「陛下〜、皇帝陛下〜」


皇宮にルルーシュを呼ぶ文官、武官らの声が響く
全員が全員ルルーシュを探している

この国の皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが今朝から行方不明になっているのだ


「全く、あのクソ皇帝!何処に行きやがった!!?」
「スザク。あれでも一応はこの国の皇帝。クソは不敬罪」
「・・・アールストレイム卿・・・『あれでも』という言葉もちょっと・・・」


スザクとアーニャの言葉に側にいたセシルが苦笑した
彼らも部下らと連絡を取りながらルルーシュを探していた


「それにしても何処いったんだろうなぁ」


ジノもスザクの隣で首を傾げる


ルルーシュの不在に最初に気がついたのはスザク
なかなかダイニングに顔を出さないルルーシュを変に思い、呼びに寝室へ向かった時に判明した
ルルーシュが姿を消す事は珍しい事ではない
しかし、家族に朝の挨拶一つしないで居なくなった事は初めてだった
おかしいなと思いながらスザクは執務室へと向かい、ジノの口からルルーシュが顔を出していない事を聞き、本気で慌てた


「父上の秘密の部屋も探したけど居なかったからなぁ」
「・・・そんな部屋があったの?アレクシス」
「・・・(しまった)ええ、隠し部屋です」
「・・・後で場所を教えなさい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」


うっかり口を滑らせた長男から、ルルーシュの秘密の部屋の存在を知ったスザク
その部屋はきっとくだらない事に使われているんだろうと予想し、家宅捜索を決意した
(そしてその予想は当たっていた)

ところで、スザクやジノ、アレクシスといった国の要人が何故一緒に行動しているのかと言うと、ルルーシュの失踪が何者かによるものの可能性があるからだ
もし今回の失踪が現体制に不満をもつ者の仕業だとすれば皇帝の次に狙われるのは長男のアレクシス、もしくはその片親として現在は広く知られているスザク
そして皇帝の第一の騎士ジノ。その片腕でもあるアーニャ
KMFや兵器開発だけでなく、皇帝の良きアドバイザーでもあるロイド、その副官セシル
ここに居る彼らの誰もが狙われる可能性があるのだ

そんな彼らがバラバラで行動すればそれだけ警備の人間も必要になってくる
ただでさえ皇帝捜索で多くの人間が走り回っているというのに彼らの警護までやっている暇は無い
(そもそも一部の人間は警護など必要無いが・・・)
結果、『迷惑なので一緒に行動していてください』と部下から言われ、こうして全員で揃ってルルーシュ捜索に参加していた


「まぁまぁスザク君。それよりもさぁ?」


ルルーシュの秘密の部屋の捜索に燃えるスザクを落ち着かせながら、ロイドは「聞いて良い?」と首を傾げた
スザクも同じ様に首を傾げると、ロイドは「それ、何?」とスザクが抱いているものを指差した


「え?」
「ずっと気になってたんだけどさぁ・・・・・おかしくない?」
「ええ、私も気になってました」
「僕も」
「・・・私も」
「そうなんだよ。・・・スザク、体の具合でも悪いのか?」


全員からおかしいと言われ、スザクはムッと頬を膨らませる
そして「そんな事ないよね〜」と腕の中の存在に笑いかけた


『・・・にゃあ』


腕の中の存在
それは一匹の黒い猫
大人しくスザクに抱っこされている


「ほら。変じゃないって言ってるじゃないか」
「いや、だからな、スザク」
「今の状態が異常」
「母上に噛み付かない猫が存在しただなんて」
「天変地異の前触れかなぁ?」

「・・・言いたい放題だな、皆・・・」


覚えてろよ、とスザクはアレクシスらを睨みつける
彼らは睨まれても平気なようで、変り者の猫をジロジロと見つめていた


「本当に懐いてる・・・凄いじゃないか、スザク」
「アーサー以外の猫は無理だと思ってました」
「・・・・そのアーサーも噛み付く猫」
「あれは彼流の愛情表現だよぉ」


ロイドの言葉に一同も同意する
アーサー・・・元は日本の野良猫であった彼も今や皇帝一家の飼う猫様だ
飼い主であるスザクに噛み付く猫ではあるが、それが彼のスザクに対する愛情の一つだと広く知られていた


「他猫を嬉しそうに抱っこしてる所をアイツに見られたらヤバイんじゃないか?」


ジノの言葉にアレクシスは吹き出す


「アーサーが嫉妬するって?幾らなんでもそんな事・・・・」
「・・・アーサー、いた」


アーニャの指差す方向に一匹の猫
じーっとこちらを見つめるその猫は、話題に上っていたアーサー


「・・・・アーサー・・・」


スザクはさぁ・・・っと顔を青くする
ちょっと待って、これには深い事情が・・・と、スザクが一歩を踏み出した所でアーサーはぴょん!と何処かへと去ってしまった


「っ!・・・・アーサー!!」


がくり とスザクはその場に崩れた
嫌われた・・・とショックを受けるスザクを他所に、ロイドらは腕に抱かれたままの猫について話し合う


「黒い毛に紫の瞳って、誰かを思い出すねぇ」
「失踪中のクソ親父と同じだな」
「・・・(殿下も同じ配色ですよ)・・この猫・・・もしかして皇帝陛下だったりして?」
「セシル、科学者とは思えない発言」
「いくらあの馬鹿皇帝でも猫にはなれないでしょう、猫には」
「ですよねぇ」


あはははははvと好き勝手に言い笑う一同を黒猫は頬を引きつらせて見ていた


(・・・いないと思って好き勝手言いやがって・・・ボーナス30%カット決定だな・・・)


キラリ と目を光らせた後、黒猫はどんよりと暗くなっているスザクの頬を舐めた


「・・・・ん・・・慰めてくれるの?優しいね」
『にゃあ(当たり前だ。お前を慰めるのは俺の役目だからな)』
「後でちゃんとアーサーに説明しないとね。君も協力してね」
『・・・にゃんにゃぁお?にゃにゃ(いっその事あんな暴力放蕩猫は追い出したらどうだ?俺は前々から思っていたんだ)』


すりすりとスザクの頬に身を摺り寄せながら黒猫はスザクに話しかけていた
勿論言葉は通じない
それでも甘えたような声を出して黒猫はスザクに寄り添う


「・・・・」


それを見ていたロイドは一瞬考えた後、ニヤリと笑った






『 〜Lovely Cat〜 』






****


〜それはスザクがルルーシュを探しに来る少し前の話〜


場所は寝室のベットの上
一匹の黒猫が途方にくれていた




(確かに、これまでの人生、俺は色んな事をやった
ギアスの事も含め、多くの人の命を奪い、その周囲の人間の運命まで狂わせた
地獄に落ちる覚悟は出来ている
ああ、そうさ
罪はいつか償わなくてはならない)


だがしかし・・・


『まさか猫になるとは予想していなかった・・・』


一体誰が予想出来るだろう?
昨夜まで自分は人間だったというのに、目覚めてみれば猫でした。だなんて

そう。この後スザクが発見し、腕に抱き続けた黒猫は、ブリタニア皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、その人だったのだ




『・・・・・誰の仕業だ?』


そうだ、こんな事が自然に起こる筈などない
何者かが何かした筈だ
ルルーシュは落ち込んで入られない と、原因を考える事にした


『・・・クソ魔女か?マッドサイエンティストか?』


いつもの自分は棚に上げて、ルルーシュは彼らの関与を疑った
クソ魔女ことC.C.にこんな能力があるとは聞いてはいないが、ルルーシュとて彼女の全てを知りはしない
もしかしたら人を別の生き物に変える力もあるかもしれない
マッドサイエンティストことロイド・アスプルンド
KMF開発だけでなく、様々な分野でルルーシュの治世を支えてくれる人物
スザクとの子供達を生み出してくれたのも彼だ
そのロイドならば人間を猫に変える薬くらい作れるかもしれない


(尤も、その薬の被験者に俺を選ぶとは考えられないが・・・)


『こんな事が相応しいのはスザクだ』


ルルーシュはうんうんと頷く
ルルーシュと同じく、ロイドもスザクを溺愛している
そしてその彼ならば、猫にして遊ぶのであればルルーシュではなくスザクを選ぶ筈である

その理由としては『スザクのほうが可愛いからv』『反応が面白そうだからv』である
そしてその意見にはルルーシュも一票を投じる


『・・・まずはC.C.を探してみるか・・・』
「ルルーシュ〜?いつまで寝てるの〜?」


そしてルルーシュを起こしに来たスザクに発見され、現在に至る






****


「だからぁ、これは僕の仕業じゃないって」
『ならどうして俺だと気がついた?普通は解らないぞ』
「う〜ん・・・勘、じゃ駄目?」
『・・・・・・このクソ科学者め!!』


ぴしっとルルーシュは黒くて長い尻尾でロイドを攻撃する
猫ルルーシュの攻撃を難なく受け止めたロイドはニタリと笑っていた




スザクらと皇帝捜索(他ならぬ自分の事なのだが・・・)に参加していたルルーシュだったのだが、突然ロイドに首根っこを掴まれた


『・・・うにゃ?』
「ロイドさん?」
「スザク君、この子ちゃんと検査した?」
「・・・いえ」


動物はどんな病原菌を持っているかわからない
ここ皇宮は皇帝や皇族が住み、尚且つ政治軍事の中心でもある
飼うにしろ飼わないにしろ皇族や上級士官の側に少しでも置いておくのならば検査をしなくてはならない


「じゃあ今から僕がやってくるよ〜」
「あ・・・」
「だぁ〜いじょうぶ。変な事しないってv」


こうしてルルーシュはひらひらと手を振るロイドに連れられて皇宮内にある彼の研究室へと運ばれた
そしてポイッと机の上に放り投げられ、一番に「君、ルルーシュ皇帝じゃないの?」と訊ねられた




『お前には主君を敬うという気持ちは存在しないのか?』
「僕が興味があるのはKMFとスザク君だからねぇ・・・っていうか、本当に器用だよね君」
『フッ・・・この俺に出来ない事など無い!』


すごーいvとロイドに褒められて機嫌を少し良くしたルルーシュの手元にはキーボードが置かれていた
それを前足で打ち込み、デスプレイに表示させてロイドと会話していたのだ


『俺はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ』
「はいはい。でも、本当に皇帝陛下なんだねぇ」
『なんだ、信じてなかったのか?』
「信じられると思ってんの?人間が猫になるなんてさ」


僕は科学者なんだよぉ とロイドは苦笑する
その言葉から彼が今回の件を考えた人物ではないとルルーシュは判断した


(『まぁ、中心的役割をしなかっただけとも言えるがな・・・』)


となれば、やはりあの魔女が係わっているのだろうとため息をはいた


(『あいつの事だ。俺の反応を見て楽しむ為に皇宮に留まっているだろう』)


放浪癖というのだろうか、ルルーシュとスザクの仲が落ち着いてからの彼女は世界の彼方此方を旅するようになり、ここ数年はあまり皇宮に帰って来なくなった
しかし、もしこれが彼女の仕業だとすればどこかその辺りでこの騒動を楽しそうに見ている筈だ


(『まずは・・・』)


ルルーシュはかちかちとキーボードを操作し、皇宮内に設置されている監視システムを起動した


「なにやってんの?」
『皇宮内に設置してある監視カメラの映像からあの女を探し出す』
「ああ」


なるほどね〜とロイドはルルーシュの隣に座って一緒になって映像を確認し始めた




「一時間前に上級士官用の食堂にいたのが最後だね」
『・・・・あのクソ女、また俺のツケで食事したな・・・』
「彼女が帰ってくると食費が嵩むよねぇ」


ブツブツと文句を言いながらルルーシュは映像を切り替えた
すると、彼女が皇帝執務室へ続く通路を歩いているのが写しだされた


『!』
「あ、いた」


ぴょん!
ルルーシュは机から飛び降りると全力で皇帝執務室へと駆け出した


「陛下〜!覚えておくと良いよ。僕は完璧を求める人間なんだv」


遠くでロイドがそんな事を言っていたのだが、この時のルルーシュには振り返る余裕等なかった


****


『C.C.!!!どこだぁぁぁ!!!』


皇宮内を黒い影が通り過ぎていく
慌てて執務室へ向かったルルーシュだったが目的のC.C.はそこにはいなかった
時間的にまだ遠くへは行っていないと判断し、彼女を探す為にあちこち走り回っていたのだ


(『どうでも良い事だが、猫になると体力馬鹿になるのか?』)


先程から走り回っているというのに全く疲れないし息切れもしない
普段ならば少し走っただけで息があがるというのに・・・
この時『猫も良いかもしれない』などとルルーシュは思った




『いやいやいや!猫のままなんて駄目だ!!ありえない!!』


ぶんぶんと頭を左右に振ってルルーシュは先程思った事を否定する
確かにこのままの姿だと走り回るのに適しているだろう
一部の人間に体力ゼロだのなんだのと言われることもなくなる
それに、唯一の噛まない猫としてスザクにずっと抱っこもしてもらえる

しかしそれでは駄目なのだ

このまま猫のままずっと・・・なんて事になったら・・・


『スザクと夜のお楽しみが出来ないだろうが!!』


サイズ的にも種族的にも無理があるじゃないか!!とルルーシュは頭を抱えた


『それに、このまま俺が行方不明になり、いずれ死亡扱いされれば・・・』


ルルーシュの脳裏に未亡人になったスザクが大勢の男から狙われる光景が浮かんだ


『スザク!!!』


嫌だぁぁぁ!!
ぶんぶんと頭を振りながらルルーシュは皇宮の広い庭を走った





どん!


『ぅぎゃ!?』


そして何かにぶつかった




『な・・・なんだ?』


ころんころん と数回転がったルルーシュはぶつけた鼻を前足で擦りながら自分がぶつかった物を確認した


『・・・お前・・・』
『全く情けニャい』


どーん と仁王立ち?してルルーシュを睨みつけているのはスザクの愛猫アーサー


『それでも皇帝ニャ?スザクの旦那ニャ?』
『な・・・』
『元々ルルーシュとスザクが一緒になるのは反対だったのニャ』


ちょうど良い
アーサーは シャキン とその鋭い爪を広げた


『っ!』
『ここでルルーシュを亡き者にして、僕がスザクとずっと一緒にいる事にするニャ』


ニヤリ
笑うアーサーに、ルルーシュは命の危機を感じた

しかし、そこは数々の戦場を駆け抜けた元ゼロ


『フ・・・このブリタニア皇帝ルルーシュが、お前如きにやられると思っているのか?』
『猫には皇帝なんて関係ないのニャ。実力だけがものを言うのニャ。ルルーシュには猫の戦いなんて出来ないのニャ』
『そうだな・・・俺には猫の戦いは出来ない。だが・・・』


キラリ とルルーシュの左目が輝く
それに気がついたアーサーは『まさか』と驚いた


『そう。そのまさかだ!』


ルルーシュの左目が赤く輝く
スザクに聞いた『ギアス』という力


『しまったニャ』
『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!アーサー、お前は』


ルルーシュの命令なんて絶対に聞かない!
アーサーの意識は強く想ったそこで途絶えた




****


「・・・・君、今まで何処にいたの?」
「ああ、スザクか」
「スザクか、じゃないよ」


一日中ルルーシュを探して走り回ったというのに、その彼はクスクスと笑いながら執務室のソファで暢気に寝転んでいた


「皆がどれだけ心配したと・・・・アーサー?」
「寝ている。静かにな?」


ルルーシュの側にはアーサーが静かに眠っていた
スザクはソファの側まで近づくと、身を屈めアーサーの毛を撫でた


「・・・妬けるなぁ」
「何が?」
「だって・・・さ」


スザクは視線をアーサーに向けたまま寂しそうに微笑む


「飼い主は僕なのに、アーサーは僕じゃなくルルーシュたちに懐いてる」
「・・・」
「いつも噛み付くし・・・」
「・・・」
「嫌われてるのかな・・・」


しゅん と肩を落としたスザクの頭をルルーシュは撫でた


「そんな事あるわけないだろう?」
「・・・ルルーシュ・・・」
「アーサーはお前を大切に思っている」


不安げなスザクにルルーシュは微笑む


****




『しまったニャ』
『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!アーサー、お前は』


本当なら二度とスザクに近づくなと命令したかった
しかし、スザクがどれだけこの猫を大切にしているのかを思い出して躊躇した


『絶対にルルーシュの命令なんて聞かないのニャ!』
『・・・』


アーサーはギュッと固く目を閉じて叫んだ


『スザクをずっと苛めてたルルーシュの命令なんて聞かないのニャ!』
『・・・』
『どれだけスザクがルルーシュの事で悩んでたか、泣いていたか、僕が一番知っているのニャ!だからルルーシュがスザクの旦那様だなんて認めないのニャ!!!』


ルルーシュはアーサーの叫びを静かに聞いた


『スザクは今は幸せだって笑ってるのニャ!ルルーシュが幸せにしてくれたんだよって笑うのニャ!でも、でも!』


アーサーは心配なのだと涙を流した


『二度とルルーシュがスザクを傷つけないって保障は何処にも無いのニャ・・・いつまたスザクがルルーシュのせいで泣くか解らないのニャ』
『・・・・アーサー・・・』
『涙を流さないから泣いてないとは限らないのニャ・・・スザクは・・・スザクは僕が護るのニャ!!』


ルルーシュはポロポロと涙を流すアーサーに近づいた


『アーサー』
『スザクに笑っていて欲しいのニャ』
『・・・・ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。・・・アーサー・・・』


ルルーシュは今度こそ迷わずアーサーにギアスをかけた








「・・・あっけなく終わったな」


ギアスをかけられた後、何故か気絶してしまったアーサーの側にいたルルーシュの背後で、探していたC.C.の声が聞こえた


『・・・』
「もう少し面白くなるかと思っていたんだがな」


振り返ったルルーシュはその身軽な身体を利用してC.C.にとび蹴りを食らわせた
それをひょいっと避けた彼女は気絶しているアーサーを抱き上げる


「一生スザクの側にいて一緒にスザクの笑顔を護ってほしい、ね。命令というよりお願いだな?」
『五月蝿い!』
「そんなギアスをかけたのは初めてじゃないか?」
『五月蝿い!!それよりも早く元に戻せ!!』
「残念。猫の方が可愛げがあって良いのに」


冗談じゃない!
ルルーシュは「フーッ」とC.C.に威嚇した
C.C.はクスクスと笑いながらアーサーを抱いたまま何処かへと歩いていく
ルルーシュはその後を追った




「・・・猫になったんじゃなかったのか・・・」
「いくらなんでもそんな事を私が出来るわけないだろう?」
「意識だけ移すんだって聞いてたけど、正直信じられなかったんだけどねぇ」


たどり着いたのはロイドの研究室
先程ルルーシュが訪れた時には入らなかった一室にルルーシュの体は横たわっていた

C.C.とロイドの説明で、本物の猫の体だと思っていたのは気持ち悪いほどリアルにロイドが作った偽物だったという事が解った
抱いていたスザクも、入っていたルルーシュも気がつかないほどのリアルさで、体温あり呼吸もする(ように見せかけている)精巧さ
中身はKMFの技術を利用したロボットで、ルルーシュはあれほど走っても息切れしなかった理由が理解できた


「なるほど・・・完璧を求める、ね」
「良く出来てるでしょ?瞬きもちゃんとするんだよぉ」
「売れば儲かるんじゃないか?」


それ良いなぁ とルルーシュが先程まで自分の体だった黒猫を抱き上げると側にいたC.C.へと視線を向ける


「・・・何故こんな真似を?」
「この猫に頼まれたからだ」
「アーサーに?」


コクリとC.C.は頷いた







◆◇◆◇


「ルルーシュと話がしたい?」
『そうニャ。あの馬鹿皇帝と一度話したいのニャ』


久しぶりにC.C.が皇宮に戻ってみると、スザクの愛猫であるアーサーに話しかけられた
夜中に散歩する仲間であったアーサとの会話の途中、彼はどうにかしてルルーシュと話が出来ないかと相談してきたのだ


「・・・残念だが」
『・・・・気にしないで良いのニャ。解ってたのニャ』


人間と猫が会話する等、無理だとわかっていた
ナナリーやユフィ、C.C.といった一部の人間とは話が出来た為、もしかしたらと期待した自分が馬鹿だったのだ
とぼとぼという音が聞こえてきそうな程気落ちした様子で去っていこうとするアーサーをC.C.は思わず引き止めた




「で、僕にどうしろと?」


C.C.一人では出来る事は限られている
と、なれば誰か役に立つ仲間を引き入れるしかなかった


「先に言っとくけど、いくら僕でも猫になれる薬は持ってないよ?」


楽しそうだけど、流石に自国の至高の存在に妙な薬を使うわけにはいかない
たとえあんな皇帝だったとしても前皇帝に比べて善政を行っているし、何より可愛い息子(スザク)の大事な大事な旦那様だ
もし薬を使って二度と元に戻らなくなってしまってら、あの可愛い子がどれだけ悲しむだろう
そしてどれだけ怒られるだろう・・・
そう思うと面白そうでも協力は出来ない


「いや。お前にはルルーシュの入れ物でも作ってもらおうと思ってな」
「はぃ?」
「お前の作った入れ物にルルーシュの意識を入れる。そしてアーサーと話をさせる」
「・・・そんな事出来るの?」


まぁな
C.C.はニヤリと笑う
ロイドは暫く考えた後、同じ様にニヤリと笑った






このやり取りの一週間後
皇宮は皇帝捜索にてんやわんやの大騒ぎとなる





****


「アーサーは、お前を愛している」
「・・・そうかな?」
「でなければ側にいないよ」


ルルーシュは眠るアーサーをスザクに抱かせた
スザクは彼を起こさないようにゆっくりと受け取ると嬉しそうに頬擦りする


「アーサーは・・・お前に笑っていてほしいんだそうだ」
「え?」
「幸せでいてほしいんだそうだ」
「・・・・・なら、全て君に掛かっているよ?」


僕の幸せは、君と共に在る事だから


スザクはルルーシュに微笑むと頬にキスを贈った
ルルーシュも満足そうに笑い、スザクの肩を抱く


『・・・・・』


それを片目だけ開けて腕の中の猫が見ていたことを二人は知らない


・・・おかしい・・・
ルルーシュが猫になってドタバタするつもりが・・・
何故かルルスザ←アーサーに・・・