黒い死神の間を白と銀の色を持った人物が通り過ぎる
背を流れる長い銀色の髪が、歩くたびに揺れる
『彼』が通り過ぎると皆が振り、ほぅ・・と息を吐く

後ろを歩く乱菊は、心の中でピースサインをする

(羨ましいでしょ?私たち十番隊は毎日この人を見れるんだから)

乱菊は前を歩く上司の背中を見つめた






過ぎ去りし思い出 前編






十番隊隊長 日番谷冬獅郎
史上最年少で隊長に就任した幼い子供は、今では大人一歩手前という所まで成長した
あんなに気にしていた身長も、乱菊とほぼ同じくらい伸びる事ができた
最早誰も彼を『生意気なクソガキ』とは呼ばなくなった
代わりに『十番隊の高嶺の花』という名がここ数十年の彼の通り名となった
元々整っていた顔立ちは、成長と共に余計な丸みが取れて更に美しさが増したといわれ、身長を少しでも大きく見せる為だったと囁かれる銀の髪は、今では長く伸ばされ、後ろで一つに括られ【十】を背負った背に流されている
男女問わず人気があるのは相変わらずだが、この歳になるまで彼は誰とも恋愛関係になった事がない

密かに噂される人物が一人いるのだが、本人は否定も肯定もした事はなかった




「良いもん見たな」
「日番谷隊長だろ?・・・綺麗だったなぁ」

男の人に綺麗という言葉はどうなのだろう?と偶然その会話を聞いていた吉良は苦笑するが、冬獅郎は確かに『綺麗』という言葉が似合っていた
何故なら彼は、男であるのに男臭くない顔立ちをしているのだ。一時は女なのでは?とまで噂されていたが、無理もないと彼をよく知る者達は苦笑していたものだ

「美形なのもあるんだが・・・あの何処か憂いを帯びた表情が良いんだ」
「どこか寂しそうな、あれだな」

子供の頃からそれほど愛想が良かった人物ではない。どちらかといえば悪い方だった。しかし、現在のように時折遠くを見つめたり、寂しげに俯いたりはしていなかった

「・・・やっぱりアレか?あの噂か?」
「かもな。十番隊の連中の話じゃ、あの後くらいからあんな表情をするようになったらしいから」

噂か・・・と吉良は遠くを見つめる


「もう・・・あれから九十年経ったんだな」

冬獅郎が憂いを帯びた表情をし始めてから
吉良がある人を失った時から

「・・・市丸隊長」





−九十年前、朽木ルキアの処刑騒動から始まった大事件が起こった
元五番隊隊長藍染を主犯とした叛乱
本来死神の倒すべき相手である虚を使い、戦いを挑んで来た彼らを護廷十三隊は隊長全員を投入してこれの討伐に当たった
激しい戦いの結果、勝利したのは護廷十三隊であった
叛乱を起こした三人の元隊長は、戦いの中で全員が死亡
世界に平和が戻った


その戦いの後、一つの噂が瀞霊廷に流れた
それは冬獅郎が何処か遠くを眺めだした頃と同じ時期に流れ出したもので、今では殆んどの死神がそれを信じている

噂とは【十番隊隊長・日番谷冬獅郎と元三番隊隊長・市丸ギンが恋人同士であった】というもの

これを聞いたとき、吉良や乱菊は馬鹿馬鹿しいと笑い、噂を完全否定した。だが、その噂はいつまで経っても消える事無く囁かれ、九十年経った今でも真実であると言われている

その理由の一つに、決戦前の冬獅郎の言葉がある
『市丸ギンだけは、俺にやらせてほしい』
誰も手を出さないで欲しい。一人で市丸と戦いたいと、戦いが始まる前に冬獅郎は総隊長山本に願い出ている

そしてもうひとつ
死ぬ前の市丸の言葉
『君に殺されて死ぬんやったら、後悔はないわ』
この言葉は乱菊も吉良も、そして他の死神たちも聞いており、この言葉から二人がただの元同僚の関係ではないと周囲に認識させた

実の所、今では吉良にも乱菊にもこの噂が嘘か真か解らなくなっている
市丸は既に死亡しており何も彼から聞くことが出来ないし、冬獅郎もこの事について何も語ろうとしないからだ
彼らがともに瀞霊廷にあった時、二人は決してそんな関係ではなかった。それは言い切ることが出来る
市丸は頻繁に冬獅郎を構っていたが、冬獅郎は迷惑そうにしていた
それは演技ではなく、彼らの本当の姿であったと吉良は思う
二人は決してそんな関係ではなかった

だが、あの戦いの時の二人は違った
恋人などという甘い空気は出していなかったが、お互いがお互いの事を良く理解しているような、まるで親友同士のような雰囲気はあったように思う

「・・・どちらにせよ・・・」

吉良は溜息をついた

「過ぎ去りし思い出・・・ということか・・・」




****



冬獅郎は執務室の窓から空を見上げていた
一日良く晴れた空は、太陽が傾き真っ赤に染まっていた

ゆっくりと目を閉じる
聞こえてきたのは憎らしい男の声

『君・・・アホちゃう?』





市丸は自分が倒す と総隊長に願い出た冬獅郎は市丸の元へと向かった
本当に倒したいのは、憎いのは藍染だった。しかし、彼と自分の実力には大きな差があった。それでも・・と玉砕してでも戦いたい自分がいなかったといえば嘘になる
だが、冬獅郎は約束したのだ
『生きて帰ろう』と
『生きて帰ったら話したいことがある』ともう一度会う約束をしたのだ
それを果たす為、冬獅郎は藍染ではなく市丸と戦う事を選んだ
後で「逃げた」と言われても良かった。生き残る為なら

しかし、なにも生き残る為に市丸を選んだのではない。彼も強敵であることに代わりはなく、冬獅郎が本気を出したとしても勝てるかどうか解らない相手であった

「・・・やっぱり来たんやね。十番隊長さん」

市丸は冬獅郎が来る事が解っていたかのように、静かに佇んでいた。お互いに味方はいない。二人だけだった

「僕の相手は君やってずぅっと思ってた」
「・・・何故?」

市丸も冬獅郎が藍染を憎んでいることくらい想像している筈である。にも拘らず、市丸は冬獅郎が、戦う相手を藍染ではなく自分にすると確信していた

「やって君、僕ん事嫌いやろ?」
「ああ」
「即答?」
「先にてめぇが言ったんだろ?」

酷いわぁ と泣きまねする市丸に冬獅郎は大きく溜息を吐く
その時、遠く離れた場所で知った霊圧が膨れ上がったのを感じた。戦いが始まったのだ

「・・・向こうも始めたみたいやね」

当然、市丸もそれに気がつく。先ほど膨れ上がった霊圧と戦っている存在。それは藍染なのだから

「始める前に聞いて良い?」
「何だ?」
「なんでここへ来たん?」

市丸は冬獅郎が自分のところへ来る事を確信していた。だがもしかしたら来ないかもしれないという予想もしていたのだ
自分達の頭である藍染の力は市丸でも底が知れない。総隊長であろうと、浮竹や京楽が共に戦おうと、勝つのは難しいだろう
たとえ隊長格全員が束になって戦いを挑んでもそれは同じ事。そんな中、冬獅郎はここへ来た
『彼』が藍染と戦っているというのに

「もしかしたら、もう会えへんかもしれんのやで?」
「・・・」
「最後は一緒に・・・とか考えんかった?」

冬獅郎はグッと拳を握った

「約束・・・した」
「は?」
「生きて帰ろう と」

約束したから自分達は死なない。きっと彼は藍染を倒すだろう。そして自分は市丸を倒すのだ。藍染の次に強敵である市丸を
ここで自分が市丸を倒し、少しでも彼の助けとなるために
そして

「お前は嫌いだ・・・俺を理解しているから」
「意地っ張りで悲観的で、頭ええのにアホなところ、か?」
「だから嫌いだ。お前は俺が知りたくない俺を教えて、見せる」

きっと、市丸以上に冬獅郎の事を理解している者はいないだろう。市丸には解っているのだ。もし、この戦いで生き残ったら、自分がその後どうするのか

「君は僕に止められたくないんやね?馬鹿なことしようとするだろう君を」
「・・・」
「あえて言わせて貰うわ・・・君・・・アホちゃう?」


その言葉を合図に市丸と冬獅郎は剣を交えた
冬獅郎は勿論、市丸も本気で戦った
まだ子供で、卍解も未完成。冬獅郎が勝っている所といえば、小柄でスピードがある事だけ。それでも―


「・・・強うなったね・・・」

それでも冬獅郎は市丸に勝利した
紙一重であったが、冬獅郎が勝ったのだ

ぐらりと倒れる市丸を、冬獅郎は感情の篭らない瞳で見つめた
周囲には戦いの霊圧を感じて、乱菊や吉良、他の死神たちが集まっていた

「もっと遊びたかったけど、しゃあないな」
「・・・」
「君に殺されて死ぬんやったら、後悔はないわ」

さいなら、十番隊長さん
まるで執務室へ遊びに来て帰る時のように、市丸は冬獅郎に別れを告げて瞳を閉じた







冬獅郎はゆっくりと目を開ける
日はすっかり落ち、空には月が浮かんでいる

「市丸・・・お前の言うとおりだ・・・」

俺はアホだな・・・

クスリ と冬獅郎は自嘲した






九十年前の戦いで護廷十三隊は勝利した
隊長格全員を投入しての戦い
大霊書回廊に記録されている情報では、藍染の右腕と言われた市丸は冬獅郎が倒したと残っている
だが、主犯である藍染を倒した人物の名前は、どこにも記されていない

****


〜空座町〜


藍染たちとの戦いが終わって一ヵ月後、その舞台でもあった空座町に冬獅郎は降り立った
冬獅郎は強い決意とともに、目の前の建物を見上げる
『クロサキ医院』と書かれたその建物は、『彼』の住む家だった

生きて帰ったら、話したいことがある
戦いの前に『彼』からそう言われていた。自分も話したい事があったから、必ず生きて帰ると約束したのだ

あの戦いは激しかった。お互いそれなりの怪我も負った。本当は直ぐにでも会いに行きたかったのだが、怪我を癒す為と事後処理をする為、そしてある人物に『ある頼みごと』をした為に今日まで延びてしまった

「良かった・・元気そうで」

ニッと笑う顔は今迄と同じ。笑いかけられた、それだけで相手の心をあたたかくする、彼独特の優しい笑顔
冬獅郎はその笑顔を眩しげに見つめ「ああ」と返事をする
素っ気ないと思われただろうが、それでも構わなかった

「そっちは落ち着いたか?」

『彼』こと、黒崎一護は冬獅郎にジュースの入ったグラスを渡しながら尸魂界の様子を伺う。冬獅郎が事後処理中に起こった事や結果を報告すると、ホッと息をはいた

「皆元気なんだな」
「もしかしたら徐々に問題が出てくるかもしれないが、あれだけの経験をしたんだ。乗り切れるさ」

そうだな と一護は微笑む
冬獅郎はグラスを見つめながら「ありがとう」と礼を述べた

「え?」
「お前がいなかったら、きっと俺達に勝利は無かった」
「んな事・・」
「お前の存在は皆に力を与えてくれたと思う」

どんなに苦しい時でも、どんなに倒されても、傷だらけになりながらも立ち上がるその姿に。きっと皆が勇気を貰った

「・・・お前は?」
「?」
「俺はお前に力を与えれたか?」

一護は真剣な表情で冬獅郎を見詰める。冬獅郎も数秒一護を見詰めた後、コクリと頷いた

「ああ・・・与えてもらった」

冬獅郎の言葉に一護はニッコリと満足そうに笑う。冬獅郎も微笑むと、コクリと貰ったジュースを飲み込んだ




「あのさ」

数分、無言の時間が過ぎた。何か話すべきだとも思ったが、一護が先ほどから何かを言おうとして言えないでいるらしい事を察した冬獅郎は、ずっと彼が話すのをまっていた
一護はゴクリ と唾を何度も飲み込む

「なんだ?」

一護は手に持っていたグラスを置いて、冬獅郎に向かって正座する。それを見た冬獅郎も一護に習った
正座して向かい合う二人

「俺、お前が・・・好きだ」
「っ」
「死神とか男だとか、んな面倒くさい事抜きで言ってる。・・・好きなんだ」

一護の告白に、冬獅郎は瞳を大きく開いて聞く

「本当はいけない事なのかもしれない。俺達は・・・」
「・・・生きている人間と、死神」
「ああ。けど、気持ちに嘘はつけないんだ」

お前が好きなんだ
一護の口から何度目かの「好き」という言葉が紡がれた
迷惑だろ?と不安げな一護の、膝の上で硬く握られた手に、冬獅郎は自分の手を重ねた

「迷惑なんかじゃない」
「・・・冬獅郎?」
「・・・・俺も、お前がずっと好きだった」

ぽつり と重ねた手に雫が落ちる。なんだろうと視線を下げると、ぽたっともう一度
これは何だろうと不思議に思っていると、一護が冬獅郎の顎に手を当て、自分へと顔を向けさせた

「・・・何泣いてんだ?」
「え?」
「泣いてるよ・・・お前」

一護は冬獅郎の頬を両手で包み込むと、流れる涙を指で拭う
冬獅郎はこの時になって初めて自分が涙を流している事に気がつく

「・・・・泣くなよ」

一護の顔が冬獅郎に近づく。あ、と思っている間に、唇に軽い感触

「・・・」
「なぁ?・・・さっきのマジ?」

俺をずっと好きだったってセリフ

一護は冬獅郎の額に自分の額を合わせながら微笑んでいた。冬獅郎は小さく、だがハッキリと「お前が好きだ」と告げる

「・・・嬉しい」

一護が冬獅郎の後頭部に手を添える。ゆっくりと近づく一護に、冬獅郎は微笑みながら目を閉じる

人のぬくもりがこんなにあたたかいと感じたのはいつ以来だっただろう?
大好きだった祖母から離れ、死神になってからは誰と触れ合ってもこんな風に感じたことはなかった
きっと他の誰かでは駄目だったのだ
黒崎一護でなければ駄目だったのだ

抱きしめあって口付けを交わす
何度も、何度も交わした
そうしている内に、どちらからともなくベッドへと倒れこむ。冬獅郎に拒否するつもりは一切なかった


「すっげぇ・・・嬉しいんだけど、俺・・・」

誰ともこういった事をした事がないという一護の動きは、とてもたどたどしかった
それでも冬獅郎にはそれすら愛しいもので
時折労わる言葉を発するものの、舞い上がっているからか、言葉とは裏腹に激しく突き上げるその苦しみさえ、冬獅郎に喜びを与えた

「マジで嬉しい」

好きだ
嬉しい
夢みたいだ

一護はずっとそれを繰り返す
本当に嬉しそうに、微笑みながら

「ずっとずっと好きだった・・・・ずっとずっと、これからも好きでいる・・・約束する」

冬獅郎の顔中に口付けながら、一護が微笑みながら告げる
それを聞いた冬獅郎は、一瞬表情を曇らせる。だが次の瞬間にはそれを完全に消し、同じ様に微笑んだ

「・・・ああ・・・俺も、ずっとお前の事・・・」








「俺は・・・好きでいるから」

冬獅郎はベッドで眠る一護の傍に立ち、涙を流す

「お前は、もう俺を好きでなくていい」

冬獅郎は一護に口付けると、窓から外へ飛び降りた




夜が明ける前の薄暗い時間
冬獅郎ともう一人以外、外に出ていない
黒崎家の自宅前の道へ降り立った冬獅郎は、一度だけ先ほどまで自分がいた部屋を見上げる
「ごめんなさい」と一言こぼし、直ぐ傍にいる『ある人』の所へ向かった

「・・・本当にやるんですか?」

帽子に下駄のいつもの姿で浦原喜助が冬獅郎を待っていた
その傍にはなにやら大きな装置
冬獅郎は浦原に近づきながら「ああ」と短く返事をする

「黒崎さんは」
「アイツの事は問題ない。お前に教えられたとおりにしてきた」

冬獅郎は浦原に視線を合わせる事無く通り過ぎる。そして数歩進んだところで歩みを止めた

「・・・・良いんだ、これで」

冬獅郎の言葉に、浦原はため息をつく




頼みがある と冬獅郎が浦原を訪ねたのは藍染との決戦前
瀞霊廷から技術協力を求められ、その為の装置が完成し、ホッと一息ついていた時に彼はやって来た
冬獅郎が浦原に頼んだもの
それは黒崎一護の霊力を封印する方法を考えて欲しいという事
そして、一護を始めとした今回の事件に関わったもの全ての死神・人間の記憶の操作

『人は人として生きるべきだ・・・せめて生きている間くらいは』

藍染と戦う事、虚と戦う事
これは全て死神の仕事
いくら一護が死神の力を持っていたとしても、本来なら彼を巻き込むべきではない

『しかし、今となっては黒崎一護も大事な戦力。今更彼を戦いから外す事は出来ない。なら・・・』

戦いに勝利した後は、彼を本来あるべき状態へ戻してやるべきだ
冬獅郎はそう考え、浦原に依頼してきたのだ




「人は、いつか死にます」
「・・・」
「死ねばその魂は尸魂界へ行きます。そしたら貴方達の前にある壁はなくなります」

死神と人間
生者と死者
現世と尸魂界
一護と冬獅郎の間には決して越えてはならない壁があった
本来なら出会う事のなかった二人は、出会って恋に落ちた

「時間が経てば問題はなくなる。『こんな事』する必要なんてないでしょう?」
「・・・・」
「日番谷隊長」
「時間、か・・・・確かにそうだ」

一護が人としての時間を終えて尸魂界へ来たら、誰憚る事無く堂々と恋人として付き合えば良い
先ほどお互いの気持ちは確かめ合った
自分達は相手の気持ちを知らないでいたが、ずっと想いあってきた。そしてこれからも想いあうと約束したばかり

「でも、俺がいるせいで黒崎は他の誰とも恋愛しないでいるのか?普通の人間なら結婚して、子孫を残すものだろ?」
「ですが」
「俺がいるって?俺はアイツよりも歳をとる時間が緩やかだ。俺では一生アイツに釣り合わない」
「・・・」
「成長しない死神の俺よりも、共に時を歩める人間の方が、ずっとアイツの隣に相応しい」

何か言いたげな表情をしていた浦原は、もう一度溜息をついた

「・・・いつか全てを知ったら・・・」
「怨まれるだろうな」
「違いますよ・・・きっと彼は」

悲しみます

浦原の言葉に冬獅郎は何も答えなかった
振り向かず、一護の家にずっと背を向けたまま

「では・・・いきますよ」

浦原が装置のスイッチを入れる
冬獅郎はゆっくりと瞳を閉じた


「・・・さよなら・・・黒崎一護」

俺はずっとお前を好きでいる
お前と出会ってからの事
話した言葉
与えてくれたぬくもり
大切な気持ち
全部俺が覚えておくから
お前は俺を、全てを忘れて

そして人として幸せに生きて欲しい
死神も虚も、人間のお前には関係ないから
お前の生きる世界は俺が護るから

「どうか・・・しあわせに・・・」

幸せに生きて








****


九十年前の戦いで藍染を倒した者の名は不明
その後の調査でも、藍染がいったい誰と戦って破れたのか誰も見ていないし覚えていない
朽木ルキアの処刑騒動も、上司の浮竹や幼馴染の恋次らが実力行使で阻止した事になっている

誰も『オレンジ髪の死神代行』の事を覚えていない
覚えているのは・・・