を睨みつける
するとそこには数人の貴族の娘
クスクスと笑いながらスザク達を見下ろしていた
そしてそれは頭上だけではなく、正面からも聞こえた
「御機嫌よう、枢木卿」
「・・・・どうも・・・カリーナ嬢」
赤毛の貴族の娘はカリーナという名前で、昔からスザクに嫌味を言い続けてくる女性だった
「・・・なにか自分に御用ですか?」
「ええ、実は貴方にお伺いしたい事がありまして」
「・・・それは?」
「いつまで貴方のようなイレヴンがこの王宮にいらっしゃるのかと聞きたかったんですの」
「・・・」
「身の程を弁えない蛮族にいつまでもこの王宮にいてもらっては陛下の評判も地に落ちます」
ちゃんとその事をお解かりですか?とカリーナは笑った
スザクはギュッとアレクシスを抱きしめるとフッと笑う
「な・・・なんですの?」
「カリーナ嬢、どうやら貴女は私が想像している以上に無知な方だったんですね」
スザクの言葉にカリーナは大きく目を開く
「貴方、私がどういう身分か「皇帝陛下の政策で最早ナンバーズも名誉ブリタニア人も存在しません。したがってイレヴンという言葉も存在しません」
「っ」
「貴女は陛下の妃になりたいのでしょう?でしたら陛下のなさっている事くらい知っておくべきだと思いますが?」
「・・・」
「ああ、ですが先祖の残した財産で遊びまくっている貴女にはそんな暇はありませんでしたね」
「っ!男娼風情が何を言う!」
クスクスと笑うスザクの左頬をカリーナは思い切り引っ叩いた
だがスザクはそれでもニヤリと笑っていた
「・・・」
「それと私に嫌味を言う前に御自分のなさった事を良く考えて御覧なさい」
「私のした事?」
「ええ。・・そうそう、上のお嬢様方も同じですよ」
スザクはニッコリと下を見下ろす貴族の娘達に微笑みかけた
「私は今、どなたとここにいます?」
「・・・・っ!」
「そう。神聖ブリタニア帝国第一皇子アレクシス殿下です」
アレクシスはジッとカリーナを見つめていた
心なしか怒っているようにも見える
「貴女が・・・貴女方がした事は殿下にお怪我を、最悪の場合殿下を殺害したかもしれません」
「わ・・私達は・・・」
「私と周囲にいた人間が目撃者です。私はこの帝国を護るナイトオブワンとして貴女方を第一皇子暗殺未遂犯として逮捕します」
そのスザクの言葉を待っていたかのように近衛兵が現れ次々とカリーナ達を拘束していく
「っ放しなさい!私を誰だと思っているの!」
「誰でもない」
抵抗するカリーナの声にスザクは冷静に答える
「この国の次の皇帝であるこの子を狙った、馬鹿な女・・・それだけだ」
クスリと笑うスザクにカリーナは恐怖を感じた
この枢木スザクという人間はこんな風に冷酷に笑う人間だっただろうか?
いつも何処かに影を背負い、こちらが何を言っても眉一つ動かさず、しかし見えないところで泣いていたあの人物と同じ人間なのだろうか?
「枢木スザク・・・それが本当の貴方?・・・それとも・・・」
「人は変わる。護りたいものや大切なものの為に」
貴女の敗因はそれに気がつかなかった事にある
連行されながらスザクのそんな言葉がカリーナの耳に届いた
「・・・静かになりましたね、殿下・・・いや、アレクシス」
誰もいなくなり静けさを取り戻した中庭でスザクはアレクシスに微笑みかけた
しかしそのアレクシスはスザクをジッと見つめていた
彼には笑みがない。スザクと顔を合わせれば常に笑顔のこの子供にしては珍しい
スザクは苦笑するとアレクシスの頬に口付けた
まだ赤ん坊だというのにアレクシスはスザクを心配しているのだ
「大丈夫。僕は平気だよ。君やルルーシュ、ロイドさんやジノ達を守る為なら・・・」
誰を犠牲にしても。という言葉はあえて口に出さなかった
人は変わる
護りたいもの
大切なものの為に
何人だろうと犠牲に出来るほど
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「・・・怖いな」
「ホント、マジ怖くなりましたね」
「でもこれで」
「五月蝿い連中を一掃できたからいいんじゃないのぉ」
「ですね」
皇帝執務室でしっかりと先程のやり取りを見ていた面々は、スザクの(ある意味)成長を喜び、そして恐れていた