「また、ここにいるんだ」




夏梨が声をかけた人物
それは昨日その正体を知った少年

彼はいつもと同じようにガードレールに座って夕日をながめていた




「懐かしいって言ったろ」
「・・・そうだったな」













『いつか帰る場所』
















苦笑すると夏梨も少年 冬獅郎の隣に座る
そして、同じように夕日を眺める


夏梨は眼前に広がる光景を素直に綺麗だと思った
夕日なんて何処で見ようと同じだろうと思っていたが
ここから見る風景は違うように感じる




冬獅郎はチラリと隣に座った少女を見る

一護の妹
流石は身内といった所だろうか
高い霊力
意志の強そうな眼

何より仲間想いだ




冬獅郎は再び視線を夕日へと向けた




『ここがこの街で一番高い所なんだ』




(ここに初めて来た日)




『すっげぇ見晴らし良いだろ?』




(あの時はお前が隣に居たんだっけな)














現世にやってきた冬獅郎
任務だと解ってはいたが、一護は喜んだ

そして『遊びに来たんじゃないって解ってるんだろうな』
と怒る冬獅郎の手を引っ張って町を歩いた

(最後には冬獅郎も観念したようで、大人しく一護に付き合ってくれていた)




空がオレンジ色に染まる頃

冬獅郎はある事を一護に尋ねた




『この町で一番空に近い所は何処だ?』 と
















そして案内された場所がここだった


自分で連れてきておいて、一護は目の前の風景に感動していた
まさかこんなに綺麗な空が見れるなんて と


『冬獅郎、また来ような。今度も二人っきりで』


あの日交わした約束を果たすことなく
一護は何処かへと姿を消した

それは強くなる為の行動

冬獅郎も強くなる為に修行をしている
一護の思いも解っている




(俺は毎日待ってるんだ)






















「ここは・・・夕日がみえねぇな」




他の誰にも聞こえないだろう小さな声で一護は呟く

ふぅと息を吐いてゆっくりと眼を閉じた
思い出すのは冬獅郎と見たあの夕日


一番空に近い場所は?
と聞かれ案内した場所

そこから見た風景


なんて綺麗なんだと感動した


もしかしたら、冬獅郎と一緒に見たからかもしれないが
今までで一番綺麗だと思った




そして、約束した
また二人でここに来ようと




その約束は、まだ果たされていない




「・・・必ず帰るから」




だから、あの場所で待っていて























「・・・待ってる・・・一護」
「え?」




隣に居る冬獅郎が何か呟いた
しかし、夕日を見ていた夏梨はその言葉をハッキリと聞くことが出来なかった




「?何か言った?」
「・・・別に」








待ってるから

一護が帰ってくる日を

ちゃんとこの場所で待っているから




一日でも早く


帰ってきて、一護




















ここは いつか帰る場所





















無理矢理一ヒツにしてみました
夏梨を出す意味は無かったような・・・
兄鰤で夏梨と冬獅郎が一緒にいたのが嬉しくてつい・・・


雛森とすごしたあの頃を思い出すからこの場所に来るのではなく
一護との約束の為に来ている冬獅郎君でした
「もしかしたら今日帰ってくるかも」とか思いながら