携帯サイトから持ってきました
なので妙な所で切れてたりしますが
その辺は触れないでください




















「本当にいいの?」

「ああ、でも必ず冬獅郎も連れてきてくれよな」



夕方、一護に頼まれて、隊長を連れて黒崎家へ向かった

うちの隊長は黒崎家の人間に気に入られたらしく、夕飯をご馳走したいと招待されたのだ。

もちろん、副官の私も



一護の家に行くと彼の妹が七夕用の短冊をくれた

願い事を書いて飾ってほしいらしい

そうか、今気が付いた

今日は七夕だったんだ



「う〜ん・・・」

一護の部屋で短冊を前に考える

長期休暇が欲しい、とか

給料あげろ、とか

普段ならいくらでも出てくる願い

でも、なんか違う気がする



チラっとそばにいる一護を見てみると、私と同じようにうーんと唸った後、さらさらっと書いてしまった

そして隊長はどうなんだろうとそちらを見ると

隊長は全く書く気が無いのか、一護から借りた現世の本を読んでいた



「隊長、願い事書かないんですか?」

隊長は顔も上げずに「ああ」と素っ気無く返事をした

「願い、叶うかもしれませんよ?」

そう言って隊長の短冊をひらひらと目の前で振ってみた



「叶うわけねぇ」

パタンと読んでいた本を閉じ、やっと顔をあげた

「織姫と彦星だったか?そいつら願いを叶えてくれる神様か?

知ってるだろ?神なんて居ない。だから願っても叶わない

つまり無意味、俺は書かない」

バッサリと切り捨てるように言われてしまった

どうしてそんな事を言うのだろう

悲しいな





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「冬獅郎、あのよ・・・」

隊長と私のやり取りを黙って見ていた一護が話しかけてきた



「確かに、こんな紙切れに願い事を書いたからって、叶うわけがねぇって俺もおもうぞ」

一護は隊長の前に座った

そして自分の書いた短冊をじっと見る

「きっと、これは誰かに願いを叶えてもらう為に書いてるんじゃねぇよ」

目線を隊長に合わせてニッと笑った

「自分の夢や希望を書いて、よっしゃ!頑張るぞ!って気合入れるために皆書いてんだよ」

そう思わねぇ?と再度笑った一護



そうか、そうかも知れない

そう思ったら、ようやく書くことが決まった

隊長は・・・あらぁ、鳩が豆鉄砲くらった顔って言うのかしら、変な顔してる



「冬獅郎?・・・どうしたんだ?俺、変なこと言ったか?」

固まってしまった隊長をまえにオロオロしてる一護

隊長もだけどそんな一護もおかしくて、可愛い

「乱菊さん?」

クスクス笑っていると隊長に睨まれちゃった

別に怖くもなんともないけれど

「何でもないわ。さ、一護、書けたならコレ付けに行きましょ」

一護を促して部屋を出て行く



早く一人にしてあげないと

でなきゃ、きっと書かないだろうから

「手間のかかるコよねぇ」





その後、夕飯を食べる前に、なるべく目立たないところに短冊をつるす隊長がいた事を私は知っている





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「願い事は何ですか?」

黒崎家からの帰り道、隊長に聞きたかった事を聞いてみた



「知らん」

素っ気無い答え

でも・・・あらあら、耳が真っ赤だわ

隊長ったらそんな恥ずかしい願い事を書いたのかしら?

「もったいぶらないで教えてくださいよ」

「忘れた!知らん!!」

さらに真っ赤になっちゃって、可愛い〜

ちょっとくらい盗み見しておけば良かったかしら



そんな事をしたら、拗ねちゃって後が大変なのを解ってたから見なかったんだけど

変な気遣いするんじゃなかったかな



「そう言うお前はどうなんだよ?」

「私ですか?私の願い、聞きたいですか?」

是非聞いてください、と笑顔で言うと

どうせ給料上げろ、だろ?と随分と失礼な事をいうじゃないこのコ



「私の願いが叶うかどうかは、隊長にかかってるんです」

「は?俺?」

そう私の願い、それはきっとこのコが隊長になってからずっとあった願いかもしれない



『隊長の笑顔がたっくさん見れますように』



「俺の?」

「ええ、隊長の」



子供だから、なめられない様に、自分のせいで十番隊員が馬鹿にされないように、と常に気をはってて、常に眉を寄せて不機嫌そうな表情のこのコ

時々見せてくれるようになった笑った顔

それをもっと見たい

もっと歳相応の表情をしてほしい

それが私の願い



「だからたーくさん笑ってくださいね?」

「・・・変な願い事」

「ひどーい!その眉間の皺が取れるようにと思ってのことなのに!上司思いの良い部下じゃないですか!」

「良い部下なら書類溜めるな、逃げ出すな」

「・・・」

クソ!この餓鬼め!

この乱菊さんによくも・・・!

こうなったらおもいっっっっきり笑わせてやる!

覚悟しろ!








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