始まりの雨、そして・・・







   僕らが出会ったのは雨の日   








その時、一護は誰も住んでいない空き家の軒下で雨宿りしていた

他人とは違う力

一護がそれに気がついた時、一緒に住んでいた大人たちは一護を追い出した。他の大人の大人を頼ろうにも既に噂となっていたのだろうか、誰一人一護に手を差し伸べる者はいなかった
力が有る故に食べなくてはならない。まだ小学生くらいであった彼は一人村を出、どこか生きていける場所を探していた


『隣、あいてる?』


途中で大雨に足止めをくらい、雨宿りしていた時に声をかけてきた少女
それが『彼女』だった


『あ・・・ああ・・・』


ありがとう と少女は隣に腰を下ろした

銀色の髪に翡翠色の瞳を持った同じ年くらいの少女は『月城鈴華』と名乗った
そして自分も一護と同じなのだと話してくれた


『追い出されちゃったのは辛いけど、この力をもってる魂魄は虚に狙われるんだって』
『・・・らしいな』
『一緒にいたらあの人たちも巻き込んじゃうから・・・これで良かったんだよ』
『・・・ああ』


解っている。だが、一人で彷徨うのは辛いし、寂しい
誰かと一緒に生きていきたい
誰かと一緒に・・・・


『・・・なぁ・・・』
『なに?』
『俺と・・・・一緒に』


一護は最後まで口にしなかった
だが、鈴華は解ってくれたようで
にっこりと笑って頷いてくれたのだった










   あの日から君は僕のたった一人の家族になった
決して裕福ではなかったけれど、生きる為に盗みだって、誰かを騙したりもしたけれど、二人で暮らす家に帰れば君がいて
『おかえりなさい』と
綺麗な翡翠の瞳が迎えてくれた

そしてそれは永遠に続くのだと信じていた   








二人が暮らす村に死神がやってきた
その中の『隊長』と呼ばれる死神に一護は言われたのだ


『死神にならないか?』
『あ?死神?』
『って隊長!なにしてんですか!?』


真っ白い髪をした『隊長』と呼ばれた死神は、後ろからやってきた黒い髪の死神に怒られていた


『まぁまぁ海燕』
『まぁまぁ、じゃありません!』


髪の色や目の色が違うが、『海燕』と呼ばれた死神に似た一護を見て思わず言ってしまったのだと『隊長』は話した


『似て・・・るか?』
『さぁ・・・・あんまり似てねぇんじゃねぇ?』
『似てるって!』






隊長は一護に死神になるように説得し続けた。最初は難色を示していた海燕も、一護の力の強さに納得し最後には死神になった方が良いと言った



『鈴華!』


一護は家へ慌てて入った
家の中にいた鈴華は驚いて目を大きく開いていた


『俺、死神になる!』










   あの頃の僕はそれが一番良い事だと思っていた
死神になれば住む家も出来る。食べ物にも苦労しない
何より上位の死神になれば家族を瀞霊廷に呼ぶことが出来る
君を幸せに出来ると・・・信じていた   









霊術院に入学した一護はそこで友人とであった

頭は良いが人付き合いの苦手そうな石田
無口で大柄で怖そうな外見だが心優しい茶渡
のほほんとしているがココロには一本芯の通った井上

一年先輩になるが、明るく場を和ませてくれる松本
狐のような顔をして、何を考えているか判らないけれどきっと良い人なんだろう市丸


一護は厳しいけれど学生生活を楽しんだ


あの家に鈴華を待たせて





『必ず迎えに来るから』


待っていてくれと
一護は鈴華を置いて家を出た

見送っていてくれてはいたが寂しそうな表情をしていた
それを思い出すと、一護の胸は苦しくなる
あんな顔をさせたかった訳じゃない。笑ってほしかった。瀞霊廷に住む事が出来れば笑ってくれる
一護はそれを信じ、一年、また一年と時を過ごした









   あの時、あんな事を言わなければ良かった
そうしたら・・・・きっと   









『ここがそうなん?』
『そ。・・・ちっさいとか言うなよ』
『私達のとそう変わらないわよ、ね?』
『そうそう。君らの方がまだマシやで』


市丸たちが卒業する年の秋
一護はあの日から初めて家に帰ってきた

一護がいつも話す『鈴華』に会いたいと彼らが言ったからだ
一緒に石田達も付いてきた


『でもまだ此処に住んでくれてるん?君、一度も帰ってないんやろ?』
『いるよ!・・・・・多分』


必ず待っていてくれてる
自信は・・・・ちょっとだけある。と一護は情けなく笑う


『・・・・一護?』
『『『『!』』』』


家の前で固まっていた一護たちに声をかける存在


『〜〜鈴華っ』


それは銀色の髪をもった少女だった


『ただいま、鈴華』
『・・・・おかえりなさい』











   『綺麗な子やね』
市丸が心からそういったのを感じ、僕は嬉しかった
あの子は綺麗で優しいんだ
自慢すると市丸は『大切なんやね』と優しく笑ってくれた

そう、君は大切な存在
幸せにしたい。ずっと笑っていられるように、僕の傍で笑っていてくれるように。大切で、本当に大切なたった一人の家族

『もっと番号の若い村か・・・・出来たらあの子も霊術院に・・・』

皆で話をしていると、市丸に離れたところに呼び出された
彼女の力は強い
このままではその力に引き寄せられた虚に襲われてしまうかもしれないと告げられた

この時、市丸だけが気づいていた
少し離れた所に作ってある畑が荒らされていたことを
そしてそれが人の手で荒らされたものではない事を

僕はそれに気づいてはおらず、霊術院に君が入ればまた昔のように毎日会えるのだと喜んで君を説得した   










『つーわけで、よろしくな』
『よろしくお願いします』


時は流れ、一護は隊長となった
新設された零番隊の初代隊長だ

新設である為、他隊から隊員を引き抜く事となった
ある程度までは自由にしても良いと言われていた一護は迷わず副隊長に鈴華を指名した
彼女は一番隊で四席の地位に就いていて、他の隊からも副隊長として声がかかっていた為、誰も不思議に思わなかった
他にも石田や井上、茶渡といった同期の死神も隊に迎えた

先に隊長となっていた市丸からは『ズルイ』と恨み言を言われていたが・・・



昔の『上位の死神になって鈴華を瀞霊廷に呼ぶ』という一護の夢は形を変えて実現された。これからは毎日鈴華と一緒だ
何をするにも・・・何処へ行くにも、自分たちは一緒なのだ

一護は嬉しかった
振り返れば美しくなった大切な家族

幸せだった






『また?』
『そうです。ちょっと目を放した隙に・・・』


休日の鈴華の元に三席の石田が駆け込んでくることが多くあった
一護が執務室を抜け出し、行方をくらませたのだ
何度連れ戻しても脱走する
何度説教しても同じ事を繰り返す

それが『鈴華と会いたいから』だと解っているだけに、何とか彼女の手を煩わせないように一護を捕獲しようと石田たちも頑張っているのだが、鈴華以外では一護は捉まえられない。寧ろ、鈴華だとおとなしく捕まっている節がある


『しょうがないね』
『申し訳ありません』


良いのよ と鈴華は部屋を出て、一護の元へ向かった








早く来てくれないだろうか
まだだろうか

一護はわくわくしながら鈴華を待つ


彼女は一護が何処にいても必ず見つけてくれた
自分たちは何かでつながっているのだと確信できるその瞬間が大好きだった


『やっと見つけましたよ!』
『鈴華w』


ほら、やっぱり鈴華はみつけてくれた
技術開発局の屋根の上
こんな所で昼寝をしているなんて誰が考えるだろう
だが、鈴華は一護を見つけた


『帰りますよ』
『あ〜。もうちょっとだけ』
『駄目です』
『ケチ〜』









   お互い、隊長副隊長としての多忙な日々
深夜まで仕事をしている事だって珍しくなかった
僕らは確かな絆で結ばれていたと解っていたのに、それだけでは足りないと、君を困らせて、君に追いかけてもらって
・・・・僕は子供だった   








『隊長が?』
『・・・・はい』


一護が姿を消した
それだけならばいつもの事なのだが今日は事情が違っていた


『もう時間がありません・・・・どうしますか?』
『・・・・・・』


これから虚討伐の為に遠征隊が流魂街へと向かうのだ
一護はその指揮を執る事になっている

ここ最近の一護のサボりようは目に余るものだった
隊員達も『またか』と笑う程度で、誰一人一護を悪く言う者はいなかったのだ


『・・・・・』


だが、それは過去の話
今の零番対には新人として貴族の子弟が何人か配属された。元々貴族は流魂街出身者が隊長位に就いている事に良い顔をしていない。ここ最近一護に対し貴族からの風当たりが強くなってきたのだ
三番隊の市丸でさえ近頃は大人しくしている
力のある貴族に何か言われ、四十六室が一護を降格させたりする事もあるかもしれない
それだけはさせてはならないことだった


『私が行きます』
『副隊長・・・』
『隊長はお体の調子が悪いので代行として私が行きます
そう記録には残しておいて、石田君』


帰ってきたらお仕置きね と石田と冗談を言い合って、鈴華は一護の代わりに討伐へと出かけた









   この日も雨が降っていた
僕は任務の事などすっかり忘れていて、君が迎えに来てくれるのをずっと待っていた
この日から・・・・僕の心には雨が降り続いている   










『鈴華・・・怒っちまったのかな?』


そろり と音をたてないように執務室の扉に張り付く
様子を伺うが、人の気配は無い


『あれ?』


おかしいな?もしかしたらまだ外で捜しているのかもしれない
一護は、なら今日は自分の方から彼女を捜しに行こうと、廊下を戻ろうとした


『隊長!』
『お〜。石田』


一護に向かって走ってくるのは同期で生真面目な石田
見つかっちまったか、と笑いながら手を振っていると頬を思い切り叩かれた


『っー!何すんだよ!?』
『何処に行ってた!?』
『ああ?』
『早く四番隊へ!』








   君が来ない事
四番隊へ行けと石田が言った事
まだ僕は気がつかない

気がつくのは君の姿を見てから・・・
僕がしてしまった罪の一つ   








四番隊は戦場のようになっていた
血と消毒液のにおい

訳が判らないまま案内された病室に彼女は眠っていた


『ど・・・うして?』


鈴華も他の病室にいる死神も零番隊の隊員
何故?
頭をフル回転させて原因を考えた


『・・・・・!!』


その時になって気がついた。今日は虚討伐の任務の日。鈴華に決してサボってはいけないといわれた任務


『・・・・まさか・・・』


やっと鈴華が自分の代わりとなって討伐隊の指揮を執ったのだと気がついた


比較的軽症だった隊員に事情を聞く
すると、目標の虚自体は簡単に倒せた。だが、戦闘時の霊力に引き寄せられたのか大虚が現れたのだ
それにやられたのだと隊員は語った
討伐隊には多くの上位席官が編成されていた。貴族の子弟が参加する以上、怪我でもさせたら何を言われるか解らないからだ
だが、その貴族がパニックを起こしたらしい
鈴華や席官たちで闘えば多少の怪我はするだろうがここまで重症を負う事は無かったはずだ
鈴華は貴族のせいで混乱する隊員を纏め、大虚の相手をしながら瀞霊廷まで隊員を導いたのだった


『・・・・鈴華・・・・』


一護は手当てを終え、眠っている彼女の手を握りながら一つの決意をする










   その決意は間違いだった   











『どういうことなんですか?』
『落ち着け、石田』
『落ち着けるわけ無いでしょう!?』


討伐隊が重症を負った日から三日
石田は一護の元へ乗り込んできていた

理由は副隊長解任についてだ


『どうして副隊長解任なんて?今回の事について副隊長に責任はありません。あるのは隊長、あなたです』
『ひでぇな』


一護は苦笑した後、表情を引き締めた


『それと、彼女の死神籍も除籍される』
『は?』
『近日中には・・・な』


死神籍を除籍されたら瀞霊廷にはいられない
それは流魂街への追放を意味していた


『黒崎!何を考えてるんだ!?』
『石田。敬語。いつも鈴華に言われてただろ?』
『今はどうでもいい!・・・彼女に非はない。取り消せ』
『駄目だ』
『誰もそんな事望んでいない』
『俺が望んでる』


一護はずっと微笑を絶やさず石田と会話していた
感情の起伏の激しい彼にしては珍しい、作った笑顔
それだけに今の一護が石田には恐ろしかった

この男はこんな顔をする男ではなかった筈だ
この男は彼女をこんな事で捨てたりする男ではなかった筈だ


『・・・・黒崎』
『もう・・・あいつは零番隊の副隊長じゃない。死神じゃない・・・・ただの・・・』


一護はそこまでで口を閉ざすと、石田を執務室から追い出した








『ごめんな・・・・・でも、俺は・・・・』












   僕は怖くなったんだ
怪我をした君を見て、初めて死神という職業の怖さを知った
死と隣り合わせである事
失うかもしれないと知った時、僕は恐れた

君を失いたくない

君は・・・僕にとって大切な・・・たった一人の   













『お前の除籍が決定した。斬魄刀も封印した。もう、お前は死神じゃない』


一護は東流魂街第一地区に来ていた
ピッタリと閉ざされた襖の向こうで鈴華は一護の言葉を聞いているだろう

怪我をして眠っていた彼女を連れ出してここへと運んだ。もう二度と死神として瀞霊廷に入れるつもりは無かった。
眠っている間に斬魄刀を奪い、封印した


『瀞霊廷には入れない・・・・・ここで怪我を治すんだ』


鈴華はなにも答えなかった
本当は顔を見て話したかった一護だったが、きっと凄く怒っているんだろうと、無理強いはしなかった


『・・・・一つ・・・約束したいんだ』


一護は目を閉じ、祈るように数秒黙る
そして深呼吸する


『必ず迎えに来るよ・・・・だから』


待っていて










   それは昔と同じ約束
僕は君を死神としてではなく、家族として瀞霊廷に迎えると決めた
君は僕の大切な人
永遠に共にいたいと思える
たった一人の・・・・最愛の人   













それからの一護は大変だった
副隊長を勝手に解任し、しかも除籍までしたのだ
彼女は貴族出身からも流魂街出身からも慕われており、あまりに酷い一護の仕打ちに各方面から嫌味やら嫌がらせやら数多く寄せられていた

それに一人で耐えながら、一護は鈴華と住む家を考えていた


(貴族の住んでない場所が良いよな。それに商店街にも近くないと、後は・・・勿論治安も良くて日当たりも良くて静かな所)


早く捜して早く迎えに行きたい
けれど思ったよりも嫌がらせの仕事が多くて時間が取れない
住む場所を探す為の時間を作るには自分の時間を削るしかない

一護はあの日以来鈴華を会ってはいなかった










   別れは突然やってくる   








バン
と、市丸が零番隊執務室へと勢い良くやってきた
彼は鈴華除籍の際、『色々考えての事やろうけど』とたった一人一護の気持ちに気がついた存在である


『いち・・・まる?』
『一護、流魂街行き』


え?と市丸の言った事が理解出来ず呆ける
市丸の表情は硬く何かに耐えているようだった


『早よ、流魂街行き!』


流魂街
それだけで誰の事を言っているのかが解る
市丸は何故か教えたわけでもないのに鈴華の居場所を突き止めていた

忙しく会いにいけない自分の代わりでもしてくれていたのだろうか
時折様子を教えてくれていた。もっとも彼も彼女に一度も会ってはおらず、一護が鈴華の世話として雇った老婆と話をしているだけだったようだ


『っ!』


一護は瞬歩で隊舎を飛び出していく
何事かと集まった石田達に市丸は一言だけ言うと彼も瞬歩で姿を消した


『石田三席・・・』
『石田君・・・今のどういう意味だったんだろ?』
『・・・・』




『しばらく・・・アイツ使い物にならんと思うから・・・』


市丸の言い残した言葉に、石田達は言いようのない不安感を抱いた













   それまで何とか曇りだった空は一気に真っ黒になって
  大粒の雨が降り注いだ
 僕らが出会ったのは雨の日なら
別れたのも・・・・・・雨の日・・・だった   










『・・・どうして・・・?』


まだ温かいのに
一護は鈴華の身体を抱きしめた。まだ温もりの残る身体
でも、二度と目を開けてくれない。『一護』と呼び、笑ってはくれない


『・・・申し訳ありません・・・』


雇っていた老婆は口止めされていたのだと涙ながらに語った



あの時の虚との戦闘時、鈴華は毒を受けていたのだ
霊力がある為すぐには死ぬことはなかったが徐々に弱っていった
何度も一護や市丸に頼って薬を貰おうと進言したが、彼女は最後まで首を縦に振ることはなかったのだと言う



『今朝はお元気で・・・少し家を離れている間に・・・』


老婆が帰ってきた時と市丸が訊ねた時が同じであった
そして様子を見に行った老婆が鈴華の息が止まっている事に気がついたのである


『何故?何故何も言ってくれなかったんだ?』
『・・・・』
『言える訳ないやろ・・・鈴華ちゃんは君に捨てられたと思ってるんやから』


現れた市丸に一護は『違う!』と反論する


『そうじゃない!約束したんだ!待っててくれって』
『ちゃんと返事聞いた?・・・あの子、絶望して何も聞いてへんかったかもしれんやろ?』


一護は市丸の言葉に口を閉ざす
確かに一護は彼女の返事を聞かなかった。念を押さなくても彼女なら解ってくれてる。そう思っていた


『・・・・俺が・・・殺したんだ』
『・・・一護・・・』


失うのが怖くて死神を辞めさせた
死神でない彼女は瀞霊廷にはいられないと解っていながら・・・


『俺が・・・・俺がっ・・・鈴華をっ』


ちゃんと怪我が治るまで瀞霊廷にいることが出来たなら死ななかった
こんな死に方をさせずに済んだ


『ごめん・・・・たった一人で・・・・逝かせてしまっ・・・』









   徐々に冷たくなっていく君を抱きしめて
僕は思い切り泣いた
   君を死なせたこと
   君を除籍したこと
   君を一人にしたこと
   君を死神にしたこと

僕はいろんな罪を犯した
大切にしたかっただけなのに、僕は最後まで君を大切に出来なかった   













除籍され死神ではない鈴華をつれて入る事は出来ない
鈴華はただの流魂街の魂魄となっていたのだから
だが、一護は全ての制止を振り切って彼女を零番隊へと連れ帰った
鈴華は零番隊を大切にしていた。そして彼女を慕う隊員が多くいる事も知っていた。彼女を零番隊副隊長として送ってやりたかったのだ






全てが終わった後、一護は全隊員を集めた


『副隊長を死なせたのは俺だ』


ざわっと隊員がざわめく。石田達上位席官はじっと一護を見つめた


『本来なら俺も責任をとって辞職するべきなのかもしれない』
『そうだ!』
『アンタのせいだ』


一部の隊員から声が上がる。だが一護はそれを無視し、言葉を続けた


『だが、俺にはどうしてもやるべき事がある。それを成す為に、俺は隊長を辞めるつもりはない』


しん・・・とした空気の中、一護は紙を見せる


『俺が気に入らないなら隊を異動してくれて構わない。これが申請書だ。判は押してある』









何十人かがその書類を持って零番隊を出て行った
だが石田達席官たち、そして零番隊設立時からの隊員はそのまま残ってくれた



『出て行かなかったんだな』
『・・・君を見捨てられる訳がないだろ』



一護は『ありがとう』と小さな声で礼を言った




その後、零番隊副隊長は空席となり一護はどんな優秀な人材を勧められても断り続けた

そして「零番隊隊長は尸魂界最強」と言われるようになって数十年後

零番隊の副隊長位が空席になって百年後、日番谷冬獅郎という名の子供がその席に就く事となる










   君と出会ったのは雨の降る日
   君と別れたのも雨の降る日



そして



   再会したのも   雨の降る日