華麗なる一族 5
それは去年生まれた双子の次女と三女 ユーフェミアとユージニアを昼寝させた直後の事だった
双子を寝かせ、子供達の世話役の女官に後を頼み、彼女達の上の兄妹の様子を見に廊下を歩いていた時
ぽすっと、二人目の子供で五歳の第二皇子のディミトリアスと三番目で四歳の第一皇女のクリスティアナがスザクに抱きついてきた
スザクはどうしたのかと身を屈めて子供達をのぞき見る
すると二人は大きな紫の目に涙をいっぱい溜めていた
「ど・・どうされたんですか?殿下方」
オロオロと二人を抱きしめた
二人はぎゅっとスザクの服を掴んで何かに堪えている
何があったのかと問いかけても答えてはくれなかった
どうしようかと悩んでいると、正面の廊下を走ってくる影
長男のアレクシスだ
「アレク殿下」
「スザク?」
四人はアレクシスの部屋に集まった
相変わらず次男と長女はスザクにだきついている
「エリオットが悪いんだ」
「エリオットというと、ウィンザー卿の御長男でしたね」
今年六歳のアレクシス。その二つ上の少年
ルルーシュが嘗てのスザクのような友人を持たせたいとアレクシスに引き合わせた子供だ
だが、昔のルルーシュらを見ているようで笑いそうなのだが、彼らは初対面から仲が悪かった
顔を合わせて一時間後には殴り合いの喧嘩に発展し、彼の父親であるラウンズN0.9ウィンザー卿は真っ青になっていたのをスザクは思い出した
「そのエリオットがなにかしたのですか?」
エリオットはアレクシスとは仲が悪いが、下の子供には優しかった
自身にも妹が居るかららしいが、その彼がこの子達を泣かせるような真似をするとは信じられなかった
「言ったんだ。あいつ」
「?何をですか?」
「『お前らなんて母上がいないくせに!』って」
スザクは息を呑んで硬直する
「スザク。僕らの母上は何処にいるんだ?」
それまで我慢していたのだろう
アレクシスも眼を真っ赤にしてスザクに抱きついてきた
「父上は『皆同じ両親から生まれた兄弟だ』って仰った。でも、僕もこいつらも、双子も、誰も母上のお顔を見たことが無い」
「・・・で・・・んか・・」
「どうして・・・・どうして母上は僕らに会って下さらないんだ?」
会いたいんだ
アレクシスの言葉に下の二人も我慢の限界に来たのか、徐々に泣き声をあげ始め、最後には三人ともが大泣きする事となった
「・・・そこで落ち込むな」
どよーーん と部屋の隅で小さく膝を抱えて落ち込んでいるスザクをルルーシュは苛苛しながら注意する
だが、スザクは顔を上げようとしない。ルルーシュはため息をはくと彼を抱き上げベットへと運んだ
「そもそも親とは名乗らないと決めたのはお前だろう?」
「そう・・・だけど・・・あのアレクまで泣くなんて・・・」
何もかもルルーシュにそっくりな長男は、こけて怪我しても喧嘩で負けても涙一つ流さない
物心ついてからはスザクでさえ泣き顔を見たことが無いのだ
そんなアレクシスがあんな事を言って泣くとは・・・
「寂しい気持ちを殺していたんだろう」
「・・・僕の力不足だ・・・」
ぽろりとスザクは涙を流した
軍人として補佐官としての仕事もあったが、ルルーシュやジノに無理を言って出来るだけ子供達と接してきた
寂しくないように。孤独を感じないように
そうすれば母親という存在が無くとも平気のはずだと信じて
だが実際は子供達は、特に長男のアレクシスは疑問に思っていたに違いない
母親は何処にいるのかと
そして寂しかったに違いない
何故側にいてくれないのかと
「お前のせいじゃない」
「僕が・・・女の人だったら良かったのに・・・」
身体を小さく折りたたんでスザクはブツブツとつぶやいていた
ルルーシュは「女か・・・それはそれで良いかも・・・」と一瞬思ったが、すぐに首を左右に振った
「お前が女だったらとか最初から話しておけば良かったとか、そんな話はどうでもいい」
「・・・ルル・・・?」
「これからどうするか、だろう」
スザクは瞬きを数回しながら首を傾げた。そしてルルーシュをジッと見つめる
ルルーシュはフッと笑うとスザクの額に口づけた
「だが・・・それはお前の話じゃない・・・行動するのはアレクシスだ」
男同士の間に生まれたと子供達が囁かれ、傷つく姿を見たくない
スザクはそんな理由から子供達に片親だと隠して育児を続けてきた
彼は頑固で一度決めたことは最後まで貫き通す性格だ
だからルルーシュはスザクを説得して事実を子供達に明かそうとは考えていなかった
考えていたのは長男がどう動くか
このまま泣き寝入りするのか
自分に聞きに来るのか
それとも・・・
「父上」
大泣きの翌日
皇帝の執務室を訊ねてきた息子に、意外に早かったな、と感心した
アレクシスは人払いを頼みたった一人で自分に対峙した
その目は自分を睨みつけており、怒りを宿しているようだ
「何か用か?」
「お伺いしたい事があります」
言ってみろ、とルルーシュは先を促す
アレクシスの質問等解っている事だがあえて訊ねた
「母上の事です」
「・・・」
「父上は僕ら兄弟は同じ両親から生まれたと仰いました。だが僕は生まれて六年間、一度も母上にお会いした事がありません」
「・・・」
何処にいるのか?何故母親を遠くに住まわせているのか?アレクシスはルルーシュに思っていた事をぶつけた
「父上は母上を愛しておられないのですか?」
「愛している」
「・・・っ・・」
愛していないのかという質問に、ルルーシュは即答する
それまで黙って聞いていた父がハッキリと断言した事にアレクシスは安堵し、そして怒りを感じた
ならどうして母を遠ざけているのか
「お前は間違っている」
「・・・?何を・・・ですか?」
「全てが、だ」
アレクシスにはルルーシュの言っている意味が解らなかった
首を傾げているとルルーシュは「後は自分で考えろ」とだけ告げた
間違っている
父親の言葉を頭の中でもう一度思い出しながらアレクシスは廊下を歩いていた
少々俯き加減だったからだろうか、目の前に迫った人物に気がつかなかった
どん!
「「いった〜」」
アレクシスとぶつかった相手は同時に尻餅をついて倒れこんだ
「「ごめん!考え事してて・・・って・・・」」
お互い自分達の不注意だと謝ろうと顔をあげた
そして相手の顔を見て「あ」と口を開く
「アレクシス!」
「エリオット!」
ぶつかったのは赤茶の髪に茶色の瞳を持った二歳年上の少年、エリオットだった
「父さんに殴られた」
「・・・・そうか・・・」
エリオットは父であるウィンザー卿にアレクシスへの態度を叱られたのだといった
ルルーシュは二人に「身分を忘れて友になれ」と言った為、彼らの間には皇子も騎士の子供という壁はない
その為、エリオットはアレクシスに敬語を使わないし、思った事も遠慮なく言う子供になった
それでも言っていい事と悪い事がある
会えば必ず喧嘩する二人だが、翌日には何事も無かったかのようにまた顔を合わせている
本当はルルーシュの望んだ通りの友人関係になりつつあると言ってもいい
だが、『お前らなんて母親がいないくせに』という言葉は友人でも言ってはならなかった
アレクシスは表には出していなかったが、下の兄弟達と同じ様に母親を恋しがっていた
その感情を教えてもらった訳ではないが、少し考えれば解る事だ。自分に置き換えて考えれば、すぐに
「悪かった。お前たちがどれだけ「エリオット、その話はもういい」」
アレクシスはエリオットの話を中断させた
それにエリオットは悲しげな顔をしたが、アレクシスが微笑んでいた事に気がつくと、コクリと頷いた
「・・・でも僕は母上を探してみようとおもう」
「どうやって?宮殿にはいないんだろう?」
廊下を並んで歩きながらアレクシスはラウンズのサンルームへと向かった
先程人払いをした時に、ラウンズNO.2ジノ・ヴァインベルグも部屋を出た。きっと彼はそこに居るはず
「ヴァインベルグ卿に何の用なんだ?」
「ジノはスザクとともに父上に近い重臣。きっと母上の事も知っているに違いない」
アレクシスは歩く速度をあげた
エリオットは慌てて付いて行く
父は調べるなとは言わなかった
ただ「お前は間違っている」とだけ言った。そして「後は自分で考えろ」と
自分は何を間違えているのか。母は何故姿を見せてはくれないのか。その答えが知りたかった
「ジノ!」
バン!と勢い良く扉を開けて入ってきた皇子に、ジノは苦笑するしかなかった
『アレクシスは恐らくお前の所に行くだろう』
ルルーシュからそう連絡があったのはつい数分前。
それを知らされて『ついにきたか』と呟いた
どれだけスザクがその問題から遠ざけようとしてもいつかは疑問に思い訊ねてくると予想されていた事
『母は誰で何処にいるのか』という疑問
隠し通せるわけが無いのだ
最初からいつかこうなると解っていた
「単刀直入に聞く。僕の母上の事を知らないか?」
じっと見上げてくる瞳は美しいアメジスト
スザクが「綺麗だ」と言っているルルーシュと同じ瞳
ジノは身を屈め、アレクシスの頭を撫でた
「知っています。ですが詳しいことはお教え出来ません」
「!何故?父上の命令か?」
「違います。殿下が会いたいと思われている方がそう希望されているのです」
「母上が・・・?」とアレクシスはショックを受けているようだった
ジノは申し訳ないとアレクシスを抱きしめた
「母上は・・・僕らを愛しておられないのか?」
「違います。誰よりも殿下方を愛しておられますよ」
「だったら・・・どうして・・・・?」
ぎゅっと背に回された小さな腕
ああ、成長されたのだ とジノは嬉しくなった
(スザク。殿下は御自分で考え、行動される歳になられた)
もう打ち明けても良いのではないか?
ジノは生まれたての長男を腕に抱き、優しく笑っていた同僚を思い出した
「・・・・私が言えるのは一つだけ。貴方方は常に愛され見守られてきたのです。今までも、そして・・・これからも」
アレクシスは俯きながら廊下をとぼとぼと歩いていた
その後ろをエリオットが心配げについてくる
どうしたら良いのか・・・エリオットは嘗て無いほどに落ち込む友人でいずれ主となるであろう皇子を見つめていた
誰かに助けて欲しいと祈っていると、それはひょこりと姿を現した
「はいはい。どうしました?アレク殿下」
ロイド・アスプルンドだった
「『母上』?」
「そう。母上だ」
ロイドに連れられてアレクシスたちはアスプルンド邸にやって来ていた
彼の好物でもあるプリンを食べながらアレクシスは母について訊ねた
どうせ彼も教えられないと言うのだろうと期待してはいなかったが・・・
「母親ねぇ・・・母、と言えるかな、『あの子』が」
ぽつりと溢したロイドを二人は驚いて見つめる
「伯爵、どういう事なんです?アレクの母親って・・・?」
「ん〜?きっと『母上』なぁんて言ったりしたら、『あの子』複雑な顔すると思うんだよね」
「・・・はぁ?」
エリオットは首を傾げた
どうして母上と呼んだら複雑な顔をしなければならないのか
「ま。『あの子』に会えば解る事だよ」
「何処にいるか知らないから会えない」
ロイドの言葉にアレクシスは感情無く答える
その言葉にロイドは苦笑した
「本当に解らない?」
「ああ。誰も教えてくれないから」
「君達はあんなに愛してもらって、それでも本当に解らない?」
「!愛してもらって等いない!!」
一度も会った事がない
一度も声を聞いたことが無い
一度も抱きしめてもらった事がない
「僕らは・・・愛されてなんか・・・いない」
「・・・アレク・・・」
ぱたり とアレクシスの目から涙が落ちる
エリオットは初めて見る彼の泣き顔に驚き何も出来ずに見つめた
ロイドは一口プリンを口に運ぶと、それを飲み込んだ後口をひらいた
「宮殿に帰ってみなよ。そして家族を見つめてごらん」
『あの子』を見つけられるかもしれないよ とロイドは笑った
「お帰りなさい、お兄様」
「お帰り、兄上」
ロイドに言われるまま宮殿へと帰ったアレクシスは、弟と妹に出迎えられた
そしてその後ろには双子を抱いたスザクの姿
「お帰りなさい、殿下」
「・・・ただいま」
アレクシスはエリオットと共に家族全員が集まる部屋へと向かう
その部屋は子供がまだ小さいからかいろんなオモチャが散乱していて少しごちゃごちゃしていた
だが自分たちは毎日ここの部屋に集まる
父上とスザクと僕とディミトリアスとクリスティアナ。そして双子のユーフェミアとユージニア
妹と弟が父上に今日あった事を報告して、父上がそれついて色んな感想を言ってくれる
褒めてくれたり、注意したり
それをスザクは優しく笑って見つめている
(それが僕の家族)
そこまで考えてアレクシスは疑問に思う
(・・・何故・・・スザクは僕の家族の中にいるんだ?)
ナイトオブワン 枢木スザク
ルルーシュの幼馴染で首席補佐官
ルルーシュの子供達を育ててきた人
アレクシスも彼に育てられた
(・・・スザク・・・?)
アレクシスはジッとスザクを見つめる
彼はクリスティアナを膝に乗せ、ディミトリアスと楽しげに会話していた
違う!
アレクシスは怒りを覚えた
違う!ここは家族の部屋だ!
スザクは違う!彼は他人だ!
どうしてここにスザクがいて、母上はいないのだ!
そう思った瞬間、アレクシスは叫んでいた
その言葉を聞いたスザクの顔をアレクシスは二度と忘れないと後に思った
「・・・スザク?」
「・・・ジノ・・・・じのぉ・・・」
屋敷に戻ると執事からスザクの来訪を告げられた
時間は夜の八時
こんな時間に彼がここを訪れるとは普段では考えられない
彼は子供達を大切にしていて、出来る限り自分の時間を子供達と過ごす事にしているのだから
「お前、泣いてんのか?どうしたんだよ?」
「・・・っ・・・ぼくっ・・・もぅ・・・どうしたら・・・」
泣きながら抱きついてきたスザクを受け止め、ジノは大きなため息をはいた
「えぇ・・今夜はこちらでお預かりします。ですから貴方はそちらを・・・はい、解ってます!手なんか出しませんよ!!・・・はい。失礼します」
ルルーシュとの電話を切り、ジノはスザクが横になっているベットへと腰掛ける
「陛下に連絡はした。今日は何も考えずにこのまま寝ろ」
「・・・ジノ・・・僕・・・」
「ラウンズ辞めて補佐官辞めて、故郷に帰るなんて無しだぞ?」
「っ!」
「・・・図星かよ・・・」
そんな事をしたらルルーシュは大軍をもってあの国を攻めるだろう
スザクを捕まえる為に
「あの人はお前を手放すくらいならお前を殺すだろうよ」
「だって・・・」
「今日はもう寝ろって。ほら、精神安定剤」
スザクは薬を拒否したがジノは無理矢理それを飲ませた
何も考えずに寝かせたかったのと、色々考えた挙句故郷に帰られては困る
今彼に勝手に行動されては更に話がややこしくなりそうだからだ
「では頼んだぞ、ジノ」
ジノとの電話を切り、ルルーシュはため息をはいた
執務を終えて帰宅すると双子が大泣きしていた
スザクはどうしたんだと探したが姿が見えない
仕方なく双子をあやしながら女官に預けた
その時にスザクの居場所を訊ねたが「解らない」という答えだった
おかしいと首を傾げているとエリオットがルルーシュのもとへと走ってきた
『大変です、陛下!』
エリオットは全てを話した
許せなかった
兄弟達と楽しげなスザクを見て
スザクと楽しげに話す兄弟を見て
そこは『母上』の場所
スザクがいるべきじゃない
そうか、解った
スザクがいるからだ
だから『母上』は此処にいてくださらないのだ
スザクがいるから『母上』は僕らを愛してくださらないのだ
そう思った瞬間、叫んでいた
『お前が!スザクがいなければ母上は僕らの側にいてくださるのに!スザクなんか!いなくなればいいんだ!!』
その言葉を聞いたスザクの顔は、それまでに見たことの無い顔で
今にも泣きそうで(いや、泣いていたのかもしれない)本当に消えてしまいそうなほど頼りなげだった
「・・・お前がここまで馬鹿だとは思わなかったよ、アレクシス」
「っ!父上、僕は!」
「言い訳はいい。お前は言ってはならない事を言ってしまった」
ギュッとアレクシスは拳を握った
スザクはいつでも笑っていた
優しくて温かくて、いつでも包んでくれて
怒られた事もあったけど、スザクが嫌いになったわけじゃない
スザクは大好きだ
ずっと側にいて大切に、愛してくれた人
「・・・」
「このままスザクが戻らなければ、お前は一生『母親』には会えない」
「・・え?」
どういう事なのだとアレクシスはルルーシュを見つめる
だがルルーシュは目線をアレクシスから足元の二人の子供に向けた
アレクシスの兄弟はスザクの不在に不安感を募らせていた
「父上・・・スザクはどこ?」
「スザクはどうしていないの?」
もう寝る時間なの とクリスティアナは泣きそうな表情で呟いた
毎日スザクは子供達を寝かしつけていた
必ずおやすみのキスをしていたのだ
ルルーシュは二人を抱き上げるとそれぞれの髪に口付けた
「すまないな・・今日は父様で我慢してくれ」
「スザクがいいよぉ」
「スザクじゃないと嫌なの・・・」
「・・・・」
ぐすぐすとぐずり始めた兄妹を見てアレクシスはショックを受けた
兄弟は『スザク』を求めている
『母上』ではなく『スザク』を
「っ!」
改めてスザクという存在が自分達にどれだけ必要な人物が解らされた瞬間だった
そして突然思い出す
私が言えるのは一つだけ。貴方方は常に愛され見守られてきたのです。今までも、そして・・・これからも
本当に解らない?君達はあんなに愛してもらって、それでも本当に解らない?
「・・・まさか・・・・そんな事が・・・」
小さく呟いた言葉
その言葉はルルーシュに届いていた
「俺から最後に一つだけ」
「!」
ルルーシュは二人の子供を抱いたままアレクシスを振り返る
アレクシスは大きく目を開いたまま父を見つめた
「アレは自分の子供を他人任せにはしない」
「!」
「お前も、こいつらも、双子も。お前たちは」
「・・・ずっと・・・愛されていた」
「そうだ」
アレクシスは小さな声でその人の名を呟いた。ルルーシュには聞こえなかったが誰の名を呼んだか解っていた
「僕・・・行きます」
「そうか」
キュッと唇を噛み締めた息子を見て、ルルーシュは笑った
突然の訪問に嫌な顔をする事無くジノは迎え入れてくれた
嬉しそうに微笑んで・・・
「薬を飲んだので朝まで起きませんが・・・」
「良い・・・」
ジノはアレクシスをスザクが寝ている部屋へと案内した
暗い部屋
その中央のベットに彼は眠っていた
ジノに小さな明かりをつけてもらい様子を伺う
「・・・スザク・・・」
「泣いていましたよ」
「っ」
アレクシスはスザクの涙に濡れた頬にふれた
すると眠っているのにつぅっと再び涙が流れる
それを見てアレクシスは泣きたくなった
なんて酷い事を言ってしまったのだろう
大好きで大切なたった一人の人なのに
「明日の朝、ちゃんと謝れますね?」
「ああ・・・有難うジノ。この方を保護してくれて」
ジノはにっこりと笑って部屋を後にする
アレクシスはゆっくりとスザクの隣へと滑り込む
「・・・・」
(まだ小さかった頃、弟と妹と共にこうしてスザクのベットで一緒に眠った事がある)
まだアレクシスが母親という存在をはっきりと知らなかった頃の話だ
ルルーシュは「自分の部屋で寝ろ!」と怒っていたがスザクは嬉しそうだった
四人で横に寝転んで誰がスザクの隣で寝るかを兄妹で喧嘩までした
結局長子であるアレクシスが下の兄妹に譲る形になったが、「ご立派ですよ」とスザクからご褒美のキスを貰ったのを覚えている
それは、くすぐったくて心地良くて温かくて優しいキスだった
(いつだってスザクは優しかった。あたたかかった。僕らはずっとスザクの愛に包まれて大きくなった)
母という存在が自分達の側にいないことに気がついても、寂しいと会いたいと思っても探そうと思わなかったのは
(スザクがいたから『母親』なんて必要なかった)
けれどそれは間違い
必要ないから探さなかったのではない
母は側にいたから
探すまでも無い。ちゃんと自分達の側にいたのだから
ルルーシュの言った「全て間違っている」とはこの事
母は此処にいた
ずっと一緒に暮らしていた
六年間一度も会うどころか、毎日顔を合わせ、声を聞いていた
ずっとその優しい腕に抱かれていたのだ
「・・・ははうえ・・・」
アレクシスはスザクに抱きつくと微笑みながら目を閉じた
翌朝、アレクシスは「母上」とスザクを呼んだ
その言葉に一瞬嬉しそうにしながらも、複雑な表情をしたスザク
アレクシスがその理由に気がつくのは一緒に手を繋いで宮殿に帰った後だった
次男は髪の毛くるくるなルルーシュ
長女は女版ルルーシュ(髪ロング)
全て黒髪の子供で「相変わらず遺伝子強いね」とロイドに呆れられています
次女・三女も同様に黒髪です