何かを手に入れる為には何かを手放さなくてはならない
ルルーシュとともにいる場所を手に入れたからには
この場所から離れなければ・・・
一度に二つの居場所なんて・・・持てるはずが無いのだから
まさかこんなにあっさりと退役が認められるとは思っていなかった
やだよぉぉ、とロイドはスザクに抱きついて離れようとはしなかった
セシルも寂しくなるわとうっすらと目を赤くして抱きしめてくれた
スザクを可愛がってくれた特派のスタッフ達も別れを惜しんでくれた
スザクは軍を辞めた
等価交換
黒の騎士団に、ゼロに協力すると決めたスザクは軍を辞める事を告げた
王城などはブリタニア軍で諜報活動を行ってくれたほうが役に立つとそれを止めたのだが、スザクがそれを良しとしなかった
『僕は、裏切っているのに裏切っていない顔をしてあの人達と一緒にはいられません』
ゼロやカレンもスザクの性格を知っている為か、退役に賛成した
ランスロットという世界唯一の第七世代のナイトメア
『彼』ともお別れ
「今までどうもありがとう」
スザクはランスロットのコックピットで目を閉じた
ルルーシュと再会して、撃たれて、気がついたらランスロットのデヴァイサーになって
「ほんの一時でも君と共に戦えて・・・嬉しかったよ」
クロヴィス殺害容疑で捕まって、ゼロに救われて、一度はその手を振り払った
「いろいろあったね」
ユフィと出会って、学校へ行かせてもらえて、そこでルルーシュと再会した
「君がいてくれたから・・・今の僕があるんだよね」
黒の騎士団と戦って、ゼロのやり方が認められないと考えていた。けどゼロは『彼』だった
そしてスザクは決意する
彼と共に歩く事を
「本当にありがとう。でも・・・出来たらもう君には戦って欲しくないな・・・」
何故なら自分はこれから君達ブリタニアの敵になるのだから
戦場で会えば・・・君を壊さなければならない
「・・・・さようなら・・・ランスロット」
コックピットから降りるとそこにはロイドが笑っていた
彼はスザクに椅子を勧めると自分の好物のプリンを差し出した
「・・・どうも」
「味わってたべようねぇ。おススメだよ。これ、僕の一番のお気に入りだからさ」
ロイド一番のお気に入り。自信をもって薦めるだけあって本当に美味しい
お店の場所を聞きルルーシュやナナリーに買っていこうかなと微笑む
「今度会うときは・・・敵同士だね」
「・・・・ロイドさん?」
スザクは驚いたがそれを表情に出さないように気をつけ、ロイドを伺う
ロイドはにんまりと笑いながらスザクを見つめていた
「だってそうなんでしょ?」
「・・いえ・・・僕は・・・」
気づかれてはいけない
スザクは必死で否定する
だがロイドは「嘘は苦手だよね、君」といってスザクの頭を撫でた
「安心して。今日一日はまだ君は特派の人間だから、捕まえたりしないよ」
「・・・」
今日一日
二人は時計を見つめる
今日が終わるまで後三十分あった
「頑固者の君が今までの意志を曲げで『あっち』に行くとは思わなかったけど」
「どうして・・?」
「なんだい?」
「どうして・・いえ、皆・・・知って?」
特派の皆は知っていたのだろうか
今は全員宿舎に帰ったが、最後までスザクとの別れを惜しんでいた
するとロイドは頭を左右に振って否定した
「セシル君は気づいてたかもしれないけどぉ、皆は知らないでしょ」
「・・・・」
「君の人生だもの。僕らには止める権利は無いよ」
けどこれだけは覚えておいて
ロイドはスザクを抱きしめた
「僕らは君が大好きだったよ」
自分が傷つく事を考えず、こっちがどれだけ心配しているか理解もせず戦っていた君を
頑固で体力馬鹿であんなにランスロットの能力を引き出せれる騎士でありながら優しくてどこかお間抜けな君を
「僕らは愛していたんだって事」
「・・・・ロイド・・さ・・・」
スザクはロイドの背に手を回した
スザクもロイドやセシル、特派の皆が大好きだった
きっと今でも好きだ
居場所をくれた
ランスロットに出会わせてくれた
軍人なのに、ただの同僚なのに愛情を与えてくれた
それなのに自分は彼らから離れ、敵になろうとしている
苦しかった
自分で選んだ道だったとしても・・・苦しくて悲しかった
「僕も・・・みんなが大好きです」
だけど・・・・
「さようなら」
僕は彼と一緒にいる為にこの場所を手放した
きっと二つの居場所を持つことなんてできないのだから
何かを手に入れる為には何かを手放さなくてはならない
それが世界の法則
共闘設定第二段
『裏切っているのに裏切っていない顔をして云々』と言わせてしまいましたが
R2では見事にルルの友人をしている本編のスザク
うちのスザクには出来ないという事で・・・