明日はそっちに行けそうだ

尸魂界の冬獅郎からこんなメールが入ったのは昨日の事
隊長として忙しい彼の為に、彼の部下たちが手分けして仕事を片付けてくれたのだという
相変わらず隊長命の死神たちの顔を思い浮かべて、一護は感謝の言葉を心の中で述べた






『恋人は天使?それとも悪魔?』





誕生日のプレゼントを数日前に渡したばかりであるが、やはりクリスマスにも贈り物を
そう思った一護は冬獅郎がやってくる前にプレゼントを購入しに出かけていた
日が徐々に傾いていきあたりが暗くなった頃、冬獅郎からのメール

『ホワイトクリスマスとそうじゃないのとどっちが良い?』

どうやら今夜の天候を一護に決めさせてくれるようだ
今日の冬獅郎は随分と機嫌がいいんだな、と苦笑しつつ一護はメールを返す

『俺はどっちでもいいけど。遊子や夏梨に聞いてみたか?』

一護には雪が振っても振らなくてもどちらでも良かった
ただ冬獅郎と一緒に時間を過ごす事が出来るなら

暫く待つと、再び冬獅郎からメールがやってくる
冬獅郎が死神である事や、その力で天候を操ることが出来ると知っている夏梨が、ホワイトクリスマスを希望したらしい
『楽しみにしててね』という言葉で締めくくられていた

「今夜は冷えるかもな」

なんせ氷雪系最強の氷輪丸が降らせる雪だ
恐ろしく冷え込むかもしれない

こんな夜は冬獅郎を抱きしめて眠るに限る
一護の頬は自然と緩んでいた






自宅に着き、玄関のドアを開ける
すると居間の方向から妹達と冬獅郎の「おかえり」という声
その声に、一護の表情が穏やかなものになる
大切な家族と大切な恋人
一護にとって大切な人たちに出迎えてもらえる喜び
幸せってこういう事をいうんだろうなぁ・・・
一護は幸福を噛み締めていた
しかし、その幸福はあっさりと壊される

「おっかえりいいいいいい、いっちごおおおおおおお」

どーーーん!と銀色の物体が一護に飛び掛ってきた
一護はその衝撃によろめく

「ぅお?」

そしてそのまま玄関のドアに頭をぶつけた

「っ〜・・・・」
「あはははははははははは!一護、おっかしい!」

おかしいのはお前だ
痛む頭を抑えながら笑い転げる冬獅郎をにらみつけた

「ぅお!だって。んで、ごん!だって。あははは」

何がそんなに可笑しいのか床を叩いて笑う冬獅郎の背後にゆらり・・と一護は立った
これだけ上機嫌の冬獅郎を見ることは珍しい
良くも悪くも冬獅郎は冷静だ
ボケの多い死神の中で突っ込み担当といってもいいだろう
その冬獅郎が笑い転げている
この光景を少し前に見た気がする一護は、ぶつけたのとは違う頭の痛みを覚えて米神を押さえる
そして、まだ笑っている冬獅郎の耳を引っ張ると息を吸い込んだ

「とぉしろぉくうううううううううんん!!??」
「ふにゃあああああ!」





先ほど兄が帰ってきた
そして冬獅郎は兄を迎えに出た
・・・なのに帰ってこない

何故だろう?
遊子は首を傾げながら廊下へと出た
すると聞こえてきたのは人の話し声
「お兄ちゃん」と声をかけようとしたのと同時に兄の言葉が聞こえた


「今回で何回目ですかぁ?」

ぎゅーーーと思い切り冬獅郎の頬を引っ張る一護と、引っ張られている冬獅郎
状況から察するに、どうやら怒られているようだ
無断で酒を飲ませてしまった事で自分も怒られてしまうかもしれない
遊子はそ・・・っと居間へと戻った

「っな、ななかいめれす」
「七回目の罰則はなんでしたっけ?」
「いちごのおへやのおそうじれすっ」
「ちゃんとやっとけよ。んで、」
「いちご・・・痛いれす・・・」
「言う事聞けない悪い子にはオシオキだ。・・・で、八回目はなんだった?」
「いのうえおりひめとくせいべんとうの・・・ししょくれす」
「食べたいのか?」
「嫌れすっ!!」
「・・・だったら」
「もうのみましぇん!」

冬獅郎の言葉に、一護は溜息を吐きながら手を離した
冬獅郎は真っ赤になった頬を擦りながら「いたかったぁぁ」と涙を流していた

「・・・ほら」

一護が冬獅郎に手を差し出す
それを見た冬獅郎は表情を明るくし、一護の腕の中へ飛び込んだ

「一護っ」

すりすりと子猫のように擦り寄っている冬獅郎に苦笑しつつ、一護は改めて禁酒を言い渡した







「あのね、ちょっと待ってて」

家族と夕飯を一緒に取った後、自分の部屋へ戻ろうとした一護を冬獅郎が止めた
用意することがあると言って、一護をドアの前に待たせて冬獅郎は一人部屋の中へ
一体何をしてくれるのか とワクワクしながら待っていると「一護・・・」と自分の名を呼ぶ声
一護はゆっくりとドアを開けた

「えっと・・・めりぃ?・・・くりすます!一護!」

ぱぁん!と先ほど家族と使ったクラッカーを鳴らす冬獅郎
その姿を見て、一護は絶句した

「・・・?一護?」
「な・・・なななななななな」
「?」
「なんじゃあそりゃあ!!?」

一護は冬獅郎を指差して叫んだ
冬獅郎はこてん と首を倒して一護に近寄る

「一護ぉ?」
「ま、まままままま待て!近寄るな!!」
「・・・酷い・・・いちごぉぉ・・・」

拒絶された と冬獅郎の目に徐々に涙が溜まっていく

「ああああ!止めろ!涙目になるな!!」
「・・・ひっく・・・」
「ぅわああああああ!」

ぺたん と床に座り込んで目を擦る冬獅郎は、先ほどまで着ていた現世の服ではなく、真っ赤なサンタクロースの衣装を着ていた
それも、明らかに女の子用で、スカートになっているものだ

「ヒック・・・・一護が・・・苛めるよぉぉぉ」
「お前が!だろ!!」

袖の着いていないドレスタイプのコスチューム。スカート部分の丈がミニになっていて、白い太ももが惜しげなく晒されている
そして肘まである赤い手袋も、冬獅郎の白い肌と調和し、ありえない色香を放つ

(悩殺とはまさにこの事・・・)

気を抜けば冬獅郎に襲い掛かりそうになる自分を気合でやり過ごし、一護は部屋に入りドアを閉めた

「・・・いちご・・・」
「・・・その・・・格好の説明からしてもらおうか・・・?」

いくらクリスマスとはいえ、酒を飲んで気分が高揚しているからとはいえ、冬獅郎が自分の意思でこれを用意して、自分の意思で着たとは思えない。この裏にいるであろう金髪の美女の笑い声が聞こえるような気がするが、とりあえず事情を本人から聞く事にした

「・・・松本がね」
「やっぱり・・・」

これがクリスマスを過ごす恋人の約束ですよ。と、この衣装を手渡してきたのだという
何故自分の分しか入っていないのかと一応指摘したらしいが、『これはカップルの体の小さいほうが着る事になってるんです』との言葉に納得した
『小さい』という部分に引っかかりを覚えたものの、自分と一護の体格を考えると、この場合着るのは自分なのだ
『解った・・・ありがとう』と礼を言い、冬獅郎は現世へとやってきた

「でもね、こんなの素面で着れないの。・・・恥ずかしいし・・・」

『一護、似合うぅ?』なんて満面の笑みで言われた日には一護は間違いなく卒倒するだろう
この格好はうれしい事は嬉しいのだが刺激が強すぎる

(乱菊さんは俺に何の修行を積ませる気でいるんだ?)

このまま襲ってしまえという事なのか?いや、そうじゃないだろう。もし一護が無理矢理冬獅郎を襲おうものなら、彼女は十番隊を率いて黒崎家へと襲撃してくる筈だ

(これは・・・面白がってるな・・・)

冬獅郎を使って一護を煽って遊んでいるのだろう
「全く、あの人は・・・」
一護は冬獅郎の頭を撫でながらため息をはいた

「後、さーびすも恥ずかしくて出来ないの・・・」
「サービス?」

なんだか嫌な予感がする。聞きたいような聞きたくないような・・・そんな相反する思いを抱えながら、サービスの内容を聞いた

「えっと・・・」

冬獅郎はなにやらメモを取り出して、ベッドに横になる
そして、ただでさえ短いスカートを「すすす」と捲り、頬を染めてこう言った

「・・・・キテ、いちご」
「っ!!!」

どくん と心臓が跳ねた
一護は思わず前屈みになる

恥ずかしさに染まる白い頬
赤いスカートの中から覗く白い太もも

(も・・・・・もう駄目だ・・・)

「とうしろうおおおおおお」
「ぅわあ!?」

ぎしっ・・・とベッドのスプリングが悲鳴をあげた
冬獅郎の上に馬乗りになった一護は、ごくりと唾を飲み込んだ

(ど、どどどどどうしよう・・・勢いで乗っかっちまった!)

僅かに残った理性が「今すぐベッドから降りろ!」と訴えていた。一護はそれに従い、身体を離そうとしたのだが

「・・・いちご?・・・」

何してるの?と首を傾げる冬獅郎がその理性を吹っ飛ばした

「・・・冬獅郎・・・」
「?うん・・・・っあ!」

一護は冬獅郎の首筋に口付ける

「いっ・・・・いちっ・・・」

するっと手を短いスカートの中に忍び込ませた。びくり と身体を跳ねさせる冬獅郎に、一護はクスリと笑う
腿を撫で、下着に手をかけた
僅かに震える冬獅郎を口付けで落ち着かせ、下着の中に手を・・・・手を・・・・・

「って!何履いてんだお前はっ!!」
「ひゃあ!!」

がばっ!と起き上がった一護は、はぁはぁと肩で息をする
冬獅郎は何度も目を瞬かせ、「なに?」と一護の言葉の意味を尋ねた

「だから、何で・・・・・んなパンツ履いてんだってーの」
「・・・ぱんつ?」

これの事?と、冬獅郎はスカートを捲って見せる

「見せるんじゃねぇ!」

ハシタナイ!と一護は手でスカートを叩き落とした。冬獅郎はキョトンとしながら、「これも松本に必要なものと教えられた」と話した
一体何処で購入したのか、可愛らしいベビーピンクのそれは明らかに女性物。サイドはリボンで結ばれており、解けばあっという間に下着として意味を成さなくなるだろう
フロント部分も覆っている部分は小さく、女性が身につけたとしても心許ないのではないだろうか・・・・
いや、この際女性云々はどうでもいい
言いたいのは

「攻撃力ありすぎだ・・・」
「これね、お尻に食い込「言わんでいい!」

はぁ・・・と溜息をはいて一護は髪の毛を掻き毟る
今夜、冬獅郎は一護の部屋に泊まる事になっている。流石に寝るときまでこんな格好ではないだろうが・・・・・・・・と、ここまで考えて血の気が引いた
サンタの衣装。そして下着まで用意した乱菊が、果たして寝巻に何も手を加えずにいるだろうか?
まさか・・・と思いながら、冬獅郎に訊ねた

「うん。これ」

ぴらっと冬獅郎が出したのはネグリジェ

「って、なんでスケスケなんだよ!?」
「しーするーだと一護が大喜びですよって」
「あ、ああああああの人はああああ!!」

こんなもの着なくていい!!
一護は冬獅郎の手からネグリジェを奪い取った

「あ!だぁめ!」

冬獅郎は奪い返そうと手を伸ばす

「こら!」

一護は渡すまいと、隠す

「いちご、返して!」

ベッドの上での攻防
狭いベッドの上では逃げる事は難しい

「「わぁ!」」

逃げる一護に冬獅郎が飛び掛り、二人はベッドに倒れこんだ
今度は冬獅郎が一護に馬乗りになる形で・・・

「一護、返して」
「駄目」
「素直に返してくれたら、痛くしないから」

つつつ・・・と冬獅郎が一護の顔の輪郭を指で撫でる
一体何処でそんな事を覚えたんだ?
一護は驚きに目を開いた

「ね、一護」
「っ」

冬獅郎が一護に顔を寄せる
ぺろり と赤い舌で唇を一度舐めた

「一護ってば・・・」

ほんのり赤く染まった頬
一護が美しいと思ってる翡翠の瞳
白い肌に赤い服

「・・・と・・・とうしろう・・・」

冬獅郎を払い除けようと動かした手が、冬獅郎の臀部に触れる
暴れたからか、スカート部分が捲れており、素肌に触れる事が出来た

(て・・・天使?いや・・・悪魔だ)

こいつは悪魔だ
一護を性犯罪者の道に叩き落そうと、金髪の魔王によって送り込まれた悪魔なのだ

(しっかりしろ俺!冬獅郎は年齢はともかく、外見は子供なんだぞ)

知識や霊力はその辺の大人なんて足元にも及ばないが、子供だ
そんな子供を襲ってみろ!俺は性犯罪者の烙印を押されてしまう!!
・・・等と必死で自分を叱咤するが、手は冬獅郎の晒された白い肌を撫でる
しかも「ぃやっ」などと冬獅郎が言うものだから、煽られ、押さえが効かない

「あああああ!もう!!」
「ふぇ?」

一護は身体を起こし、馬乗りになった冬獅郎を腕に閉じ込めて、押し倒す

(犯罪者がなんだ!相手は年上、死神だ!)

もうこのままヤッてしまえ!!
一護はサンタの衣装に手をかけた




『ボローヴ!・・・ボローヴ!・・・』

「「・・・・」」

空気を読まない音が響く
冬獅郎と一護は見詰め合った

「・・・こ・・・こんな時に・・・」
「一護、行かないと」

ここは俺が とか
お前酔ってるだろ とか一護が口にする前に、冬獅郎は義骸を脱いで飛び出していた

「ちょ、冬獅郎!?」
「一護は待っててくれ」

一護が呼び止めるが、冬獅郎は瞬歩でいってしまう
慌てて代行証で死神化しその後を追った

「冬獅郎!」
「霜天に坐せ 氷輪丸!」

追いついた一護が見たものは、氷雪系最強の斬魄刀『氷輪丸』を解放する十番隊隊長日番谷冬獅郎の姿

水と氷の竜が空座町の空を駆ける

「・・・」

凍りつく虚と冬獅郎の姿を見ながら、一護はフッと笑った


「・・・重症だな、俺は」

悩殺もののサンタ冬獅郎よりも

大胆なネグリジェ冬獅郎よりも


「死神やってる冬獅郎の方がいいと思うなんて」



恋人は天使?

それとも悪魔?


いや


それよりも、恋人は死神が一番








ク・・・クリスマス・・・?
クリスマスSSになってます?コレ・・・
『抑えきれない!!』と似たような感じのお話です。(酒に酔った冬獅郎登場シーンとか)
ウチのイチヒツは一生こんな感じで・・・・(え?)
パンツはTばっくです・・・余談ですが・・・