ぜろのひみつ
我輩は猫である
・・・・それは嘘だ
我輩は猫のぬいぐるみである
名前はまだない
何故名前がないかというと、それは我輩がぬいぐるみだからだ
生みの親は目の前の黒髪の男性
名前をルルーシュという
彼は我輩を大切な娘にプレゼントするのだそうだ
「どうぞお姫様、御所望の猫のぬいぐるみですよ」
「わぁwありがとうおとうさま」
「いいえ」
「良かったね、マリアンヌ」
マリアンヌ四歳の誕生日
ルルーシュは黒猫のぬいぐるみをプレゼントした
本当はもっと別のプレゼントを考えていたのだが、マリアンヌ自身が猫のぬいぐるみを希望したのだ
ご機嫌な娘を見てスザクもニコニコとご機嫌だ
だがふと気がつく
「・・・ねぇ?あのぬいぐるみって、ここ最近君が裁縫していたヤツに似てるよ?」
「ああ。同じものだ」
あっさりと夫は頷き、妻(笑)は「へ?」と驚く
甘い夫婦の夜の後、身体を包む倦怠感に身を任せ眠りに落ちかけたスザクは見てしまった
ルルーシュがごそごそと黒い物体を取り出してチクチクと縫い物をしている姿を・・・
(・・・相変わらず器用だな・・ってか、相変わらず・・・変な所で体力馬鹿・・・)
受身のこちらがこんなに疲弊しているのに、どうして縫い物が出来るほど元気なんだ?
一度上下を変わってみるのもいいかもしれない
うん。そうしよう
等とスザクが思った事は余計な話
「同じ物って・・・え?君が作ったの?え?君の手縫いなの?」
「五月蝿いぞ」
スザクがルルーシュの隣で騒いでいる頃、マリアンヌは上の兄弟達からプレゼントを貰っていた
「僕からはこれだ」
「真っ白なドレスVv」
「ああ。母上が結婚式で着た物と同じデザインだ。これを着て僕と母上とロシリエルとマリアンヌの四人で記念写真だ!」
「はいwアレクシス兄様、ありがとうございます」
「兄上、涎が・・・あ、僕はこれだよ」
「きっちんせっと?」
「そう。やっぱり女の子だものね」
「かわいいvVウサギさんの絵がいっぱい」
「マリアンヌのほうがもっともっと可愛いよ」
「私はオモチャではないのだが・・・」
「えっと・・・たのしいすうじ?」
「算数の問題集だ」
「クリス・・・四歳にそれはないんじゃいか?」
「アレク兄上。ですが幼いうちから頭を鍛えて悪い事はないでしょう?」
「鍛え・・・全く・・お前は・・・」
「「は〜いv私たちはニンテ○ドーD○よ」」
「ふにゃ?」
「百○す計算と」
「F○5ですわ」
「??」
「ゲームなんて与えるな!」
「まぁ姉様、○Sで勉強もできましてよ?」
「遊びもできますわ。一石二鳥というのでしょう?」
「はーい。僕はこれね」
「フェリックス兄様v」
「ランスロット(のプラモ※組み立て済)だよ」
「らんすろっとvV」
「やっぱり母上のナイトメアが一番だねvロイド先生もよくこんなナイトメアを作れたよね〜」
「?」
「フェリックス・・・マリアンヌは女の子ですわよ?」
「女の子にナイトメアのプラモはちょっと・・・」
「そうですか?」
「あ。僕からはこれだよ〜」
「お母様」
「おかあ・・・・(複雑)・・・もういいよ・・・何でも・・・。はい、これね」
「ぷり○ゅあv」
「マリアンヌ好きだものね」
「み○きー○ーずのパジャマ」
「・・・なんだこれは・・・」
「何って・・・日本のアニメのパジャマ。アーニャに付き合ってもらって買いに行ったんだよ」
「いつの間に日本に・・・」
「さぁね〜Vv」
マリアンヌはたくさんのプレゼントを貰って嬉しそうにニコニコ笑っていた
家族は一番年下の彼女がこうして笑う姿を見るのが楽しくて仕方がない
「だからついつい何か買っちゃうんだよね」
「だな」
ルルーシュとスザクはソファで兄妹が楽しく話しているのを見守る
家族って良いなぁ・・・
家族愛をあまり与えてもらえなかった二人は自分達が作った家族を本当に嬉しそうに見つめた
「ところで父上から貰った猫の名前はどうするんだ?」
「えっとね・・・えっとね・・・「ぜろ」!」
「「「「「「!!!!??」」」」」」(ルルスザ+アレク+ディミ+クリス+ユーフェミア&ジニア)
「ぜろ?変なの」(フェリックス)
マリアンヌの言葉にフェリックス以外は言葉を失う
スザク以下の家族はじーーーーっとルルーシュをにらみつけた
睨まれたルルーシュは首を左右に振った
「話してないぞ!私は何も言ってない!!」
「本当?」
「10歳にならないと話さない。とか言いながら、うっかり喋ってしまったんじゃないですか?あのチューリップ仮面の事」
「誰がチューリップ仮面だ!」
ブリタニア皇帝が嘗て世界中を騒がせた『ゼロ』であった事
それをルルーシュは子供が十歳になった時に話していた
10歳
それはルルーシュにとってもスザクにとっても重要な年齢
子供だったからと逃げるわけにはいかない事をしてしまった歳
一生貫き通すと意思を定めた歳だったからだ
「・・・マリアンヌ・・・ぜろよりももっと可愛い名前がいいんじゃない?」
「嫌です!ぜろがいいの!お母様、駄目?」
「うっ!(そんな上目使い誰に教わったの?)・・・駄目っていうか・・・僕の精神衛生上よろしくないというか・・・」
「お父様ぁ・・・」
「(100%お前からの遺伝だ!)・・・そんな可愛い目で父様を見ないでくれ・・・」
「お兄様・・お姉さま・・・」
「「「「「うぅぅっ」」」」」
10歳以上の者達はだらだらと汗を流す
ぜろという名前にはスザクが良い思い出がない
それにゼロとはブリタニアに戦いを挑んだテロリスト
その彼の名を、ぬいぐるみとはいえブリタニア皇女がつける名前としては相応しくない
「ぜろがいいのぉ!・・・ぅわあああああん!!」
「マ・・・マリアンヌ!」
「お母様あああああ!」
スザクに抱きついて大泣きするマリアンヌに家族は同時にため息をはいた
こうして黒猫のぬいぐるみは「ぜろ」という名前になった
我輩はぬいぐるみの猫 『ぜろ』
この国の皇女マリアンヌの友人となった猫だ
我輩を作ったのは彼女の父で皇帝のルルーシュ
彼は我輩にいくつかの役目をくれた
一つ マリアンヌの側に常にいること
一つ マリアンヌの居場所をルルーシュに知らせる事
一つ マリアンヌの可愛い声をルルーシュに聞かせること
一つ マリアンヌに危機が迫ったら大きな声をあげる事
・・・・お前、ぬいぐるみだろ?
と思った奴、挙手!
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・・・・・・勿論ぬいぐるみだ
だが、我輩にはマリアンヌもその母親スザクも知らない機能が備わっているのだ
しかしそれは秘密なのだ
ルルーシュと我輩だけの
『ゼロ』と『ぜろ』のひみつ なのだ
居場所だの声だのという『ぜろ』の役目
そして秘密の機能
予想がつくと思いますが・・・
ルルーシュがお手製でぜろを作った理由がそれです
「母上。お誕生日おめでとうございます」
「わぁ。ありがとうアレクシス」
マリアンヌが誕生日という事は同じ日が誕生日のスザクも今日が誕生日だ
もちろん子供たちはスザクにおめでとうのキスを贈り、プレゼントを渡した
そして夜も更けて各自が自室に戻った後、アレクシスが再びスザクの元へと現れた
「開けて良い?」
「ええ」
がさがさと包みを開けたスザクが見たもの
それは・・・
「ほぉ・・・良い趣味をしている」
「ああ、父上。そうでしょう?ちなみに色違いをロシリエルに贈りました」
「・・・・・」
いつの間にか現れたルルーシュがプレゼントを見てニヤニヤ笑っている
「是非今夜着てもらいたいな」
「ちょっと!僕がプレゼントしたのですから、一番に見せてもらわないと」
「ふん!童貞の癖に」
「ど・・・僕の童貞はロシリエルに捧げるんですよ!」
言い争うルルーシュとアレクシス
スザクは固まっていたが、徐々に震えだし始めた
「・・・・・・・の・・・」
「?どうしました?」
「スザク、どうしてコイツはこんなにもマザコンなんだ?」
「・・・の・・・ども・・・・」
「「ス・・・スザク・・・さん?」」
どうやら二人はやっと気がついたらしい
スザクが真っ黒いオーラを背負っている事に
「この馬鹿野郎共!!!」
誰がこんなの着るか!!!とスザクは夫と息子をぶっ飛ばした
アレクシスからのプレゼント
それは
真っ赤なチャイナドレスだった
ロシリエルには翠色のチャイナ
マリアンヌにも桃色のチャイナを用意していたアレクシスでした