7/15
それは俺の誕生日



母親が死ぬまでは毎年必ず手作りのケーキがあった


洒落のつもりか・・・・?
と聞きたくなる『苺のケーキ』


これでもか
というほど飾られた苺のせいで、全体のバランスが取れてなくて
かっこ悪いケーキ




でもそれはどんな有名店のケーキよりも美味かった








妹達は成長し
毎年ケーキを作ってくれる

きっと当時撮られた写真を見たのだろう


母親が作っていたのと同じ
苺であふれたケーキ




美味しい




でも・・・
かあさんのとは・・・・


どこか違う・・・































「いたのか?」














学校から帰ると、台所が随分と騒がしかった

耳を澄まさなくても聞こえる
妹二人と居候の天使




妹はともかく、冬獅郎が台所とは珍しい


あの天使は居候の癖に『手伝う』という言葉を知らなさ過ぎる
まぁ・・・あのちっこいのが手伝ってもあまり役にたたないだろうが
大抵、俺の側にいるか、親父とテレビを見てるか
どちらかだ


勿論、食事の手伝いなんてしたことない




何をやっているんだか・・・


俺は台所へと向かった




そして俺を見つけた冬獅郎の言葉が「いたのか?」だった




通常ならば「居て悪かったな」と言ってやる所だが
冬獅郎の格好を見て言う気が失せた・・・


ただでさえ白い冬獅郎は
体に白い物をあちこちにつけていた


良く見るとテーブルの上も冬獅郎の体についている物と同じ物が
飛び散っている




一体何が・・・?




妹に訳を聞こうとそちらに眼をやると
生クリーム・・・だろうか
白いクリームとそれに埋められている大量の苺




「今日、お前の誕生日なんだろ?」




ニコニコと冬獅郎は楽しそうにその白いものを指した




「お祝いのけぇきだぜ」




ケーキ?

にしては・・・スポンジ部分はどこへ?
俺にはただ、クリームと苺を混ぜただけのように見えるんだが?



「お兄ちゃん・・・スポンジも冬獅郎君が作ったからね・・・その・・・」




膨らまなかった・・と
で、作り直す事もせずにそのままデコレーションをした
しかも生クリームを大量に作って全部それに塗って苺をありったけ
乗せて・・・・




「一護一護」




ぱたぱた と冬獅郎は俺の目線まで浮かびあがる




「誕生日、おめでとう」






ニッコリと笑う冬獅郎
俺は思わず「ありがとう」と笑顔で礼を言った















7/15
それは俺の誕生日



母親が死ぬまでは毎年あった手作りのケーキ


妹達が大きくなってからは彼女達が作ってくれていた手作りのケーキ


そして


今年は天使が作った苺のケーキ




母親や妹達のと違って

ケーキといえないケーキ



それを俺は天使と分け合って食べる









似ても似つかない味のはずの
そのケーキ


不思議と




母さんのケーキを思い出した俺だった