「おーい、一護起きろぉ」
「起きろって・・・起きないと『一護は変態です』って言いながら歩くぞ」
俺 黒崎一護 を脅迫するように起こすのは 日番谷冬獅郎
全長 13.3cmの自称「天使」
銀髪で碧の眼
黒い着物に白い羽織
背中には白い羽・・・ではなくて氷の翼
彼は俺の部屋に居候している
その割りに態度はでかい
「やっと起きたのか・・・下で妹どもが飯だと呼んでるぞ」
まだぼぉっとしている俺を冬獅郎は
ベシベシと俺の頬を叩いて覚醒を促す
こいつと出会ったのは一週間前
帰宅途中の俺の頭の上に降ってきた
最初は子供が人形を落としたのかと思い
辺りをキョロキョロしてみたが、それらしき子供はいない
一体どこから・・・
と考えているとその人形が動いた!
最近の玩具はよく出来ている
それが最初に思ったこと
次にコイツが眼を開けた
その時には スゲェ!生きてるみたいだ
と思わず声に出して言った
すると
「生きてんだよ!このバカヤロウ!!」
と叫ばれた
「聞いて驚け 俺は『天使』だ」
天使だと名乗った人形はふよふよと俺を見下ろせる高さまで浮かび上がる
後に聞いた所によると
「見下ろされるのは好きじゃねぇ」
なのだそうだ
「・・・お前、ちょっとは『え〜嘘ぉ?ホントぉ?』とか言えねぇの?」
天使・・・かどうかは解らないが、こんなに小さくて空に浮いてる時点で
普通の生き物ではないことは確か
あまり表情に出ていないだけで、十分驚いてはいたんだが・・・
「つまらねぇ」
コイツには物足りなかったようで・・・
「兎に角!今回、下界に落ちてきちまったのは不可抗力だ
つーわけで、俺は今から帰るから
お前は今日の事は忘れろよ」
そうか
帰るのか
つーか
落ちたって何してたんだ?
俺の疑問に一瞬コイツは顰め面したものの
ちゃんと説明してくれた
意外と良いヤツなのかも
名前は日番谷冬獅郎
水と氷を司る天使
だから氷の翼なんだ・・・と納得
この空の向こう
人間では決してたどり着く事の無い場所に
天使達の住む世界がある
かつてはもっと近かった
天使達は頻繁に下界(俺達の世界)にやって来ていたし
人間は天使達とも交流があった
けれど人間が下界を自分達の住みよい世界に変えて行く為
自然を壊し始めた時から天使達は下界には来なくなった
いや
行けなくなったのだ
例えば冬獅郎
水と氷の天使なので、そのエネルギーは綺麗な水
しかし今の下界には冬獅郎のエネルギーとなる『水』が無い
ミネラルウォーターではどうかと聞くと「無いよりマシ」と答えた
つまり下界では冬獅郎は暮らしていけない
だから下界には来ない
来れない
それを聞いて俺はショックを受けた
俺達が住みやすくする為にしたこと
それが冬獅郎達 天使との距離をあけることになるなんて
どうしたら良い?
どうすれば天使達はまた下界に来てくれるようになる?
冬獅郎は悲しそうに笑って
お前みたいにどうすれば良い?と考える人間がもっともっと増えればいつかは
と言った
「お前・・良いヤツだな」
まだこんな人間がいたんだな
という冬獅郎の言葉はキツかった
天使達には俺達人間は、全員世界を壊す存在に見えているのだから・・・
「んな辛そうな顔すんじゃねぇよ・・・・」
冬獅郎は俺の頭を撫でてくれた
まぁ冬獅郎が小さいから、撫でられているという感覚はあまりないんだが・・・
でも、気持ちがなぜか軽くなる
「最後に、俺からの贈り物だぜ」
冬獅郎は俺の額にキスをした(多分・・・)
ぼぉっとしている俺に「幸運をプレゼントしてやったぜ」と笑った
「それじゃ・・・またな」
すっと俺から離れた冬獅郎はゆっくりと眼を閉じた
するとその体が白く輝く
俺は眼を開けていられなくて閉じる
ああ
帰っちまうのか・・・
少し残念に思いながらも
その方が冬獅郎の為なんだ
と諦めた
光りが収まった後
何事も無かったかのようないつもの風景が・・・・・
「どういうことだ!?」
冬獅郎が真っ青な顔をしてまだそこにいた
てっきり今ので帰っちまったんだと思っていたんだが・・・
冬獅郎もどうしてと頭を抱えている
「・・・力が足りないのかも・・・」
「どうしよう・・・・帰れない・・・・」
さて
どうしましょう?
続