愛しい君へ


君は僕の大切な人



大切なあなたへ


あなたは僕の愛しい人


僕らの気持ちは同じもの
僕らのココロは同じもの

僕らは想いは同じ
僕らのココロは同じ


僕らは
繋がっている






「明日帰る」冬獅郎は部屋に戻ってきた一護に、短くそう告げた
一護は一瞬驚いたが、「そうか」と嬉しそうに微笑んだ

きっと一護は冬獅郎が自分の意志で「帰る」と言い出す時を待っていてくれたのだろう
すぐに家族にその事を伝え、緊急でお別れ会が開かれた

涙ながらに冬獅郎を引きとめようとする一心
すぐに帰ってくるんだろ?またサッカーしような、と笑顔の夏梨
帰る前にいっぱい食べてねwと微笑む遊子

冬獅郎は温かい黒崎家の家族に包まれて、最後の夕飯を終えた










愛しきみへ













「・・・・ありがとう、一護」


冬獅郎は一護の部屋に戻り、一番に一護に感謝の意を伝えた
一護は微笑むと冬獅郎を抱き寄せる


「いいんだ・・・・それより、平気か?」
「ん・・・大丈夫。俺も住田のように戦うんだ」


ぎゅっと一護に抱きついて、冬獅郎も微笑む
彼は落ち着いていた
昼間まであんなにあの事を怖がっていたのに、今では大丈夫だとハッキリ言える


「一護と住田が教えてくれた。怯えて逃げてばかりじゃ駄目なんだって。恐怖と戦わなくちゃって」
「・・・・」
「俺には一護がいる。松本も、皆も。また俺が怖くて動けなくなったら・・・」


一護は冬獅郎の髪に口づけた


「立てないなら立たせてやる。歩けないなら手を引いてやる。・・・傍にいるよ」


冬獅郎はニッコリと笑って頷いた













大丈夫だと冬獅郎は言ったのだが、一護がどうしても冬獅郎を送って行きたいのだと主張し、二人揃って尸魂界へとやってきていた
一護はしっかりと冬獅郎の手を握り、瀞霊廷を進む


(繋いだ手
大きくて温かくていつもは安心する一護の手・・・だけど・・・)


「人前ではちょっと・・・」
「ん〜?そうか?」


大勢の死神とすれ違い、その度に振り返られた
冬獅郎はそれを一護と手を繋いでいるからだと思い、恥ずかしさに顔を俯ける

事実、二人が手を繋いでいるから振り返られているのだが、その視線に籠められた意味は一護への嫉妬だった
一護も彼らに見せ付ける為にやっている事なので、睨まれると挑発するように肩を抱き寄せたりしていた





「・・・・十番隊だな」
「ん。・・・帰ってきたんだ」


二人は十番隊の門の前に立った

一護はギュッと冬獅郎の手を強く握る


「・・・・」


ここを通れば冬獅郎は『隊長・日番谷冬獅郎』に戻る
大勢の隊員の前に立ち、大勢の隊員を率いて戦う死神の隊長に

一護と冬獅郎が現世と尸魂界で生きている以上、二人は簡単には会えない
今更な事だが、こうして十番隊の門の前に立つと改めて現実をつきつけられてしまう

一護は冬獅郎を見つめる
冬獅郎も一護を見つめた

このまま手を離せばまた離れ離れ

寂しい・・・

どちらもが思った




「冬獅郎・・・・」
「何?」


一護は冬獅郎に小さな袋を渡した
冬獅郎が不思議そうに一護を見上げる。一護は頷いて中を見るように促した


「・・・・指輪?」


中には銀色の指輪
なんの石も模様も無い、飾り気の無い指輪

一護は冬獅郎の手からそれを受け取ると、冬獅郎の指へ

それは不思議と冬獅郎の薬指にピッタリで、ただただ冬獅郎は驚いていた


「いち・・・ご?」
「うん」


一護はニコリと笑って指輪の上から冬獅郎の指に口付ける
その仕草がいつもの一護と違っていて、冬獅郎は思わず照れてしまう


「あ・・・・の・・・」
「仕事の邪魔になると思ったら、一緒に入ってるチェーンに通して首にかけて」
「うん・・・じゃなくて」


これは?と訊ねると一護は「指輪」だよ と笑う


「あのな・・・」
「ごめんごめん・・・そうじゃなくて、意味だろ?」


クスクスと笑う一護に冬獅郎はぷぅっと頬を膨らませる
つい先程、一護にドキドキした自分が馬鹿らしく思える


「これは・・・・つながってる証拠だよ」
「・・・つながってる証拠?」
「そう」


尸魂界と現世
二つの世界で別々に生きる二人
けれど一護は信じてる
自分達は繋がっていると。離れているけど何かで・・・・心で繋がっている、と


「その繋がりは目には見えない。解ってるけど、目に見える何かを冬獅郎に渡したかった」


だから指輪を贈ることにした
ありきたりな物だったが、常に冬獅郎に身につけてもらえて、誰が見ても自分達の繋がりを解ってもらえる物が良かった


「・・・一護・・・」
「近くにいなくてもココロは一緒にいるよ。傍にいるよ。ちゃんと、冬獅郎の傍に」
「・・・っうん!」


冬獅郎は一護に抱きついた
一護は小さな体を強く抱きしめた後、冬獅郎の顔を上へとむける

「あ」と冬獅郎が思う前に、一護の唇が自分のそれと重なる
冬獅郎はゆっくりと目を閉じながら気がついた


一護は冬獅郎が黒崎家に来たときから一度も冬獅郎の唇にキスをしなかった事を
冬獅郎があの事を思い出し怯えている事に気がつき、少しでも不安要素を取り除こうと口づけなかったのだ


(一護・・・・一護・・・)


好きになった人が一護で良かった
好きになってくれた人が一護で良かった

冬獅郎は一護の服を強く握り締めた





「・・・じゃあ、俺は此処まで・・・な?」
「うん」


暫くそのまま抱きしめあっていた二人
だが、どちらともなく離れた

そして一護は冬獅郎の手を離す


「いってらっしゃい」
「・・・・いってきます」


冬獅郎は一護に背を向け隊舎へと歩き出す
一護はその姿が見えなくなるまでずっと見つめていた















「コラー!!松本っ何処行くつもりだ!!?」
「あはは〜・・・・ごめんなさーい!!」


十番隊に日常が戻った
副隊長は日夜サボる事を考え、真面目な隊長がそれを注意する
そんな上司二人のやり取りを隊員たちは微笑ましく思いながら笑顔で見つめる


「てめぇら!見てないで松本捕まえろ!」
「「「はい!」」」

「って!あんた達!裏切るのぉ?」


騒がしいけれど楽しい
忙しいけれど幸せな
十番隊の日常









「・・・・」


夜、自室に戻った冬獅郎は首から下げられた指輪を取り出す


「ただいま、一護」


手で指輪を包み、冬獅郎は穏やかな微笑みを浮かべる


「感じるよ・・・一護のこころ」



あたたかい・・・優しくて力強い

貴方のココロ







愛し君へ

僕の大切な大切な愛しい君へ


君の傍に僕の心を


君を愛する僕の想いを




愛しきみへ