『息が出来なくなるくらい 抱きしめて』
 (オトナになる方法 5)















『これから何をされるか解ってる??』


(いや・・・)


「セックスや」


(来ないで!)












「止めてっ!」
「日番谷隊長!」




はぁはぁ と肩で息をする冬獅郎を心配そうに覗き込んでいたのは
四番隊隊長の卯ノ花だった


市丸とのあの日から四日経った

冬獅郎が眼を覚ますと既にここ(卯ノ花の私室の一つである離れ)に寝かされていた
目覚めて最初に見たのはやはり卯ノ花だった
もしかしたらあれは夢だったのではないかと思うほど穏やかな笑顔をむけられた

けれど、身体に残る市丸の手の感覚
・・・夢ではなかったのだと悟った


それからずっと高熱を出し
市丸との夢に魘され
冬獅郎はずっとこの部屋で過ごしていた




「・・・・落ち着かれました?」
「あ・・・・・は・・・い」




この会話も何度目だろう
眼が覚める度にしている気がする

卯ノ花は冬獅郎の額に手をやり、熱を測る
ニコリと微笑むのは下がったという事なのか
冬獅郎に不安を与えない為か




「・・・何か、お口に出来そうですか?」
「・・・・」




ふるふると出来ないと言う意味を込めて首をふった
出来ない
食べたいと思わないし、食べても夢を見た後吐いてしまう
だから食べたくない


そんな冬獅郎に卯ノ花はもう一度微笑むと食事代わりの点滴を用意した




















「卯ノ花隊長」
「松本副隊長」




冬獅郎への処置も終り、再び眠りについたのを確認してから
卯ノ花は隊舎の廊下を歩いていた

そこで松本に呼び止められる




「あの、日番谷隊長は?」
「先程お休みになられました」
「そうですか・・・」




ふぅ と松本はため息を吐いた

冬獅郎は風邪をこじらせ、高熱が引かない為
卯ノ花が付きっ切りで看病に当たっていると護廷には公表されている

事実を知るものは、卯ノ花と松本
総隊長の山本
浦原と一護のみであった




「今日も・・・魘されて?」
「ええ」




きゅっと松本は唇を噛む

好きでもない男に襲われてどんなに恐ろしかっただろう
まだきちんと性の事等把握していなかっただろうに
大人ぶっているけれど
まだまだ子供である冬獅郎を傷つけた市丸が許せなかった




「それで、頼んでおいた件はどうなりましたか?」
「それが・・・」




松本が卯ノ花に頼まれていた事とは
一護の事

『彼に瀞霊廷に来てほしいと伝えてもらえないか』と頼まれていた


四日前
冬獅郎を毛布に包んで卯ノ花の前に現れた一護


『誰にも知られないようにコイツを診てほしいんです』


それ以外何も語ろうとしない一護
卯ノ花は深い事情があるのだろう と一護を伴って
離れへとやってきた

卯ノ花の敷いてくれた布団に冬獅郎を寝かせると
ペコリと頭を下げて出て行き
診察結果を聞いた後、松本を呼んでくると
すべての事情を話し、そのまま現世へと帰っていった


それから一度も尸魂界にきていない




「忙しいとか色々理由をつけては断られています」
「・・・・日番谷隊長の発熱は精神的なものからだと思われます
あの方は彼を救ってあげられる唯一の方なのです」




こくり と頷きながら松本は一護に対し、僅かばかり怒りを覚えていた




(アンタどうして来ないのよ!?)












『護りきれなくてすいませんでした』



頭が床に着いてしまうんじゃないかと思うほど下げられた
オレンジ色の頭
その時の一護の顔が苦しそうに歪んでいたのを見て
『アンタが悪いんじゃない』
と慰めた

そのまま冬獅郎に傍についていてくれるものだと思っていたのに
彼は無言で去ってしまった




(何を考えているの?・・・一護)



























「何考え込んでんです?ガラにもない」




浦原の家にある縁側に腰掛けた一護に
浦原がお茶を片手に現れた


一護は浦原には何も答えず
ぼんやりと景色を眺めていた
浦原は一護の隣に座る




「今日も、松本副隊長に五月蝿く言われるんじゃないですか?」




一護は毎日松本から通信を受けていた
伝令神機による会話だったり
浦原商店にある通信機だったりするが

毎日欠かさず『日番谷隊長に会いに瀞霊廷に来てほしい』と訴えられるのだ


テストが近いとか、これから出かけるんだとか
理由をつけて断ってはいるが




「・・・・どうして・・・・会いに行かないんです?」




浦原からしても一護の行動は意外だった
きっと目覚めるまで傍に居て
立ち直るまで支え続けるだろうと思っていたのに

すぐに現世に帰ってきた挙句
高熱を出して苦しんでいる冬獅郎を見舞おうともしない
何を考えているのやら




(まぁ、心配はしているようですけどね)




瀞霊廷に行く事は拒んでいる一護だが
冬獅郎の容態は必ず一番に尋ねている
熱がなかなか下がらない事を告げられると
苦しそうな表情をし、唇を噛み締めているのだから




「・・・・市丸に襲われた日番谷隊長を嫌いにでもなりましたか?」
「・・・」
「自分以外の者に肌を見せたあの方に怒ってるんですか?」
「・・・・」
「黒崎さん・・・」




何も答えない
浦原はため息をはいた

今日も駄目か・・・

松本にも説得の協力を頼まれているし
何より自分も一護は冬獅郎の傍に居るべきだと判断した

こうして毎日ココに顔を出す彼を何とかあちらに行かせようとしているのだが・・・




(本当に、何を考えているんでしょうかねぇ・・・)









もう少し一人にしてやるべきかと考え
浦原は一護の傍を離れようと立ち上がった




「・・・俺、冬獅郎の事・・・愛してるんだ」
「・・・・知ってますよ、惚気ですか?」




やっと会話をしてくれる気になったのか
一護が話しかけてくれた

浦原はもう一度一護の隣に座る




「今頃・・・どんなに苦しんでるだろう
辛いだろう悲しいだろうって思うと・・・・
直ぐにあっち行って、抱きしめてやりたくなる」
「・・・・」
「だけど・・・出来ない・・・」
「どうして?」




浦原に向けられた一護の表情は、今にも泣き出しそうであった




「きっと・・・俺は冬獅郎を傷つけちまう」























『逃げていないで
アナタは彼に会うべきです』




浦原に諭された一護はあの日以来、初めて尸魂界へと向かった


一番に毎日説得してくれていた松本の下へ・・・




「!・・・一護」
「・・乱菊さん」




一護の訪問に一瞬驚いた後、松本の目に涙がどんどん溜まる
このまま冬獅郎はどうなるのだろう
二人はどうなってしまうのだろう と一番に心配していたであろう
彼女は、やっと現れた一護を責める事もせず
「来てくれてありがとう」
と言ってくれた


次に卯ノ花の所にも顔を出したが
彼女も優しく笑って迎え入れてくれた








「何かあれば呼んでください」
「・・・はい」




冬獅郎のいる部屋の前まで案内すると、卯ノ花は去っていった
本音を言うと二人きりにしてほしくはなかったのだが・・・




「でも・・・・会わなきゃ」




一護は一旦眼を閉じ
気持ちを落ち着かせてから部屋の襖を開いた








六畳の和室
その中央に冬獅郎は寝ていた

部屋は少し薄暗くて
けれどどこか落ち着く
普段卯ノ花が使っている部屋だからだろうか


一護は冬獅郎の横に座り、眠る顔を覗き込んだ




「少し・・・痩せた、な」




松本から聞いた話では
熱は上がったり下がったりを繰り返しているという
その為、体力の低下が激しく
また、殆ど何も口にしようとはせず、困り果てていたらしい




「・・・冬獅郎」




どこか悲しそうな表情の冬獅郎を見て
一護はせめて少しでも良い
自分がいる事を解ってもらえたら と
冬獅郎の右手を握った






















『・・・まっくら・・・』




何も無い
ただ闇だけの世界に冬獅郎はぽつんと立っていた

ああ、これも夢なんだ
と心のどこかで解っていた

今のように真っ暗な世界だったり
あの小屋だったり と場所は違うが
内容はいつも同じ




『・・・十番隊長さん・・・』
『っ!』




どの方向から聞こえてきたのか解らない
けれど感じる
あの男の気配




『!ぅあっ!』




大きな影が冬獅郎を押し倒す
それが誰であるかなんて、今更問うまででもない

押さえつける力
身体を撫で回す手

全てを覚えている




『もう止めて!市丸っ!』




これは夢なのに
市丸はここに居るはずが無いのに
恐怖心がそう思わせるのか
まるで現実のように感じられた




『誰かっ!』




誰もいないのは解ってる
それでもこの悪夢から逃げたくて




『助けて!』




手を伸ばした














『っ!?』




伸ばした手
そこに感じる微かな温もり




(・・・こ・・・れ・・・)




誰かが手を握ってくれている
冬獅郎はこのぬくもりの主を知っている




『い・・・・ちご・・・』




その名を口にした瞬間
世界は光に包まれた




『!』




冬獅郎が眼を開けると、市丸の気配は消えていて
姿は見えないけれど正面の方向に一護を感じた




『・・・そこにいるの?』




冬獅郎は

『会いたい』

ただそれだけを願い、走った





















「・・・・・」




一護が手を握ったと同時に冬獅郎の顔が苦しそうに歪んだ
もしかして触らない方が良かったのか?と
慌てて手を離そうとしたが冬獅郎の方からギュッとつかまれ
そのままとなった

どうしよう
一護が困っていると
ゆっくりと冬獅郎の眼が開いた




「あ・・・と「いた」」




冬獅郎は、一護に視線をあわせると眼に涙を溜め始めた




「一護・・・いた・・・やっと、見つけた」




両手を伸ばし、抱きしめて と訴える冬獅郎を
一護はそっと抱き起こした




「っ一護!」




とうとう泣き出してしまった冬獅郎
一護は優しく頭を撫でてやった

抱き起こして改めて解った
たった数日で冬獅郎は痩せてしまった
力も弱くなり
もっと早く来てやれば良かった
と後悔させた


卯ノ花達の話では
冬獅郎は悪夢に魘されはしているものの
決して泣かなかったのだという

弱さを誰にも見せようとしない冬獅郎らしいといえばらしいのだが
精神的にかなり無理をしているようだ

ずっと下がらない熱は
内に閉じ込めた恐怖を自分では処理しきれなくなり
それが肉体に四十度近くの高熱となって
現れたものだろうという事だ




「大丈夫・・・もう大丈夫だ」
「いちっ・・・怖・・・った」




怖かった と一護にしがみついて泣く冬獅郎を
抱きしめながら
きっとこれで熱が下がるだろう
なんの根拠もないが、そう確信した


















「落ち着いた?」
「ぅ・・・・ん・・・」




泣いて疲れたのか
冬獅郎は一護の腕の中でうとうとしていた

一護はクスリと笑い、冬獅郎を横にさせようと体勢を変えた
まだ熱は高い
休ませた方が良いと判断した為だ




「!やっ!」




しかし、それに気がついた冬獅郎が急に暴れだす
先程までの眠気は何処へ行ったのか
嫌だとはっきりとした口調で訴えた




「冬獅郎・・・熱高いんだから
身体・・・辛いだろ?」
「嫌だっ!やだっ!」




冬獅郎は一護から離れまいと必死で腕にしがみついている
どうしたものかと一護がため息を吐くと
冬獅郎が叫んだ




「離したら一護、居なくなっちゃう!
眠ったら一護、帰っちゃう!!」
「!」




だから離さない
離れたくないと訴える冬獅郎を、一護はもう一度
しっかりと腕に抱きしめる

それでも安心できないのか、冬獅郎は一護の服をしっかりと握って離さない




「大丈夫、俺はいなくなったりしないから」
「・・・ほんとう?」




恐る恐る顔をあげる冬獅郎に、一護は優しく微笑んだ




「勿論・・・だから、もう寝よう?
冬獅郎が寝ている間も、目が覚めても
俺は必ず傍に居るから・・・・」




額にそっとキスをすると、冬獅郎はゆっくりと眼を眼を閉じ
そのまま眠りに落ちていった













約束どおり、一護は冬獅郎の傍について目覚めるのを待った

やっと薬が効いてきたのか、一護が傍に居るからか
熱が下がってきているようだった
ホッと安堵の息を吐きながら、一護は冬獅郎の銀髪を撫でる




「早く元気になってくれよ・・・
話したいことがあるんだ」




冬獅郎は一護から離れるのを嫌がった
それは恐怖から逃れたくて一護に縋ったのだろう
でも、もしかしたら
冬獅郎は知っているのかもしれない
一護が冬獅郎を避けていた事を
離れようとしていた事を

そうであってもなくても
一護は話そうと決めた

心の中にある
市丸と同じ欲望を・・・





















「今から話すことを、落ち着いて聞いてほしい」




冬獅郎が目覚めると、約束どおり一護が傍に付いていてくれた
それに安堵した冬獅郎は何日ぶりかに笑うことが出来た

その時には卯ノ花と松本が部屋に居たのだが
冬獅郎の眼には入っていなかった
松本の「イチャイチャしないでくださいよぉ」
という声さえも聞こえていなかったのだから
本当に気がついていなかったようだ


熱はまだ微熱ほどあるが、恐らくもう大丈夫だろうと
一護たちは安心した

そして一護は松本達に頼んで二人きりにしてもらった


冬獅郎を掛け布団ごと抱き起こした一護は
「話があるんだ」と告げた

その表情があまりに真剣であった為
冬獅郎の心に不安がよぎる

一護が離れていきそうで
ぎゅっと一護の服を掴んだ









「嫌な事思い出させるけど・・・・
市丸に・・・何をされそうになったか、解るか?」




『市丸』その名を聞いて思い出すのはあの恐怖
あの時、市丸が教えてくれた
今から何をするのか

ぎゅっと震える身体を抱きしめながら頷いた




「・・・・怖かった?」




またも頷いて答える
どうして一護はこんな事を思い出させるのだろう
どうしてこんな事を聞くのだろう
と疑問に思いながらもじっと耐えた




「・・・それね、俺もしたいんだ」
「・・・え?」




今、一護は何と言ったのか
冬獅郎は顔をあげて一護を見た




「市丸がしようとした事
俺はお前と・・・・したい」


『君の此処に・・・』




一護の言葉に続いて市丸の声が聞こえてきたような気がした
冬獅郎は居る筈のない市丸から隠れるように布団に潜りこもうとした
それを一護が阻止する




「っ!なんで?」
「聞いてくれ!怖がらせてるのは解ってる
嫌な事思い出させてるのは解ってる!
でも聞いてもらわなくちゃならないんだ!」




殆ど泣きかけている冬獅郎を強く抱きしめ、一護は続けた




「今すぐじゃない
いつかお前が俺と同じように想ってくれるようになるまで
ちゃんと待つ
俺は絶対にお前を傷つけたりしない」
「・・・っく・・・・だって・・・・怖い・・・」
「そうだな、怖いよな
でも・・・・俺は、お前とそうなりたい」




いつか一護とあんな事をしなければならないのだろうか
あんな風に力で押さえつけられて
止めてと訴えても聞き入れてもらえない

一護も市丸のように恐ろしい存在になってしまうのだろうか




「大丈夫、待つって言っただろ?
無理矢理は・・・しない」
「・・・」




一護は冬獅郎の頬に優しく口付ける
触れる唇から一護の暖かさが伝わってくる
冬獅郎の身体から少しだけ力が抜ける

それに気がついたのか、一護は冬獅郎の顔に、髪に
次々に口付けをおとす


安心できた冬獅郎はゆっくりと一護の胸に頭を預けた




「一護・・・・」
「ん?」
「・・・いつから俺と・・・・そうなりたいって
・・・思うようになったの?」




一護は冬獅郎の髪を撫でながら少し考えた




「・・・いつからかなぁ?
多分、自然とそう思うようになった」
「・・・俺も・・・そうなる?」
「どうかな・・・」




冬獅郎は少し考えた後
「良いよ」と答えた




「え?」
「一護がしたいなら良い
俺、しても良い」
「冬獅郎?」




その表情は辛そうで、怖いのを我慢しているのがハッキリと解った




「だから!俺を捨てないで!
一緒にいて!」
「・・・・冬獅郎・・・」




冬獅郎が嫌だと拒めば、一護が離れていくと考えてしまったようだ
ぎゅっと握られた手が、身体が震えているのが伝わる
一護は「そうじゃない」と硬く握られた手に自分の手を重ねた




「お前が嫌だと思ってるのに、出来ないよ」
「でもっ」
「それじゃ、市丸と同じになっちまうだろ?」




自分がしたいのは
一護も望み、冬獅郎も望んだ時
どちらか片方が望み、片方が我慢する
そんな行為ではない

それを冬獅郎は解っていないようで
なんとかして一護を繋ぎとめようと必死だった
どうして、そこまで?
と一護が疑問に思っていると冬獅郎が泣きながら伝えてきた




「一護っ・・・俺の事、嫌い・・・・でしょ?」
「何言って「だって!」」




どうして嫌いだ何て話しになるんだ?
冬獅郎は何かを誤解している




「一護、俺を置いて現世に帰ったの!
一護、俺に会いに来てくれなかったの!!」
「!」




もしかしたら
とは考えた
けれど眠っていたから、熱に魘されていたから
気がついていないと思っていたのに

知っていたのか・・・




「一護が教えてくれたの
頼って良い
甘えて良い
愛して良いって」
「・・・」
「教えてくれたの
愛されて良い
守られて良い
泣いても良いって」




冬獅郎は一護の手を両手でギュッと握り締めた




「もぅ・・・この手は離せないの
もぅ・・・一護無しじゃ生きていけないの」




だから俺を捨てないで

と訴える冬獅郎に一護はなんて告白だろう と思った


一護無しでは生きていけない


冬獅郎にとって自分が唯一の存在であると言われたのと同じ
愛した人にこんな事を告白されて
嬉しくないはずがない




「俺もだよ」
「っ一護っ」
「俺も・・・お前無しじゃ生きていけない」




大丈夫、絶対に離れたりしない

一護は冬獅郎に
数日振りのオトナのキスをした
















「あの時の俺は、感情が高ぶってて
自分で自分が抑えられそうになくてさ・・・
だから卯ノ花さん達にお前を託して直ぐに帰った」




布団に横になった冬獅郎に添い寝するように
一護も横になっていた
そして、どうして直ぐに帰ったのか
どうして会いに来なかったのかを話す




「・・・会いに来なかったのも同じ理由
会ったら、お前を傷つけそうで・・・怖くて、さ」
「・・・傷つける?」




うん
と頷きながら冬獅郎の頭を撫でた
冬獅郎は気持ち良さそうに眼を細めた




「他の男に先にやられるくらいなら
今すぐ俺がやってやるって、さ」
「・・・・一護・・・」
「最低だろ?
お前は怖い思いしたばっかなのに
・・・だから、自分を抑えられる自身が持てるまで、お前の所に行かないって決めたんだ」




でも浦原に『逃げていては駄目だ』と諭された

今となっては会いに来て良かったと思う
なにより冬獅郎の熱が下がったし
思いがけない告白も聞けた




「それは・・・俺を愛しているから?」
「そう、愛してるから
お前が何より大切だから」
「・・・うれしい・・・」




冬獅郎は柔らかな笑みを浮かべる
一護も同じように微笑む




「一護」




冬獅郎が両手を一護に向かって伸ばした
それは抱きしめてという合図




「抱きしめて・・・一護しか解らないようになるまで
一護しか感じられないように
・・・・息が出来なくなるくらい・・・抱きしめて」
「・・・お前がそう望むなら・・・
いくらでも、何度でも・・・」










『このまま一つになれたら良いのに・・・』





それはどちらの言葉だったのか

二人は決して離れまい と
きつく抱きしめあった