「そういえば、スザクさんはいつからお兄様が好きだったんですか?」
「ふにゃ?」
華麗なる一族 番外編
ルルーシュを助ける事を選んだスザクの為にアヴァロンは発進準備を行っていた
そしてアーニャもスザクと共に行く事を望み、モルドレッドがアヴァロンへと入っていく
それを見つめながらスザクはルルーシュの事を考えていた
『早く行かないと
無事だろうか
間に合うのだろうか
ああ、胃が痛い
シュナイゼル殿下もどうして叛乱なんか・・・あの方は涼しい顔をしてやることがいつも迷惑なんだよ
昔、ルルーシュにギアスをかけられたあの時だって、あの方があんな事をしなければかけられることも無かったのに。というか、ルルーシュがゼロなのが悪いんじゃないか!そうだよ!自業自得なんだよ!
そもそもルルーシュがナナリーをこんな田舎に住まわせなければこんな焦る必要もないのに・・・』
等と途中から心配なんだか怒っているのか解らなくなり始めていた頃、ゆっくりと近づいてきたナナリーに話しかけられたのだ
「・・・いつから・・・・って」
「再会してからですか?それとも子供の頃?・・・まさか、敵対している時ですか?」
さあさあ、どうなのですか?と車椅子なのに詰め寄ってくるナナリーに追い詰められたスザクは「ああ・・・うう・・・」と困り果てていた
そんな所に天の助け
「スザク君。準備できたよ〜」
「はい!今行きます、ロイドさん!・・・じゃ、ナナリー、またね」
「あ!スザクさん!!」
ぴゅーーっと走り去っていくスザクに「まだ答えてもらっていませんよーー」と叫ぶナナリーの姿があった
「・・・いつからって・・・・いつだろう?」
あれ?とスザクはブリッジまでの道筋で首を傾げた
出会いは最悪だった
異国から来た兄妹
綺麗で可愛かったけど、ブリタニア人。絶対に仲良くなるものかと思っていた
けど、少しずつ仲良くなって・・・
(この頃はまだ子供だった。お互い「好き」という感情はあっても、それは友人に対してだったはず・・・)
では再会してから?
七年ぶりに会った幼馴染
相変わらすの美形ぶりに「流石ルルーシュw」と思ったことは確かだ
けれど彼に想いを寄せていたシャーリーを応援していた
そりゃあ、ルルーシュがシャーリーと上手くいったらいったで寂しいなぁと感じてはいたが・・・
もしこれが友情ではなく愛情だったのだとしたらこの時から彼が好きだったという事になる
(でもまだ友情のほうが大きかったと思う。)
では敵対していた頃?
あの頃はゼロに戻らないでくれと毎日祈っていた
もし彼が戻ったら、ナナリーはどうなる?自分はまた彼を討たねばならなくなる
だから祈っていた
どうか思い出さないで と
ゼロが復活してからは、ルルーシュではない事を祈っていた
理由は同じ
人生のほんの一部しか共有していない
けどやはり彼は大切な友人だった
どうか僕に君を殺させないで
(う〜ん・・・この頃に恋愛感情なんてあるわけないよね・・・)
じゃあ、その後?
「・・・ちょっとまて!」
その後とは何だ!?とスザクは自分で突っ込んだ
その後といえばルルーシュが皇帝を殺して黒の騎士団を壊滅させてから現在の事ではないか
「いやいや、無い無い。だってその頃から今の僕って彼に酷い目にあってるじゃないか」
無理矢理補佐官にさせられて、無理矢理身体を繋げさせられて、無理矢理隣に部屋に住まわされて・・・
「ほら、最悪じゃないか」
でも・・・・
「ルルーシュ、「あの後」とっても優しいんだよね」
いつだって体力の限界で、気絶するまで解放してもらえないスザク。眠りに落ちる僅かな瞬間。ルルーシュの優しい目を、声を、手をスザクは覚えていた
憎まれていると思っていたのに、ただの性欲処理だと言っているのに、どうしてそんな優しい顔をしているの?と毎回スザクは思っていた
「・・・それに仕事だって助けてくれてるし・・・」
スザクは自然と微笑んだ
彼の目的は解らないがルルーシュはスザクを助けてくれている
「僕は・・・・」
スザクは思い出す
仕事になれていないスザクは書類の処理も遅い
迷惑をかけるのは嫌だとジノや他の文官は先に帰し、仕事を続けていた
当然、ルルーシュには一番に帰るように言うのだが、彼が先に帰ったことはない
一度スザクがどうして帰らないのかと訊ねると、彼は言ったのだ
『帰る場所が同じなんだ。一緒に帰っても良いだろう?』
「・・・・そっか・・・」
スザクはクスリと笑う
彼の事は昔から好きだった
けれどそれは恋愛感情等ではなく、友情
しかし誰よりも彼は自分に近い人だった
遠く離れていてもどこかで繋がっていると、敵対していてもどこかでまだ友情はあると思っていた
無理矢理だが側に置かれて、彼の優しさに触れた
憎いと思っていたのに
恨まれていると思っていたのに
きっと心のどこかで気がついていたのだ
彼が自分を大切にしてくれている事に
そしてそんな彼に自分が惹かれてしまった事に
「僕がハッキリと好きになったのは彼が皇帝になってからなんだ」
なぁんだ とスザクは歩みを再開する
だが数歩歩いた所で「ぴた」っと立ち止まる
彼が皇帝になって、いや、その前からだが、自分は決して恋に落ちるような雰囲気の中にいたとは思えない
色々あったのだ。貴族に嫌味を言われるわ。そのお嬢様方には不幸の手紙を貰うわ。
胃が痛くなるわ、腰は痛いわ・・・
そんな中で彼を好きになるなんて・・・
「僕って・・・僕って・・・」
認めたくは無い。かつてアーニャに言われたが、認めたくない
自分が・・
「Mだよねぇ」
「!!?」
突然聞こえた誰かの声
慌てて目線を前方に向けるとロイドがニマニマ笑いながら立っていた
「ろろろろろろろロイドさん」
「あはw全部口に出してたよ、君」
「ふぇええええええ!?」
「酷い目にあわされて惚れちゃったんだ?」
「ひぇえええええ!!ロイドさん!!」
それ以上言わないでください!!とスザクは全力でブリッジへと向かった
「可愛いなぁ。あの皇帝に渡すの、勿体無いね」
どうやって邪魔しようかなぁ と鼻歌を歌いながらロイドもスザクの後を追う
その後ブリッジに着いた彼が見たものは、顔を真っ赤にして「急いでください!」「もっともっと早く飛んでください!」「早く行って誰よりも真っ先に僕があの馬鹿皇帝をぶん殴るんです!!」と叫んでいるスザクの姿だった
『そうだ!君のせいで僕は十円ハゲも出来てたんだからね!!』と『望んだものは〜』のラスト後、冷静になったスザクはルルをボコります。
流石のロイドも『僕があの馬鹿皇帝を〜』のセリフは教えられませんでした。気の毒で・・・
「は?スザクをいつ好きになったか?」
そうそう、とロイドとジノは事情聴取後、皇帝に淹れて貰った紅茶を飲みながら訊ねた
彼ら二人がさっさとくっ付かないから(スザクに至っては恋心を自覚したのが最近なので仕方が無いが)、自分たちは苦労したといってもいい。一体ルルーシュが何時頃からスザクの事を想っていたのか聞いても罰はあたらないだろう
「・・・・愚問だな」
「そんな事言わないで教えてよw」
フフフと笑うルルーシュにロイドが擦り寄って追求する
「出会って10日後だ」
「「・・・・」」
そりゃお早い御自覚で・・・・ジノとロイドは言葉無くルルーシュを見つめる
****
ルルーシュ曰く、出会って十日目。スザクに泳ぎに誘われた
海でもなくプールでもない。スザクの向かった先は川だった
そして彼がルルーシュを誘ったのは山を一緒に散策していた時。
つまりは彼の思いつき
当然水着等用意していない
「どうやって泳ぐつもりなんだ?」
ルルーシュの疑問は当然の事である。水着は愚かタオルすらないのだ
しかしスザクはニッコリと笑ってこう言った
「何言ってんだ。んなもん裸に決まってるだろ」
「は?なんてはしたない!人前で全裸になるなんて」
「あぁ?お前女か?」
「なんだと?」
「俺は男なんだから裸の一つや二つ、どうってことないぜ?」
売り言葉に買い言葉
ルルーシュはスザクと共に泳ぎに出ることとなった
「・・・本気で泳ぐ気か・・・?」
「あったりまえだ!!」
躊躇うルルーシュを他所に、スザクはぽいぽいと衣服を脱いでいく
そして思い切り飛び込んだのだ
「ルルーシュも来いよ!」
太陽をいっぱいに浴びてキラキラ輝く笑みを浮かべるスザク
ルルーシュはしょうがないな、と呆れて覚悟を決めた
だが、途中で気がついたのだ
草むらの向こうでこちらを見ている男がいる事に
(!誰だ!?)
ルルーシュも皇子だが、スザクも首相の息子
SPがついている
その一人かと思ったがどうやらそうではないらしい
その男はカメラを持ってスザクを盗み撮りしていたのだ
(!!変態だ!)
ルルーシュはそう結論付けるとルルーシュが持てる一番大きな石を握って投げた
「向こうへ行け!!」
突然投げられた石とルルーシュの声に驚いた男はあっという間に逃げてしまった
「どうしたんだよ?」
その頃になって漸くスザクが異変に気がついたようだ。ルルーシュは見知らぬ男が写真を撮っていたと告げる。すると彼は「ふぅん」とだけ言うと気にした風でもなく再び泳ぎ始めた
「ふぅんってなんだ?」
「だって、俺男だもん。裸撮られても恥ずかしくない」
それよりも とルルーシュに早く飛び込めと催促するスザクにルルーシュは思ったのだ
****
「この鈍感馬鹿には俺がついていないと とな」
そしてはっきりと自覚したのはその日の夜
ルルーシュらの部屋に泊まりに来ていたスザクの寝顔が、月の光に照らされて綺麗だったからだ
手に入れたい
そう思ったのは血筋なのだろうと今のルルーシュにはハッキリと言えた
「はぁ・・・年季が違うなぁ」
「当たり前だ。俺の片思い期間をなめるなよ?」
「よくも心移りしませんでしたね」
ロイドもジノもルルーシュの一途な気持ちにただただ感心していた
「ただいま戻りました。って、二人ともまだ事情聴取?」
そこへスザクが帰ってきた
アーニャをつれておやつを買いに出ていたのだ
「お帰り。スザク君、頼んでいたものあった?」
「はい。ぷりんすぺしゃるですよね」
「アーニャ、私の分は?」
「これ。私も同じもの」
一気に場が明るくなる
やはり女の子の存在は大きいなぁ と三人の男のうち誰かが思った(スザクは男です)
「はい。陛下にはこれですよ」
どうぞ と出されたおやつを受け取りながらルルーシュは微笑む
「?何?」
「いや。やっぱりお前は可愛いなと思って」
ルルーシュの言葉にスザクは「ボンッ」という音が聞こえるくらい一気に真っ赤になった
「俺の目に狂いはなかった」
「ななななななな何言ってんだよ!?」
「照れるな。事実だ」
「もぉ・・ルルーシュ////」
「「「・・・・・」」」
目の前でイチャイチャし始めたバカップルをその場に居た三人は冷ややかな目で見つめていた
すっかりラブラブの二人。ルルーシュは子供の頃からスザク一筋でした