何が起こっているのか解らなかった

ただ、怖いと思った

嫌だと思った


意識はしていなかった


勝手に口から出てしまった


自分の言った言葉。それに気がついた時、解った



もう、自分は彼を憎んでなどいない事が












眼を開けると知らない天井が見えた
どこだろうと身体を起こそうとするが動けない
何故と頭を動かすと手足がベットに鎖で縛り付けられているのに気がついた


「・・・・どうして?」


眼を覚ます前の記憶を思い起こし、スザクはぽろりと涙を流した







その前夜もルルーシュはスザクを求めてきた
やめてほしいと訴えると彼は不敵に笑うと「後悔するのはお前だぞ?」と言う
その言葉に体の力を抜く。するとルルーシュは満足そうに微笑んだ

どうしてこんな事をするのか
どうして自分なのか
聞きたいことはたくさんある
けれどそれはすべて嬌声に変わってしまい、言いたい事は何一つ言えていない
だから手をのばした
答えて と

どうか答えて。どうして?どうして君はそんなに   







「スザク」
「っ!」


突然聞こえた声にスザクは驚いて飛び起きた


「・・・あれ?」


場所は執務室
どうやら自分は眠ってしまっていたらしいとスザクはため息をはいた
すると頭の上から笑い声が聞こえた


「・・・ジノ」
「あれ?じゃないって」


ジノは苦笑しながらスザクの頭を撫で回した
髪が乱れる!やめろ〜!!等と言いながら抵抗するが腕力に差があるため、結局はされるがままになっていた




「やめろって!」
「はいはーい。それよりスザク、昼食は?」


その言葉にジノが自分を昼ごはんに誘いに来たのだと悟った
今日はルルーシュは公務で地方に出かけている。スザクとジノはその留守番だった


「ごめん。まだなんだ」
「そっか、それじゃ・・・・・私につきあってくれ」


やはり誘いに来てくれたのだと確信し、スザクは喜んで と笑った


だが、執務室から廊下へ出ようとドアに手をかけた時、スザクはジノに背後から抱きしめられた
「なに?」とスザクが振り向く直前、首に衝撃を受けた


「・・・ぁ・・・・」


暗くなる視界の向こう
ジノが悲しそうな眼をしていたのが解った









「・・・どうして?」


スザクはもう一度その言葉を口にした


「命令だからだ」


驚いた事に答えが返ってきた
スザクがその声の方向に頭を向けるとジノが部屋へと入って来た所だった
彼はゆっくりとスザクへと近寄る。その目はいつものような優しさはなく冷たいもので、スザクはゾクリと身体を震わせた


「・・だ・・・っれの、命令?」


スザクは必死で自分を落ち着かせながら少しでもジノから情報を聞き出そうと問いかける


「・・・シュナイゼル殿下だ」
「シュナイゼル様・・・?どうして?」


スザクの寝ているベットに腰掛けたジノはクスリと笑う


「どうして?ばかりだな、スザク」
「解らないから聞くんだ。ジノ、殿下になんて命令されたんだ?」


ジノはスザクの髪を手で梳きながら「お前を・・・」と低い声で答える


「お前を皇帝から引き離せ と」


その言葉を聞いてスザクは思わず笑う。自分をルルーシュから引き離してなんになるというのだ
スザクはナンバーズ。自分がいないほうが彼の治世にはプラスになる筈である


「・・・お前は自分の価値に気がついていない。皇帝にとってお前は必要不可欠なんだ」
「・・・馬鹿な事を・・・」


馬鹿はお前だよ ジノは小さな声で呟いた
そしてジノの手がスザクの服へと動いた。驚いて眼を見開くと左右に引き裂かれてしまう


「っな!?」
「お前は二度とここから出ることはない。大丈夫、私がお前を愛してあげよう・・・皇帝以上に」





嘘だ
スザクは状況についていけなくなっていた
目の前には金髪の同僚
いつも側にいてたくさん話を聞いてくれて、助けてくれたジノ
その彼が自分を襲おうとしている
他人の命令で、スザクの意思を無視して


「やだ!止めろ!ジノ!!」


ガチャガチャと必死で鎖を引っ張った
無駄だと頭のどこかで冷静な自分が言っている
しかしジノに抱かれるのは絶対に嫌だった


「嫌だ!」
「・・・暴れるな、傷つくのはお前だ」
「それはっ、ふぁ!」


ちゅっと胸の飾りを口に含まれる
ルルーシュによって慣らされた身体は簡単に快感を得る事ができる
少しずつスザクの体から抵抗する力が抜けていく
ジノはゆっくりとスザクの服を脱がせると彼の秘所へと指を埋める


「ひあぁ!?」
「・・・」


昨夜の行為の為か、スザクはいとも簡単にジノの指を呑み来む
くちゅくちゅと内部をかき回されながらスザクは大粒の涙を流す


「あっ・・・いや!止めて、っジノ!」


ジノは冷たい眼でスザクを見つめ、一言も話さない
それが怖くてスザクは再び暴れだす


「お願っ・・・嫌だ!!・・・ジノ!!」


ジノが指の本数を増やす

身体は徐々に反応を始めていた
だがスザクは「違う!」と心の中でもう一人の自分が叫んでいることに気がついた

違う!これは違う!と
あの人じゃない!と大きな声で、泣き叫んでいる

心の中のもう一人の叫び声
スザクは思わず助けを呼んだ


「助けて!ルルーシュ!」







ジノとスザクは驚きに眼を開いたまま黙り込む


今、自分はなんと言ったのだろう
スザクは自分の言葉が信じられなかった


(ルルーシュに・・・助けを求めた・・・)


「・・・・」


ジノはゆっくりとスザクから指を引き抜くとため息をはいた。そしてスザクの拘束をすべて解く


「・・・僕・・・は・・・」
「お前は陛下の事をどう思っている?」


混乱するスザクにジノが先日と同じ質問をする
スザクはジノへと視線を向ける
ジノは優しく微笑んでいた


「ジ・・・ノ・・・」
「正直に、お前の気持ちを聞かせてほしい」


スザクは視線をジノから天井へと向ける


(僕の・・・気持ち・・・)


ゆっくりと目を閉じ、ルルーシュの事を思い出す



ルルーシュ
大切な異国の友人
すごしたのは短い時間。だけどいつの間にか大切になっていた
自分の国を彼の国が滅ぼしたが彼を憎んだりはしなかった
彼は彼。国は国
そしてその気持ちは再会したあの時も変わっていなかった
真実を知るまでは


「彼が大好きだったよ・・・・彼が僕を救ってくれた大切な人を殺してしまうまで・・・騙されていた、嘘をつかれていたと知ってしまうまでは」
「それが・・・ラウンズになる前の事か?」


スザクはコクリと頷いた


「憎かった。殺そうと思って彼の後を追った。けれどやっぱり殺すことは出来なかった・・・前皇帝に記憶を消してもらって彼を元の生活に戻した。けど、彼の記憶は戻ってしまった」
「・・・」
「彼が憎くて、大嫌いだった。仕えろと言われて本気で殺してやろうと思った・・・でも・・・」


それに気がついたのは彼の側で仕事を始めて半年経った頃
それまでは日々の仕事に追われ、振り返る余裕がなかった
改めてみてみるとすぐに解ったのだ。自分は彼に助けられていた事に

それは、スザクの行った書類で小さな不備をルルーシュが後で手直ししていた事だった

本当は皇帝として出来の悪い補佐官には何度言っても無駄だと思っての事だったのかもしれない。しかしあれはスザクとルルーシュ以外には解らないように処理されていた。第三者が見ればそれはスザク一人で作ったものとしか判断できない、筆跡さえもスザクと同一の物にしていたほどだった

そして毎夜のルルーシュの呼び出し
遠のく意識の中、スザクはいつも聞いていた

『おやすみ、スザク』

優しい声、優しく触れてくる指、口づけ
いつも体力の限界を迎えていてその声に答える事は出来なかったがスザクも言いたかったのだ
『おやすみ』と
言えない代わりに手をのばした
彼はその手をやはり優しく握ってくれた


「僕は・・・もう、ルルーシュを憎んでなど・・・いない」


スザクはそこまで言うとぽろりと涙を流した
ジノは苦笑するとスザクに服を投げつけた


「え?」


それは見慣れたラウンズの服。しかも自分の物だ


「それ、皇帝に言ってやれよ。喜ぶぞ」
「・・・・」


ジノの言葉にスザクは俯く
その反応にジノは首を傾げた


「どうした?」
「いいのかな?」
「何が?」
「僕は彼を赦しても、彼に赦されても」


彼も様々な罪を犯した。そして自分も罪を重ねてきた
それは自分を傷つけるものから、お互いを傷つけるものまでたくさん
自分はもう彼を憎んでいない
だがそれはいい事なのだろうか


「僕と彼は赦されてもいいのだろうか・・・?」


がしがしとジノは頭をかく
この思いつめる性格はどうにかならないものだろうかと頭を抱えたくなった


「・・・その答えを『あの方』に聞きに行くといい」
「え?」
「行って来い。そして赦したくないと思うのならぶん殴りに帰って来い。赦したいと思うのならそれを言いに帰って来い。それまで陛下は私が面倒見ておくよ」


ジノはスザクにある住所を書いた紙を渡した