皇帝陛下の一日






神聖ブリタニア帝国
世界の誰もがその名を知っている巨大国家
そしてその国を治めるのは、これまた世界の誰もが知っているルルーシュ・ヴィ・ブリタニア陛下

これはそのルルーシュ陛下の一日






AM6:00

皇帝陛下は毎日この時間に起きる
ころりと寝返りをするとそこには愛する妻・・・・・・・・・・・の姿はない
鍛錬好きな奥様は毎朝トレーニングに出かけているのだ
一緒のベットで休むようになって初めての朝、いなくなった奥様に非常に慌てたものだが、今ではすっかり慣れたものだ
早く帰ってこないかなぁ・・・とこぼしながらベットでごろごろする皇帝陛下だった




AM6:30

三十分もごろごろしていたのか・・・と奥様に呆れられるのだが、この時間になると皇帝陛下は朝のシャワーを浴びにやっとベットから出てくる
しかし寝起きが悪くてゴロゴロしているのではない(皇帝陛下談)
皇帝には皇帝なりの理由があるのだ


「あ・・・おはよ、ルルーシュ」
「おはようvスザク」


ちょうどこのくらいの時間になると、愛する奥様がトレーニングを終えて戻ってくるのだ
そして奥様もシャワーを使う
つまり現在のように浴室で『偶然』会ったように見せかける為に三十分も無駄にゴロゴロしているのだ


「ルルーシュ、お先にどうぞ」


僕は後で使うよ。と奥様が皇帝陛下にシャワーの順番を譲る
だが皇帝陛下がそんな事を受け入れるわけがなく


「一緒に入れば良いじゃないか」
「やだ」
「即答か!」


当たり前じゃないか!と奥様はじろりと皇帝陛下睨みつけた
皇帝陛下が朝のシャワーをこの時間にしているのに理由があるように、奥様には皇帝と一緒に浴室に入る事を拒否する理由がある


「だって君はいつもっ・・んっ・・・やめっ」
「ん〜?なんだって?」
「んっや・・・・・だから」
「聞こえないなぁ」


道着という見方によっては非常にエロい衣装を着た奥様に皇帝陛下は悪戯を働くのだ
しかし、悪戯だけで済めば奥様もここまで(恐らく)嫌がらないのだが、八割ほど悪戯だけで終わらなかった
残りの二割は・・・時間が時間だけにここではあえて言わずにおこう


「っやぁ!るる」
「相変わらず感度が良いな、お前」


皇帝陛下も伊達に長年奥様と閨を共にしていない
奥様の弱い所は一つ残らず記憶している
これも奥様がエロ可愛いからいけない。皇帝陛下はそう思っていた


「るるっ・・・・」
「どうする?このまま・・・」
「・・・やっ・・・・だからっ!」


あれよあれよと着ているんだか着ていないんだかな状態になってしまった奥様はキッと皇帝陛下を睨みつけた


「朝から!」
「っ!」
「止めろ!」


後一歩でベットへなだれ込めそうだった皇帝陛下だったが、残念ながら今日は悪戯だけで終わらさなければいけないようだ
皇帝陛下は、神速で繰り出された奥様渾身の右ストレートを紙一重で避け(長い付き合いなので最近は五分の確立で避けられる)、サッと距離をとった


「避けるな!」
「避けないと私が死ぬじゃないか」
「一回死んだほうが世の為だ」
「愛が感じられないぞ〜」
「喧しい!」


怒る奥様を残し「ハハハハ」と笑いながら皇帝陛下退場
十分ほどで出てくる奥様と交代してシャワーを浴びる




AM7:30

皇帝陛下は朝食をとる為に部屋を移動する
勿論奥様も一緒に


「おはようございます母上Vv・・・・と父上」
「おはよう」
「・・・おはよう・・・・(私はついでか?アレクシス)」


子供達も既に集まっており、全員が揃った所で朝ごはんとなる
家族全員で朝食
これは皇帝一家のお約束のようなもの
一番年下で一番溺愛している末娘以外は学業なり公務なり何らかの役目がある
その為、昼食や夕食よりも朝の方が全員揃って一緒に食事が取れるのだ
可愛い子供達の顔を見ながら食べるご飯は最高だ、と思いながら皇帝陛下はトーストを口に運ぶ
余談だが、奥様が日本人である為一週間のうち二日ほど日本食の朝御飯が出てくる


「ごちそうさまでした」
「・・・スザク、もう少しゆっくり食べたらどうなんだ?」


家族の中で一番の早食いは奥様だ
軍人生活が長かったせいで、食事中一言も話さず、もくもくと咀嚼し子供達が半分食べ終えた所で終了してしまう
そして一人さっさと仕事へと出かけてしまうのだ
皇帝陛下はそれをいつも注意する
しかし奥様は「癖になっているから仕方ない」と苦笑するのだ


「戦場じゃ食べられる時間なんてないに等しいし、コックピットでササーっと済ませる事だってあるしさ」
「今は戦場になんて行かせてないだろ?」
「だから癖なんだって」


それに、とスザクは続ける


「君が執務室に来るまでに僕にはやっておかなきゃならないことがあるんだよ?」
「・・・朝食の時間に仕事の話はあまり良いとは言えないな」


皇帝陛下と奥様のお仕事は決して綺麗なものばかりではない
二人きりならともかく、子供達の前で仕事の話はしない
というのが二人の間で以前から決まっている事だった
それを注意すると奥様は「ごめん」とすまなさそうに謝る
皇帝陛下はクスリと笑い、奥様の頬に軽くキスを贈った

それを長男のアレクシスが面白くなさそうに睨んでいた。それを横目で見ながらニヤリと勝ち誇ったように笑ってやった
皇帝陛下は実子であろうと容赦しない
奥様は自分のモノなのだ






AM8:30


皇帝陛下御出勤
奥様はさっさと出勤済みなので一人で出かける


「お父様いってらっしゃい」
「いってくるよv」


愛娘のマリアンヌに見送られながらご機嫌で出発する・・・・といっても歩いていける距離で、散歩を兼ねてゆっくりと執務室へと向かう
前皇帝は百人以上いた妻のうちのどなたかの離宮から出発する事が多くあったが、この皇帝陛下はスザクしか妻にしておらず、家族全員で一緒に暮らしている為移動にかかる経費が発生しない
これも幼少期に苦労したお陰か、皇帝陛下は倹約家だった





「おはようございます、陛下」
「おはよう」


執務室へ入ると補佐官である奥様とナイトオブワンのジノが席を立ち、皇帝陛下を出迎える
それに答えながら席に着き、奥様らから今日のスケジュールを聞く
どうやら今日は一日執務室に缶詰らしい
それを表情に出さずに「つまらん」と心の中でため息をはいた
ジノは気がついているようで苦笑していたが、奥様は気が付いていない
奥様の方が付き合いが長い筈なのに気がつかない
これは王宮の七不思議のひとつである







「では今日もよろしく頼む」
「「Yes, Your Majesty」」


AM9:00

執務開始


「・・・・」


執務中の皇帝陛下は非常に真面目だ
奥様やジノと必要な事項について会話はするものの、基本的には黙々と仕事をこなす
しかもその処理速度は驚くほど速い
ちゃんと目を通しているのかと奥様が意地悪で内容について質問してみた所、キッチリ答えた事から内容を理解してサインしているようである







AM11:00

その日によって時間は違うが今日はこの時間に皇帝陛下は動いたようだ
現在執務室には皇帝陛下と奥様の二人きり
お邪魔虫ジノはラウンズのミーティングで出かけていた


「スザク、少し良いか?」
「はい」


奥様は皇帝陛下に呼ばれ、その正面に立った


「これとこれにもう一つ資料があったと思うんだが」
「・・・・はい、ありましたね。必要ですか?」


コクリと皇帝陛下が頷く
奥様は「わかりました」と頷き、資料室へと向かう
それを見送りながら皇帝陛下はニヤリと笑った


「素直だな、相変わらず」


最愛の奥様を微笑ましく思う
皇帝陛下の指示した資料
確かに資料室に保管されている。しかし資料室に保管されている書類は全て電子化されているのだ
つまり皇帝陛下や奥様の机にあるPCで簡単に検索・閲覧出来るのである

奥様は素直だ
そしてそこが一番可愛らしい所なのだ
皇帝陛下は奥様への愛を更に深めてクスクスと笑った




十五分後、執務室に戻った奥様は皇帝陛下の脱走を知ることとなる




AM11:30


「それじゃジノ頼んだよ」
「ああ・・・つーか、午前の執務は済んでるんだし、別に良いじゃないか」


約十五分前に皇帝陛下の脱走を知った奥様だったが、執務室を無人にすることは出来ないとジノが帰ってくるまで苛々しながら待っていた
そしてジノが帰って来た為留守番を頼み、自分は皇帝陛下捜索に出かける事したのだ
しかし脱走するまで真面目に仕事をしていただけあって、皇帝陛下は午前中にやるべき仕事の全てを終わらせて脱走している
流石の彼も独りで外へ出かけるような真似はしない
それに皇帝陛下は昼食を奥宮に一人でいる愛娘と奥様の三人で(他の子供達がいればその子等とも)とる事を日課にしている
そして昼食後は執務室に戻り、再び真面目に執務をこなす人なのだ


「なに言ってんだよ、ジノ」


しかし奥様はそれで納得しない


「就業時間中は仕事があろうとなかろうと執務室にいるべきだろ」
「だがやる事もないのに執務室にいられても」


見張られているようで落ち着かない
暇なのであれば散歩の一つや二つ、やっても構わないのではないか
ジノはそう主張する


「君の言いたい事も解るけど、僕は認めません!」
「・・・はいはい。あ、12時になったら奥宮に帰っても良いからな」
「・・・解ったよ」


こうして奥様は皇帝陛下捕獲の為出撃する








PM0:10




12時が過ぎ、このままではマリアンヌを待たせてしまう と奥様は皇帝陛下捜索を中断し奥宮へと戻った
というか、今頃は皇帝陛下も向かっている事だろう。そこで捕獲すれば良いだけの話なのだが、娘の教育上、父親を母親が取り押さえている所を見せるのはどうかと思い、出来るだけ奥宮に入る前に捕まえたかった
しかし見つからない


「あのクソ皇帝、覚えてろよ」


この言葉使いこそ教育上宜しくないと思うが生憎奥様は気がついていない
だが表情だけは「平常心平常心」と自分に言い聞かせ、娘が待っているであろうダイニングルームのドアを開けた


「やっと帰ってきたか」
「お帰りなさいお母様v」
「・・・・・・・ただいま」


ダイニングには可愛い娘と可愛くない皇帝陛下がいた
そしてただ居ただけではなく、二人はお揃いらしいエプロンを身に着けて奥様を出迎えたのだ


「・・・可愛くない・・・」
「酷いな」


苦笑する皇帝陛下はピンクのフリフリ花柄エプロンを着用していた
可愛いマリアンヌなら兎も角、おじさんになった皇帝陛下にピンクのフリフリで花柄はないだろう
奥様は一歩引いた


「お父様、可愛いです」
「マリアンヌは優しいなv」
「・・・いや、可愛くないから」


むしろキモイだけだから
奥様と末娘とでは可愛さの基準が違うらしい




「早く座ってくださいv」


マリアンヌは奥様の背を押しながら席に着くように促した
言われるままに椅子に座ると、皇帝陛下がトレイに昼食を乗せてダイニングに戻ってくる


「お父様と作ったんですv」
「頑張ったんだよなv」
「はいvV」


皇帝陛下と愛娘の合同作
それはオムライスだ

早く食べてと娘に促され、奥様は手を合わせてから一口食べた


「〜〜」
「・・・どうですか?」


マリアンヌは真剣な表情で奥様の言葉を待つ
奥様はフルフルと震えながら「グッ」と親指を立てた


「美味しいぃぃ!卵が半熟でとろっとろで」
「チキンライスは?」
「絶妙!!」


君たちは天才だ
奥様はニコニコしながら二口目を口にした


「えへへv」
「良かったな、マリアンヌ」


照れくさそうに笑う娘の頭を撫でて、皇帝陛下も自作のオムライスを食べ始めた



本日の皇帝陛下の脱走は、この父と娘のオムライスの為であったようだ
それを知った奥様は、皇帝陛下に振るう筈だった鉄拳を収める事にしたらしい・・・




PM1:30


皇帝陛下は奥宮を後にして執務室へと向かった
奥様はマリアンヌと一緒に奥宮に残り、今度は奥様が愛娘と合同作を作製する
所謂三時のおやつだ

ところで、ここ最近の皇帝陛下の歩くルートに変化が出来ている
これまでは奥宮から執務室へ向かうのになるべく奥の通路を使うようにしていた
奥の通路は皇族や上級仕官でなければ通ることは出来ない
しかし、最近の皇帝陛下はそちらを通らない


「あv皇帝陛下よ!」


きゃーvという黄色い歓声に皇帝陛下はロイヤルスマイル(営業用)で答える
そう、最近の皇帝陛下は、防弾ガラスで区切られてはいるものの、一般人が入る事ができる区画まで足を運んでいるのだ

某国某地方県知事が大人気と知った皇帝陛下は、「奴にできるなら私にも出来る、いや出来ない筈がない」と観光客用に王宮の一部を解放
流石に入場料などは取らないが、王宮内のお土産コーナーにはしっかりと皇帝陛下やナイトオブワンのお菓子やグッズが販売されており、休日には全て完売する程の大人気だ
しかし、平日は売り上げが少ない。観光客が来ないのだから仕方がない
そこで皇帝陛下は平日のこの時間にこの場所を通る事にした
そうする事により平日にも観光客が大勢押し寄せるようになり(皇帝陛下見たさに)、平日でもまずまずな売り上げを確保出来るようになった
観光客一人につきお土産を最低三個は買わせる
それがここ最近の皇帝陛下の目標だったりする

因みに奥様のグッズは販売されていない
それは嫉妬深い皇帝陛下の命令で、イラストだろうとなんだろうと自分以外の人間に奥様を渡したくないという我儘からである
実は最近ロイドとセシルがこっそりと通信販売で奥様グッズを販売しているのだが(懐かしの特派時代の絵葉書等)皇帝陛下は気がついていない




PM2:00


営業用スマイルで観光客に答えていた皇帝陛下はやっと執務室に到着する
が、これから午後の執務を行ったりはしない
この時刻から奥様を省いての会議が行なわれるのだ


「失礼します、父上」
「お邪魔するよ〜」


皇帝陛下の執務室到着を待っていたかのように会議のメンバーが姿を現す
そのメンバーとは皇帝陛下、長男アレクシス、奥様の後見人ロイド、ナイトオブワン・ジノの四人


「全員揃ったな」
「んじゃぁ、昨日の続きね〜」


一見すると真面目な会議に見えるのだがここに奥様が居ない事が重要だ
政治に関することなら補佐官である奥様は必ず参加する
寧ろ参加しない方がおかしい

ではこの会議はなんなのか
それはそれぞれが『自称スザク馬鹿』である彼らによる彼らの為のスザク自慢大会

「今日のスザクはこんなに可愛かった」だの
「僕にだけこんな風に言ってくださった」だの
「目をうるるっとさせて、お願いしますなんて言ったんだよ」だの
「君と居ると落ち着くよって笑ってくれた」だの と各自がどれだけ奥様と親密であるかを自慢する大会だ

だが時折彼らも真面目に話し合うときがある


「父上、やはりここはプランDの方が良くありませんか?」
「・・・そうだな・・・そちらだと二分短縮出来るな」
「だけどぉ、そうなるとこっちの時間が無くなるよ?」
「・・・・・真剣ですね」


三人の会話をジノは感心半分呆れ半分で聞いていた


「当たり前だ。これはとても重要な計画だ」
「・・・スザクに女装させる事がですか?」
「母上が女装すれば経済効果は一億ポンド。これまで何度ブリタニアが救われたか」
「まぁ、殆んど僕らの為だけどね〜」


今日の会議はいかに自然に奥様を女装させるか
それを話し合う会議だった
奥様や周囲を巻き込む皇帝陛下の悪戯
その計画は七割がこの会議で決まる
(残りの三割は皇帝陛下一人で決めている)

この会議に奥様が参加しないのはこういう訳なのだ





PM3:05


奥様が末娘と作ったおやつを持って執務室へ帰ってくる
皇帝陛下は3時前くらいに先程の会議を終わらせ、残りの時間で手早く仕事を進める
奥様にサボっていたのがばれない様に神速でだ


「今日はたこ焼きにしてみました〜v」
「たこ焼きか・・・ネギとマヨネーズは?」
「持ってきたよ」


ならたっぷりかけてくれ
皇帝陛下はネギマヨたこ焼きがお好みのようだ

因みに、マリアンヌに呼ばれたジノはアレクシスやロイドと共に奥宮へと移動している
つまり執務室は奥様と皇帝陛下の二人だけ


「ん」
「・・・んって、君・・・」
「だから、ん」
「・・・・」


もし二人きりでなければ奥様にぶっ飛ばされていただろう
しかし現在二人きり
奥様は「仕方ないなぁ」と苦笑しながら、情けなく口を開けている皇帝陛下へとたこ焼きを一つ運ぶ


「はい、あーん」
「あ〜んv」


ぱくり
皇帝陛下は満足そうに微笑んでたこ焼きを頬張った
いまだ日本に残っているリヴァルに送ってもらったたこ焼きソースとたこ焼きプレートは皇帝陛下のお気に入りだ
たまに夕飯として家族でたこ焼きパーティを行うほど大好きなのだ


「今度屋台でも出してみたいな」
「皇帝陛下がたこ焼き焼いてたら、国民はビックリするだろうね」


そして行列が出来るほど馬鹿売れしそうだよ
奥様はたこ焼きを焼いている皇帝陛下を想像し、クスリと笑った





PM3:30〜6:50


それまで遊んでいた皇帝陛下も奥様が側に居る事でやる気を取り戻したようだ
もの凄い速さで仕事片付けていく
今日中に処理しなければならない書類を残す事を奥様は大変嫌う
終了するまで執務室から出してもらえなくなり、それだけ奥様とのラブラブタイムが減ってしまうというもの
故に午後の皇帝陛下は鬼となる

因みに本来の終業時間は午後六時
しかし今日は既に五十分も過ぎている
理由は、マリアンヌの所へたこ焼きを食べに行ったジノが帰ってこないのを良い事に、奥様を膝に乗せてイチャついていたからだ



「・・・終わった・・・」
「サボるからですよ・・・お疲れ様です」


奥様は皇帝陛下の処理した書類を整えながらニッコリと笑った
それを控えている部下に手渡し、関係各所に運ぶように指示する
これで皇帝陛下も奥様も本日の執務は全て終了した事になる
皇帝陛下は奥様の肩に手を置きニッコリと笑った
「帰ろう」という合図だ


「うん。ジノ、お疲れ様」
「お疲れさん」


まだ仕事の残っているジノを残し、皇帝陛下と奥様は家路につく
その際、昼間通った表側のルートは使わない
奥様とイチャツキながら帰りたいが故に、奥のルートを使う

しかしその際気をつけなくてはならない事がある
それはイチャツキの度合いだ
あまり濃厚にスキンシップを図ろうとすると容赦なく奥様の教育的指導が入る
調子に乗りすぎて危うくCの世界に旅立ちかけた事は一度や二度ではない
だが、この時間で程よくスキンシップを行っているのといないのとでは夜のお楽しみ時間での奥様の反応が違う
その為、皇帝陛下は命がけのスキンシップを図る
長い付き合いだがまだはっきりと奥様の中での『可・不可』のラインが掴めていない
単純なようでそうでない
奥様は奥が深い
そしてそこが良い
皇帝陛下は毎日奥様への愛を深めていた





PM7:00


「解った!解ったから!」
「本当だな?絶対だぞ!約束を破ったら・・・」
「解ってるってば」


皇帝陛下と奥様がなにやら言い合いながら奥宮に戻ってきた
奥様が「約束は守る」と言い切ったのを見て、皇帝陛下はご機嫌になる
一体何を約束したんだろうと気になるマリアンヌであったが、これまで二人の娘として生きてきた彼女はその経験から何も聞かない方が良いと判断した


「お帰りなさい、お父様お母様」
「ただいま〜」
「ただいまマリアンヌv相変わらす可愛いなvV」


皇帝陛下は出迎えてくれた愛娘を抱き上げると、母親譲りの茶色い巻き毛に口付けた
マリアンヌはニッコリと笑い、お返しにと皇帝陛下の頬にキスを贈る
それを奥様が羨ましそうに見つめており、気がついた二人は笑いながら奥様にもキスを贈った




夕飯に揃った家族は皇帝陛下と奥様、そしてマリアンヌだけだった
長男は婚約者の家へ招待されており、他の兄妹達もなんやかんやと予定があるようで夕飯は辞退していた


「今更だが三人だけというのも寂しいものだな」
「そんな事言って、『早く自立しろ』って五月蝿く言ってるのは誰だよ?」
「お父様、私達に出て行ってほしいんですか?」


今日の夕飯は家族三人
子供が六人もいないとなるとダイニングルームがいつもより広く感じる
皇帝陛下はそれが寂しいと感じた
しかし常に皇帝陛下が子供達に言っているのは「自立しろ」
それを奥様が指摘するとマリアンヌは不安げな表情をとった


「まさか!マリアンヌ、お前だけは永遠に父様から離れないでいてくれ!」
「お父様っ」


ひしっと抱きしめあう皇帝陛下と末娘の姿を見ながら奥様は「はぁ・・・」とため息をはいた
幾らなんでも無理な話だ
マリアンヌは子供で、兄妹の中では一番長く自分達の側にいる事になるだろう
しかし彼女も女の子
いつかは誰かの所へお嫁に行ってしまう


(・・・そうなったら泣くだろうなぁ・・・)


マリアンヌがお嫁に行ったと泣きついてくる皇帝陛下の姿を想像し、奥様は「鬱陶しいだろうな」と今からウンザリだった






PM11:00


ここからはお子様は完全シャットアウト
大人のお楽しみタイムだ

どれだけアレクシスが奥様と話がしたいと頼んでも
マリアンヌが御本を読んでと強請っても皇帝陛下はこれだけは譲らない


「ス〜ザ〜クv」


皇帝陛下は浴室の扉の前で奥様の名を呼ぶ
奥様が「キモイ!」と叫んでいるがこんな事ではへこたれないくらい皇帝陛下は元気だった


「お〜いv」
「五月蝿い!ほら!これで良いのか!?」


ばたーん!と殆んど蹴破るように出てきた奥様は顔を真っ赤にして皇帝陛下の前に立った
皇帝陛下はにんまりと笑って大きく頷いた


「イイ!実にイイ!流石私のスザク!!」
「・・・嬉しくない・・・」


執務室から奥宮にたどり着くまでに交わした約束
それは「今夜は懐かしのアッシュフォードの制服(女子用)で御奉仕してくれ」だった
奥様は当然拒否した
何故いい歳したオッサンが女子高校生のコスプレをしなければならないのか
それはもう教育的指導という名の鉄拳を繰り出しても良いと思うくらい拒否した
しかしそこは付き合いの長い皇帝陛下
奥様の弱いあーんな所やこーんな所を攻めて攻めて結局奥様に「うん」と言わせたのだ


「これ・・・いつの間に用意したの?」
「ミレイからの差し入れだ」
「・・・(あの人は・・・・)」


差し入れするほうもする方だが、受け取る方も受け取る方だ
奥様は少し前に王宮を訪ねてきた嘗ての生徒会長を怨んだ


「ほらほら、ここに居もしない奴を怨んでないで、夫に御奉仕しないか」
「・・・」


クスクスと笑う皇帝陛下を奥様は一度だけ睨むと、ため息を吐き、皇帝陛下の手を引いた


「スザク?」
「御奉仕したしますよ。僕の皇帝陛下」


クスリと笑う奥様に皇帝陛下はキスを贈る
そして皇帝陛下は奥様によってベットに押し倒されたのだった







こうして散々奥様と大人のお楽しみタイムを満喫した皇帝陛下は御満悦で就寝
翌朝までぐっすりと眠り、またいつもの朝を迎える






なんだか・・・ウチの皇帝陛下、仕事をあまりしていない気が・・・
ネギマヨたこ焼きは私が食べたかったので・・・