君は知らないだろう
『私の気持ち』を
「でね、ルルーシュのアホがね」
スザクは昼食を食べながらルルーシュの不満を口にした
その隣ではジノがクスクスと笑いながらその話を聞いている
「だから僕は今日一日ルルと口聞かないんだ。だからルルーシュの相手は君がして」
「はいはい。でもお前が側にいないと五月蝿いんだよ、あの人は」
「・・・・・///うん」
ルルーシュとスザクがアツアツ夫婦である事等世界中が知っていた
スザクが役目の為に何処かへ出ている時等、ルルーシュの機嫌は最悪であることも有名だ
「だからあまり喧嘩しないでいてくれると皆が助かる」
「う・・・ごめん・・・」
「今夜にでも仲直りしてくれるか?」
「うん。する」
にこりと笑うスザクの髪を撫でてジノは微笑んだ
『もぉ!なにするんだよ!!』
午後から外国の特使と会う仕事の入っていたスザクは、ジノによって乱された髪を治す為にその場を離れた
「・・・はぁ・・・」
ジノはため息をはく
目を閉じればスザクの明るい笑顔
「ヤバイな・・・これは・・・」
一番最初に会ったときは笑わない少年だった
史上初のナンバーズ出身のラウンズ
虐殺皇女の騎士
彼がラウンズに任命される事となった功績
(ゼロを捉まえて皇帝に差し出したという例の話)
や貴族達が面白がって流した噂もあってか、常に誰かの目が彼に注がれていた
だからなのか、彼の表情は常に硬く、何故か誰も近くに寄せ付けない人物だった
そんな彼の表情が動いたのは復活した『ゼロ』の出現
それが嘗てのゼロなのかそれとも別人なのか、その時のジノには解らなかったが解ったのは唯一つ
スザクの心が動いたと言う事
「私がお前の心を動かしたかったのにな・・・」
結局スザクの目はゼロに向けられた
常にゼロを追い、ゼロの事を考えていた
振り向いてほしくて側にいた
ゼロよりも自分の事を考えてほしくて
あんな厳しい表情よりも笑っていてほしかったのに
「ヤバイよな・・・本当に」
今の彼はルルーシュの物
彼もそれを望み、彼の側で幸せそうに微笑んでいる
そして・・・・
「ジノ様!」
ぱたぱたと一人の少女が駆けて来る
茶色の髪に翠の目をもったこの国の第四皇女
スザクに良く似た外見を持つスザクの娘
「・・・どうしたんですか?殿下」
「お母様からジノ様がここにいると聞いたので」
10歳の彼女は頬をピンクに染めて微笑んだ
スザクよりもずっと幼い、女の子らしい優しい笑顔
「ジノ様、今度お母様とケーキを作るんですよ」
「へぇ。それはどんな?」
「生クリームとイチゴのです。きっと美味しいです」
「それは楽しみでしょう?」
「はいv・・・・ジノ様、味見してもらえますか?」
マリアンヌは不安げな表情でジノを見上げる
ジノはクスリと笑うと、ゆっくりと頷いた
****
「ウチの娘を誑かすんじゃない」
「・・・・覗き見ですか?趣味の悪い」
午後の執務室
昼食から帰ってきたルルーシュは入ってきた途端、ジノに向かってこう口を開いた
「大丈夫ですよ。殿下は私に憧れているだけ。成長されればきっと」
そう
マリアンヌは身内にはない色をもったジノに、両親とは違う大人のジノに憧れているだけなのだ
大きくなればきっと彼女は歳相応の相手を見つけて恋に落ちる
そう考えていた
しかし、ルルーシュはジノを睨みつけたままだった
「・・・陛下・・・」
「お前は本当にそう思うのか?」
ルルーシュの言葉にジノは無言で頷いた
しかしルルーシュは表情を変えない
ジノはもう一度「陛下」とルルーシュに呼びかけた
「・・・・」
「大丈夫ですよ。私はそれほど常識がないわけではありません」
そうだ
あんな歳の離れた女の子に自分が・・・
ジノがどんなに「大丈夫」を繰り返しても、ルルーシュの表情が和らぐ事はなかった
****
「ジノ〜。マリアンヌとケーキ作ったから食べに来て」
先日マリアンヌが言ったとおり、彼女はスザクと二人でケーキを作ったようだ
ちょうどルルーシュが留守にしている今日にあわせたところにスザクの意思を感じる
「マリアンヌ、頑張ったんだよ」
「・・・そうか」
スザクと並んで歩いているジノは優しく彼に微笑んだ
スザク、君は知らないだろう
私がどれだけ君を見ていたのか
知らないだろう
私がどうして君の娘と会っているのか
知らないだろう
私の気持ちを
ジノ→スザ・・・・・