世界の中心で『嫌だ』と叫ぶ






その年はブリタニアがサミットのホスト国だった





「お前も一緒に付き合ってもらうぞ」


ルルーシュの言葉にスザクは固まる


「・・・僕は子育てで忙しいんだけど?」
「昼間だけだ。女官に任せれば良い」
「・・・・」


ちょうど三男のフェリックスが生まれて半年くらいの頃で、可愛くて可愛くて、はっきりいって仕事そっちのけで子供と遊んでいる頃だった


「このっ馬鹿ルル!何人子供がいるとおもってんだ!六人だよ!六人!!」


上は七歳から下は六ヶ月児
三男三女の六人兄妹
スザクにも仕事があるが、自分の子供である兄妹達を他人任せになど出来ない


「僕は子供の頃父さんにあまり構ってもらえなくて寂しかった。あの子達に同じ想いをさせたくないんだって、僕の気持ちを言ったと思うんだけど?」
「ああ、聞いた」
「だったら」
「だが、お前には参加してもらわなければならないんだ」


護衛という意味だろうか
それとも補佐官だからだろうか

だが、そのどちらでも代役はジノで務まるはずだ
むしろ彼の方が良い
非常に悔しいが、ジノの方がスザクよりもルルーシュの役に立つ

しかしその事を言ってみるとルルーシュは頭を左右に振った


「ジノでは駄目なんだ。スザク、お前でなければ・・・」
「・・・ルルーシュ////」


(僕を必要としてくれてる?僕でなければ駄目だなんて・・・僕は君の役にたててたんだねVv)


ギュッとルルーシュに抱きついたスザクはコクリと頷いた
目を閉じていたから気がつかなかった
ルルーシュがニヤリと笑っていた事に






お前はファーストレディ達の相手をしてくれ

ルルーシュの言葉に「??」と思いつつ、頷いた


(ファーストレディ・・・各国の代表の奥さんだよね・・・)


護衛しろという事だろうか
アーニャもいるし、きっと二人で彼女達を護れという事なのだろう
そう判断し、スザクはファーストレディ達が集まっているというテラスに向かった




「まぁvお久しぶりですわ、スザク兄様Vv」
「・・・・・久しぶりだね、神楽耶」


スザクが顔を出すと一番に神楽耶が飛びついてきた
一時は黒の騎士団に加わっていた彼女も、今では日本の首相夫人
影でその夫を尻に敷き、日本を牛耳っているという噂だが、きっと本当の事なんだろうな・・・とスザクは思っている(ルルーシュも否定しない)


「兄様、相変わらずの童顔ですね。可愛らしいですわ」
「かわ・・・・神楽耶こそ綺麗になったね。えと・・何年ぶりかな?」
「五年ぶりですわ」


そうか・・・とスザクは頷く
五年も会わなければ美人になるはずだよね・・・と感想をもらす


「もぉv兄様ったら相変わらず御口がお上手なんですからVv」


ばしっと思い切り背中を叩かれ、スザクは涙目になる


(・・・相変わらずの馬鹿力・・・・血筋かな・・・?)


思っても口に出せない
このイトコの性格は熟知しているからだ
(言えばどんな目にあわされるか解らない)




「神楽耶様。お一人でお話していないで私達にも紹介してくださいな」
「あら?これは失礼いたしました」


にこにことスザクと神楽耶の側に集まってきたのは各国の夫人達
神楽耶は彼女たちに詫びるとスザクを紹介した


「ブリタニア帝国皇妃殿下、スザク様ですわv」
「はい。僕が・・・・って?はぁぁぁぁぁ???」


スザクは耳を疑った





****




「ククク・・・」
「その笑い、止めてください」


悪人のような表情で笑う皇帝を、ジノは注意した

きっと今頃「なんだそりゃぁぁぁぁぁ!!!」と叫んでいるであろう友人の事を思うと胃が痛かった


「神楽耶とは事前に打ち合わせしておいた。今頃は夫人達に紹介されて真っ白になっているだろう」


目に浮かぶようだ・・・とルルーシュはニヤリと笑う
ジノはキリキリと痛む胃を押さえながらため息をはいた


スザクを伴侶として、子供達の親として公表するとルルーシュが言ったのはサミット開催三日前
六人目の子供が産まれ、マスコミが子供の母親についてまた騒ぎ出したのが原因だ
これまでは無視していたルルーシュも、今回ばかりは無視しなかった
どうしてなのかジノには解らないが、とにかく彼はスザクとの事を公表する気になったらしい

スザクとルルーシュに体の関係があることは公然の秘密となっていた
ルルーシュがスザクに知られないように隠していたが、一般女性誌などでは毎週報道されていたほどだ
『皇帝の愛人』
などという不名誉な噂を立てられており、彼がそれに傷つくのを恐れたのだ

最も、『愛人ではなく妻だ!』とルルーシュは声を大にして宮殿で叫んでいたのだが・・・・


「これで堂々と公衆の面前でスザクとラブラブ出来ると思うと」
「笑わずにはいられませんか・・・?」


当たり前だ!
とルルーシュは上機嫌だ

これまで外国へ出かけるたびに彼は煩かった

「僕は子育てが忙しい」とスザクが拒否していたので、公務で外国に行くルルーシュのお供はジノだった
当然、ルルーシュをその国の代表とその夫人が歓迎してくれる
その度に彼は愚痴をこぼしていたのだ

「どうしてスザクがここにいないんだぁぁ」
「スザクに触りたい」
「スザクにキスしたい」
「むしろ抱きたい」
「あの香水臭い女よりスザクの方が何百倍も綺麗なのに」
「スザクを自慢したい」
「スザクの可愛さを世界の中心で叫びたいぃぃぃ」

等等・・・


「来月の日本訪問には必ずスザクを連れて行くんだ!!」


勿論『皇妃』としてな!


フハハハハ!!とゼロ笑いをするルルーシュから目をそらし、ジノはスザクへと思いを馳せる


(悪いなスザク。私も自分が可愛いんだよ・・・)


と、ルルーシュを止めなかった事を心の中で謝るジノであった





****


「聞いてない!僕はこんな事聞いてないよぉぉぉ」


テーブルに突っ伏して泣くスザク
同じテーブルには(本当の)護衛のアーニャ


「事実だから仕方がない」
「事実とか言うなぁぁぁ」


それと神楽耶


「兄様は男性ですから・・・ファーストジェントルマン、って言うのでしょうか?」
「嫌だーーーー!」



世界最強、世界の中心ともいえるブリタニア帝国にスザクの叫び声が轟いた






その夜
しっかりとスザクはルルーシュに復讐したらしい







生きていた神楽耶
案外他のキャラも生きているのかもしれません