「マリアンヌvこの間のピクニックの写真だぞVv」
「わぁvお兄様、有難うございます」
アレクシスはマリアンヌに数十枚の写真を手渡した
マリアンヌはニコニコと笑いながらその写真を眺めていた
「楽しかったです」
「マリアンヌが大好きなウサギさんのりんごもあったなVv」
「お父様が作ってくださった卵焼きも美味しかったですしv」
その味を思い出しているのだろうか
マリアンヌはほぅっと頬を染めた
ルルーシュが日本にいた時に食べ、そして研究したという卵焼き
日本生まれのスザクでさえ『食べたい料理N0.1』にあげる料理だ
アレクシスは頬を染めるマリアンヌの頭を撫でて、その写真をアルバムへと仕舞う
「お兄様がたくさん撮ってくださるから、アルバムがいっぱい」
「そうだね。楽しい思い出は必ず写真に撮っているからね」
アレクシス暇があれば写真を撮っていた
父も母もそんな趣味は無い
しかし彼はいつの間にかカメラを常に持ち歩くようになったのだ
「どうしてお兄様は写真を撮られるのですか?」
マリアンヌの素朴な疑問にアレクシスはニコリと笑った
『僕が写真を撮るようになった訳』
****
「はい。これ」
「ありがとう、アーニャ」
その頃の写真と言えばアーニャの撮ったものだった
別にそれが不思議だとは思わなかったし、父も母も忙しい人だったのでそれが当然と思っていたのかもしれない
その時にアーニャがスザクに手渡した写真は、この間生まれたフェリックスと撮ったものだ
フェリックスを中心として、両親や兄妹、ジノやアーニャ、ロイドやセシルも写っている
それを一通り目を通したアレクシスはアルバムに写真を収めていた
その時に気がついた
両親の子供の頃はどんな顔をしていたのだろう?と
父のルルーシュが自分そっくりなのは知っている
だが、それは周囲の人間の言葉であり、実際に自分が見たわけではない
それに母スザクの子供の頃の写真も見てみたかった
アレクシスは素直に母に訊ねた
母上たちの小さい頃の写真はありますか?と
「写真?」
「はい」
ああ、あるよ
スザクの答えはすぐに返ってきた。それを見たいと訴えると、スザクは自分の部屋から数冊のアルバムを持ってきた
そこには小さい頃のスザクの写真があった。
早くに死んだというスザクの母親。スザクが殺めてしまったという父親の写真もあった
そして笑っているスザクと叔母のナナリー。そして自分そっくりな黒髪の子供
「父上?」
「そう。アレクシスはルルーシュによく似てるよね」
でも性格は違うかな
スザクはクスクスと笑っていた
アレクシスはじっと写真の中のルルーシュを見つめた
確かに似ている
同じ色の髪に同じ色の瞳
顔も自分と同じもの
(・・・似すぎてて気持ち悪いかも・・・)
きっとルルーシュがいれば「奇遇だな。俺も思った」と言った事だろう
だが生憎彼は公務で出かけていた
「写真って凄いんですね。僕が決して見られない小さい頃の父上や母上が見れるんですから」
「・・・そうだね。写真だと・・・いなくなった人達にも・・・会えるから」
スザクは悲しげな表情で手元の写真を見つめた
それはスザクの両親の写真。他には騎士として初めて仕えた皇女殿下、学生時代の友人達
二度と会えない人たち
「・・・・」
アレクシスはスザクの表情をみて何も言えなくなった
こんな顔をさせたかったのではないのに・・・
どうしようと困っていると、アーニャが口を開いた
「それだけじゃない」
「・・・アーニャ?」
「写真は幸せも記録してくれてる」
アーニャは一枚の写真を見せた
それは生まれたばかりのアレクシスを抱いて泣き笑いしているスザクの写真だった
「この時のスザク、幸せだって言った」
「・・・うん」
「その時に私は知った。写真を撮るという事は、ただその時の事を記録するんじゃない。気持ちを、幸せを切り取って思い出にするんだと」
アーニャはアルバムを集めてスザクに渡した
「スザク、わざと家族のアルバムに子供達だけの写真を収めた。自分の昔の写真は悲しい事が多いから」
「・・・」
「でも、それは昔の事。今は幸せ。だって、子供達がいるから。『子供は幸せが形になったもの』スザク、アレク殿下が生まれた時に言った」
うん。とスザクは笑った
そして黙ったままのアレクシスを抱きしめた
「アレク達は僕の幸せ」
「・・・僕らが、幸せ?」
そうだよ とスザクはアレクシスに頷いた
「だから私は写真を撮るの。スザクはこんなに幸せなんだよって教える為に」
****
「アーニャの言葉に僕は気がついたんだ。『これからは僕が母上の幸せを撮ってあげよう』って」
「お母様の幸せ?」
「僕らが笑顔でいることだよ」
スザクは年に何回か精神的に不安定になるときがある
それは父が死んだ日
かつての主である皇女殿下の死んだ日
神根島でルルーシュを撃った日
いつの間にかアレクシスはそれに気がついた
ルルーシュに聞いたわけではないが、聞かされた二人の過去の話から察した
そんな時、アレクシスはスザクの元へアルバムを持っていく
『ほら、貴方の幸せはこんなにたくさんあります。悲しい事も多かったけど、今では幸せの方が多いでしょう?』と
「だからマリアンヌ。僕がカメラを向けたら一番の笑顔で笑って。母上が幸せになれるように」
「はい、お兄様」
元気よく頷く妹の頭をアレクシスはニッコリと笑いながら撫でたのだった
僕が写真を撮るようになった訳
それは大切なあの人に『幸せ』を見せてあげる為
本当にいつの間にかアレクシスは『写真マニア』になってました
こんなことは予定に無かった・・・どうしたの?と聞いてみたらこのようなお返事が・・・(誰から?)
「・・・なぁんてね」
クスクスと笑いながらアレクシスは廊下を歩いていた
まさかマリアンヌに「どうして?」なんて聞かれるとは思っていなくて焦ったが、上手く説明できたようだ
スザクに幸せを教える為
それは嘘ではない
あの時の自分は確かに思ったのだ
『僕が母上の幸せを撮ってあげよう』と
だが・・・
「ちvちvうvえv」
「・・・キモイ!」
アレクシスはルルーシュの元を訪れた
愛情を込めて名を呼んだというのに、父は「キモイ」と冷たかった
「酷いですね。愛しい長男に向かって」
「誰が愛しい長男だ!愛しいのはスザクとマリアンヌだ」
「ぅわ!本当に酷い父親」
ウソ泣きしながらアレクシスはルルーシュの近くに寄った
そしてスッとSDカードを取り出した
「母上のゴスロリ写真です。オマケでマリアンヌ版も入れておきました」
「・・・良くやった!」
キラリとルルーシュの目が光る
アレクシスもフフフと笑う
そう
初めは純粋にスザクを想っての行動だったアレクシスの写真撮影
それが今では『不純』にスザクを想っての行動になってしまっていた
「スザクめ・・・私が頼んでも着てくれなかったくせに」
「父上だとすぐ脱がしちゃうでしょ」
「当たり前だ!コスプレしたスザクを襲わないでルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが名乗れるか!!」
アレクシスは、『なんだそれは・・・』と思いつつ、自分も似たようなもの(スザクをロシリエルに置き換えて妄想)だと苦笑し、そのままルルーシュとスザクネタで二時間語り合ったのだった
ルルーシュもいつの間にかこんな人に・・・この二人は何処までスザクマニアなのか・・・