それは突然の夜の呼び出し
「脱げ」
そう言われて数十秒。スザクは硬直した
ラウンズとしての地位を持っているスザクは宮殿内に私室を持っている
今までは軍人として各地を回っていた為ほとんど使っていなかったが、ルルーシュの即位以降は毎日使用している
一日の業務を終え軽い夕食を食べて寛いでいたスザクの元に呼び出しがかかったのは八時半を過ぎた頃
自分の経験不足の事もあって、皇帝の執務の補佐を殆どジノに任せていたスザクはあからさまにいやな顔をした
(せっかくヤツと顔を会わせなくていいと思っていたのに・・・)
しかし皇帝の呼び出しとあれば出向かない訳にも行かず、告げられた部屋へと向かった
そこは皇帝のプライベートエリア
前皇帝の時代であれば何人もの寵妃が住んでいたいわゆる後宮
(子供が出来た妃達はここを出て数ある離宮に住むようになる)
ルルーシュには妻はいないので彼はここで一人で住んでいる
「・・・お呼びですか?」
ルルーシュはスザクに気がつくとニヤリと笑って手招きした
彼はソファにゆったりと座り寛いでいた
そしてスザクが近づくと彼の腕を掴み言ったのだ
脱げ と
「・・・・・は?」
言っている意味を理解できずスザクはそれだけしか答えられなかった
するとルルーシュはククっと笑い、服を脱げ と改めて言い直した
「・・・え・・・・・・っと・・・?」
「まだ解らないか?服を脱げ。そして、俺に抱かれろ」
抱かれろ
その言葉で漸くルルーシュの目的が解り、スザクは大きく眼を開く
「な・・・・にを・・・?」
「ここには女がいない。だったら近くにあるもので代用するしかあるまい?」
ルルーシュは、ぐいっとスザクを抱き寄せ顎を掴んで自分へと顔を向けさせるとゆっくりと口付けた
女がいないからって僕を抱こうとする馬鹿がいるか!
皇帝なんだから選び放題だろう!
そもそも僕は男だ!
散々怒鳴って暴れた
冗談じゃない
なぜ自分がルルーシュに抱かれなければならないのか と
だがルルーシュはクスクスと笑いながらこう言ったのだった
「お前は俺の補佐官だろう?」
「それと・・・これと何の関係が・・・」
「お前は俺の一番近くにいて俺を助けなければならない。・・・これもお前の仕事の一つだ」
「ふ・・・ふざけるな!」
気がつくとベットに押し倒されていた
笑いながら自分を見下ろすルルーシュに、スザクは恐怖を覚えた
「ふざけて等いない・・・スザク、従え・・・あの国を守りたいのならば」
「っ・・・お前は・・・卑怯だ!」
「ああ・・・・その通りだ・・・」
「っ・・・ふっ・・・・」
スザクはルルーシュの愛撫に眼を固く閉じて耐えていた
本当は今すぐにでもルルーシュを殴って逃げ出したい。しかしそんな事をすれば故郷はどうなってしまうか・・・
スザクに選択肢は残されてはいなかった
「あっ・・・いやぁ!」
衣服を全て剥ぎ取られ相手の思うようにされながら自然と甘い声が口から溢れ出てしまう
こんなのは嫌だ と恐怖と屈辱から涙が流れた
ルルーシュはクスリと笑うとスザクに深く口付けた
「!・・・んぅ!?」
それと同時に口内へ侵入してくる液体
それがアルコール、ワインだと解ったと同時にゴクリと飲み干した
「・・・いま・・・・の・・・」
「スザク、抱かれるのは初めてか?」
ルルーシュはスザクの質問には答えず、微笑みながらスザクの頬を撫でた
そして再度「初めてか?」と問う
質問の意味に気がついたスザクは顔を真っ赤にして「当たり前だ!」と思い切り怒鳴った
「誰がっ好き好んで男に・・・・・ぁ・・・・?」
もう我慢できないと体を起こしたスザクだったが、自分の体の変化に気がついた
「あ・・・・・やだ・・・・・なに?」
体が意思とは関係なく震えていた
力が上手く入らない
呼吸も徐々に荒くなり、抑えられない熱が体中に広がっていた
「やっと効いてきたか」
「っ・・るるぅ・・・・・?」
どさり とスザクは再びベットへと倒れこんだ
そんなスザクをルルーシュはクスクスと笑って見下ろしている
「初めてだからな。お前がちゃんと快感を得られるようにしてやっただけだ」
徐々に近づいてくるルルーシュをスザクはぼんやりと見つめていた
****
すやすやと眠るスザクの髪を指に絡めながらルルーシュは微笑んでいた
それは大切な妹と全てを知る前のスザクに向けていたのと同じ優しい微笑だった
薬の効果で理性の吹きとんだスザクをルルーシュは何度も抱いた
快感に呑まれスザクが気絶しても突き上げる事で眼を覚まさせた
『もう・・・・無理・・・たすけて』
スザクがルルーシュに縋り付いて助けを求めてもルルーシュは行為を止めなかった
漸く開放できたのは空が明るくなり始めた頃
与えられすぎた快感に余程体力を使ってしまったのか、スザクはルルーシュが最後に放ったものを受け止めるとそのまま意識を失った
ルルーシュは眠るスザクの額に口付けると寝室を後にする
「満足か?」
隣の居間に出るとC.C.が笑っていた
ルルーシュはニヤリと笑うと彼女の正面へと腰を下ろした
「力づくとはいえ、こうしたかったのだろう?スザクと」
「ああ」
手に入れたかった
ナナリーとスザクだけがルルーシュの大切なもの
特にスザクはどうしてもこの手に入れたかった
「しかもお前が初めての相手。良かったな、ジノに嫉妬していたのだろ?」
「・・・・五月蝿い」
シュナイゼルが送り込んできたジノ・ヴァインベルグ
恐らくルルーシュがシャルルを殺した証拠を探るように指示されているのだろう
その彼は随分とスザクを気に入っているようだった
彼の眼は自分と同じ
スザクを自分の物にしたいという欲望を含んでいた
「ジノなどその気になればいつでもギアスをかけられる」
「スザクに気づかれたら・・・今度こそ殺されるかもな?」
「・・・」
ルルーシュはチラリと寝室へと繋がるドアを見つめる
今の地位に就くまでに大切なものをルルーシュは失った
母マリアンヌ、シャーリー、ナナリー
これ以上何も失いたくない
憎まれていると知っている、決して愛されることはないとわかっていても
スザクだけは手放す事ができなかった
「まぁ、私には関係がないがな」
****
眼を覚ますと知らない天井
何処だろうと思いつつ、体を起こそうとすると体中が痛かった
そして思い出す昨夜の出来事
「・・・そう・・・か、昨日・・・」
ルルーシュに抱かれたのだと体の痛みから実感し、スザクはどうしてか悲しかった
(男なのに男に抱かれたから?相手が憎いルルーシュだから?)
違う・・・
スザクは頭を左右に振った
別に男同士だからという偏見は自分にはない
実際、戦地に派遣された時にも何度か見たことがある
抑えきれない性欲を処理する為に行為に及ぶのだ
確かにルルーシュは憎い
けどやはり同じ男として性的欲求を満たしたいという想いはわかる
その相手に自分を選ぶ所は解りたくないが・・・
(なら・・・僕は何が悲しいのだろう・・・?)
ぼんやりと手触りの良いシーツを眺めていると部屋のドアが開いた
まさかもう起きているとは思わなかった
流石体力馬鹿と言った所か・・・
今日は寝室の掃除はしなくて良いとメイドを下がらせ、そしてジノや秘書官に今日のスケジュールをキャンセルさせた
それもこれも昨日無理させたスザクのため
まだ眠っているだろうと予想しつつも朝食を持って寝室へと向かった
ぼーっとしてはいるが上半身を起こしシーツを見つめていたスザクにルルーシュは驚き苦笑した
そして無駄にならなかったと安心しつつスザクの側へと近寄る
「おはよう」
「・・・るる・・・しゅ?」
スザクはルルーシュの存在に気がついていなかった様で、驚きに眼を大きく開いた
「朝食を持ってきた。食べれそうか?」
「あ・・・うん・・・ありがとう」
ルルーシュはトレイをスザクに渡すと椅子に座り食べだすのを待っていた
スザクは少し居心地悪そうにしながらもスプーンを手に取った
ルルーシュが持ってきたものはミルク粥
洋風ではあるもののお米が入ったスザクにとってどこかホッとさせてくれる食べ物だった
「・・・これ、もしかして・・・」
「ああ。何処か変か?」
その答えでルルーシュが作ったものだとわかる
ブリタニア人はパン食で、白米等は殆ど手にはいらない
「・・・俺も日本暮らしが長かったからな」
「・・・そう・・・だったね」
出会ったころはお米なんて食べれるかと言っていたルルーシュ
なのに数日後には美味しいと言って食べていたのを覚えている
八年前の思い出
あの時は仲の良い親友同士だったのに、いったい何処で間違ってしまったのだろう
スザクは食べるのを止めてじっとルルーシュを見つめる
何も変わっていないように見えるのに、彼はあの時の彼ではない
自分もまた・・・
「・・・・」
黙ったまま食べようとしないスザクをルルーシュも見つめていた
どこか調子でも悪いのだろうかと心配になったがどうやらそうではないらしい
何か考え込んでいるように思えた
「スザク」
「っなに?」
呼びかけにビクリと反応したスザクにルルーシュは苦笑すると「シャワーを使うか?」と訊ねてきた
「シャワー?」
「ああ。気持ち悪くないか?」
言っている意味が解らず、何が?と口を開きかけた所で気がついた
身体の内部にあるもの
「・・・・っ・・・」
それは昨夜、散々注ぎ込まれたルルーシュの・・・・
「使う!今すぐ使う!!」
自覚した途端とろりとあふれ出す感触に、スザクは身体を震わせて叫んだ
「・・・・・」
「・・・お前な・・・」
どさりとベットにスザクを下ろしルルーシュは呆れたようにため息をはいた
スザクはグッタリとしていてルルーシュに言葉を返す事もできないようだった
体内にあるモノを出そうと浴室へと向かおうとしたスザクだったが体が動かなかった
その為ルルーシュに運んでもらい(嫌だと抵抗したが動けないのではしょうがない)なんとかたどり着いた
ところが、何故かルルーシュは浴室から出て行かず、「出来ないだろう?」と笑いながらスザクの中にあるものをかき出し始めた。それに驚いて嫌だと身を捩って逃げた。しかしあっさりと捕まってしまい、再び指を入れられる
『ぁ!・・・やぁ・・・・ん』
『・・・っ!・・・』
身体は昨日の快楽を覚えているようで、昨日初めて受け入れたというのに自然と甘い声が出た
ルルーシュが息を呑んだのをスザクは聞いた
『お前・・・誘ってるのか?』
その言葉を聞いた瞬間、身に危険が迫った事を理解した
「今のはお前が悪い」
ルルーシュは服を着替えながら言い捨てた
誘っているのか?と聞かれ、思い切り否定したがルルーシュは思い留まってはくれなかった
かき出すために指で解されていたのも悪かったのだろう。スザクの身体は簡単にルルーシュを受け入れてしまった
そんな体にしたのは君じゃないか と一言言いたかったがもう気力がない
勝手にしてくれとスザクはルルーシュを無視する事に決めた
「・・・おい?」
(知るか!普段体力ないくせに、どうして元気なんだよ!?)
つんっとルルーシュに顔を背け、スザクは一言も答えない
そんなスザクにルルーシュは苦笑するとスザクの茶色い髪を撫でた
その手がどこか心地良くてスザクは思わず眼を閉じた
「・・・・疲れたか・・・?」
「・・・ん・・・・・」
「少し寝ろ」
「・・・・・ん・・・・・・」
すぅっとスザクの意識は落ちていったらしい。ルルーシュはクスリと笑うとその茶色い髪に口付けをおとした
再びスザクが眼を覚ましたのは夕方だった
その時にはやはりルルーシュが側にいて、彼はスザクに気がつくとニヤリと笑いながら言ったのだった
「ここの隣の部屋がお前の部屋になったからな」