共に歩く時




スザクは頬に感じる冷たい感触に気がついて目を覚ました


「・・・ここは?」


窓の無いコンクリートの部屋
入り口はたった一つ。重そうな鉄のドア

スザクはどうしてここにいるのだろうと考えながら体を起こそうとした


「え?」


だが手足は縛られており、上手く体を起こせなかった


「一体・・・どうして?」


スザクは記憶を探る





今日は学校へ行っていた
ユフィの騎士にと望まれたが断った
本音を言うと嬉しかったが突然だった事もあって、驚いて思わず断ってしまった
ロイドやセシルなどは『もったいない』と嘆いていた

そんな騒動があってなかなか学校へ行けなかった。一週間ぶりのアッシュフォード。騎士に望まれたという事はどうやら報道されていたらしく、皆に質問攻めにされた
オロオロと困っていたスザクをルルーシュが助けてくれた
クラブハウスの中にあるルルーシュの部屋に向かいホッと一息ついた所で、ルルーシュが「本当なのか?」と真剣な表情で訊ねてきた

スザクはハッとした
軍に身を置いているスザクのことをこの幼馴染とその妹は酷く心配してくれていた
きっと今回の件でも心を痛めているに違いない


「大丈夫。断ったから」


安心させる為に微笑むとルルーシュは「この馬鹿」と呟いてスザクを抱きしめた


「お前の大丈夫ほど当てにならない」
「酷いな」
「事実だろ?」


そうかもしれない
スザクはルルーシュの背に手を回した







そこまでは覚えている

あれから自分はどうなったのだろう
そしてルルーシュは?


スザクが幼馴染を心配しているとがちゃりと鉄のドアが開いた



「・・・・おまえ・・・は・・・」


現れたのは仮面を被った男 ゼロだった


「・・・・」


ゼロは何も言わずジッとスザクを見つめていた


「お前が僕を・・・?・・・!ルルーシュは?ルルーシュはどうしたんだ!?」


確かに自分はルルーシュと共にいた。そしてそこから自分がゼロによって連れ出されたというのなら、彼はどうなったのだ?
もしかしたら・・・と最悪の状況を思い描き、スザクの体が震えた
そしてゆっくりとゼロを見上げた


「もし・・・ルルーシュに何かあったら・・・僕は・・・お前を!」


スザクは殺気を込めてゼロを睨みつける
一方、ゼロ、ルルーシュは仮面の奥で喜んでいた
激しい怒りを見せるスザク
こんな不利な状況だというのに、刺し違えてもゼロを倒そうと考えているスザク
全て自分の為なのだ


「彼は無事だ」
「!本当か!?」
「ああ」


スザクはホッと息をはいた
そうか・・・良かった とどこか微笑んでもいる

ゼロはゆっくりとスザクに近づき体を起こし壁にもたれさせる


「・・・君は・・・何が目的で?」


スザクはゼロをまっすぐに見つけた
仮面によって隠された表情
スザクには彼の考えが何一つ見えてこない


「・・・私の目的・・・解っているだろう?」
「・・・仲間になれ・・・・?」
「そうだ」


クロヴィス殺害容疑で捕まった時に助けてくれた
その時に言われた
『仲間になれ』と

彼の考えに賛同できず断った
正直今でも賛同できない
だからこそこの答え


「何度言われても同じ。僕は君の仲間にはなれない」


彼は無駄に血を流すから
彼のやり方ではきっと何も変えられない
表面上では変えられたと思っても、きっとその裏では何も変わってはいないのだ

スザクは自分の考えをゼロに告げた
すると彼はクククと笑った


「・・・なに?」
「そうかもしれんな」


ゼロはまだ笑っていた
スザクはそんなゼロを見つめた
こうして彼と直接会うのは二度目
どうしてだろう?
ゼロを・・・彼を知っているように思えた


「だったら側にいれば良い」
「え?」
「側にいて私の間違いを正せば良い」
「・・・・」


二人とも目指すものは同じもののはず
ただ方法が違うだけで


「私はお前の考えの全てを否定しない。それはお前もだろう?」
「・・・・」
「私達が手を組めば目的は早く達成できる」
「・・・自信家だね」


スザクはクスリと笑った
最近組織的な動きをし始め、人数も増えたとはいえ、黒の騎士団はまだ日本のレジスタンスの一グループ
世界の三分の一を支配するブリタニアの軍隊に敵う筈が無い
なのに、どうしてだろう
彼の言葉を信じてしまいそうになる
これがゼロと言う人物のカリスマ性なのだろうか・・・?


「自信?そうじゃない、確信だ」
「・・・確信?」
「そうだ。『俺』とお前が協力して出来ない事なんてない・・・そうだろう?」


ゼロの口調が変わった
それが良く知っている人物のもので、声で、スザクは声も鳴くゼロを凝視する
ゼロはゆっくりと仮面に手をかけた


「・・・・ま・・・まさか・・・」


脱がれた仮面
現れたのは美しい黒髪
良く知っているアメジストの瞳


「俺達ならやれる。七年前も、これからも」


そうだろう?と笑いかけられ、スザクは震えながら『彼』の名前を口にした


「る・・・・ルルーシュ・・・」

















ゼロと共に黒の騎士団のアジトにやってきたスザクを団員は警戒の目で迎えた
いくらゼロに「味方になった」と告げられても、先日彼があの忌々しい白兜『ランスロット』のパイロットであると突き止めたばかりである
これは何かの罠だと警戒しても無理は無い

危うく団員に襲い掛かられそうになった時、現れたカレンによって救われた




「・・・まさか君があの紅蓮のパイロットだったなんて」
「それは私の台詞。アンタがランスロットのパイロットだとは思わなかったわ」


二人で向かい合って紅茶を飲む
一応この部屋には二人だけだが部屋の外には団員が様子を伺っている事や、部屋を監視カメラで見られている事もスザクは感付いていた
少しでもおかしな真似をすればスザクは殺されるだろう


「それで?」
「何?」
「アンタ、どうして今更黒の騎士団に?」


名誉ブリタニア人となって日本を裏切った
命を救ったゼロの誘いを断った
黒の騎士団を何度も阻んできた
そのスザクが何故今更協力する気になったのか、カレンだけでなく黒の騎士団全員が知りたい事だった


「・・・自ら進んでではないよ。なんて言うかル・・・ゼロに誘拐されちゃって」
「は?」
「正直、ゼロのやり方は良いとは思えない。けど、ゼロは言ったんだ。僕達が協力して出来ない事はないって」


目的を達成する為に無関係の人間の血を流すゼロを認めたわけじゃない
止めようと思ってランスロットに乗った
けどそれはゼロが『彼』だと知らなかったから
しかし今は違う
ゼロは『彼』
止められるのは自分しかいない
『彼』を彼の側で


「勿論僕のやり方が正しいとは言わないよ。彼が正しい場合もある。だから、僕の間違いはゼロが、ゼロの間違いは僕が、お互いがお互いの間違いを正す事にしたんだ」
「・・・・」


カレンはスザクを見つめた
スザクにあるのはゼロに対する絶対の信頼
つい先日まで学校でゼロを認めないと言っていた彼がどうして・・・?

それにゼロも
こうまでスザクに拘る理由が解らない
ゼロは常にスザクを必要としていた
そう。初めから


「ねぇ?」
「ん?」
「アンタ・・・ゼロの正体知ってるの?」


それは二人の話を聞いていた黒の騎士団全員が息をのんだ瞬間だった
全員の神経がスザクの言葉に集中する


「・・・・・あ、おかわりいる?」


だが、スザクの答えは無くなったカレンの紅茶についてだった
ずっこけながらカレンは確信した
スザクはゼロの顔を見たのだ
そして正体を知ったからこそここへ来たのだ、と


(ブリタニアの知り合い?それとも日本人の?)


ジッと睨まれる様に見つめられてもスザクはニコニコと笑顔を浮かべているだけだった











気がつかれなかったかな?
スザクはゼロの私室に入った途端、彼に訊ねた
ソファに座っていたゼロはクスリと笑うとスザクを隣に座らせた

彼もまたここのモニターでカレンとの会話を見ていたのだ


「お前が俺の正体を知っている事には気がついただろうが、まさか『俺』とまでは思わないだろう」
「でも結構大変だったんだね。黒の騎士団には同級生のカレンがいて、学校には軍人の僕がいて」


どちらにいても正体を知られてはいけないと気を張って
疲れてただろう?とスザクはゼロを労わる
ゼロはククっと笑うとスザクを抱き寄せた


「今まではな。だが・・・これからはお前がいる」
「ゼロ・・・」
「お互いの間違いを正す為。だが、お前は俺の隣にいる。俺と共に戦ってくれる」


そうだろう?と翡翠の目を見つめる
その目に自分が映っており、その中のゼロは優しく微笑んでいた

スザクも微笑むとコクリと頷いた


「勿論。君と僕が手を取ってやれない事は無いから」


ゼロはスザクに深く口付けると、そのままソファに押し倒した









共闘するルルとスザク設定
スザクがユフィの騎士になる前
この辺が一番二人が手を取り合うチャンスがあったのではないでしょうか・・・?