舞台裏 その壱







「・・・・全く、使えませんねぇ浮竹隊長」
「・・・申し訳ありません・・・・」





日番谷が浮竹の所から帰った後、一番隊に集合した
三番、十番を除いた隊長達

先ほどの浮竹の演技についての反省会と今後の対策が練られていた




「これで日番谷君が僕に断ってきたらこの計画はおしまいだよ?」
「・・・ハイ・・・」
「普段頼ってこない子供が頼ってきたからと言って調子に乗りすぎ」
「・・・ハイ・・・」
「と言うか、一人で良い格好するな
貴様、本気で父親のつもりで話をしていただろう」
「・・・ハイ・・・ってか、砕蜂!」
「なんだ?」
「畳の下から本気でお尻刺しただろう?」




マジ痛かったんだぞ!
と涙目で訴えるがあっさりと無視され
落ち込む浮竹だった






「よしよし、浮竹」
「きょうらく〜」




親友の頭を撫でながら京楽が「これからどうしようか?」とボス・卯ノ花に尋ねる





「そうですね、恐らく日番谷隊長は市丸隊長に告白なさるはずです」
「・・・どうしてそう思うの?そのまま藍染隊長に断って終り
かもよ?」




一同の目が一斉に卯ノ花に集まる




「ホホホ・・・・」
「「「(怖っ!)」」」




急に笑い出した卯ノ花
その微笑みは聖母の微笑ではなく
悪魔の微笑だった




「我が四番隊は皆様のお体を預かる隊
皆様の事は何でも知っているのですよ
健康状態だけでなく、精神状態や毎日の習慣ですら調べ上げでおりますの
・・・・他人には言えない秘密でさえも・・・ね」
「・・・・へ・・・へぇ〜」




「そこから導き出した答えは『市丸隊長に告白する』でしたのよ」
「そ・・・そうなんだぁ・・・」
「「「・・・・・」」」





自分達はどんな秘密を握られているのだろう

卯ノ花と四番隊にだけは逆らわないでおこう
そう心に決めた隊長達であった・・・






















その弐






「市丸が松本と吉良を引き込んだようだぞ」




砕蜂のもたらした情報に一同は見合うとニヤリと笑った




「やっと市丸も覚悟を決めたようだねぇ」
「本当にやっとですわねぇ・・・・おせぇんだよ、ボケが・・・」
「・・・卯ノ花隊長?・・・・(空耳であってほしい)」




ここ最近、徹底して市丸を日番谷が避けている為
隊長達は気が気でなかったのだ
このまま日番谷が市丸を諦めてしまったらどうしようか





「それにしても、藍染が冬獅郎を構いすぎってのもあるんじゃないのか?」
「そう?一応恋人なんだから当然じゃないかな?」
「しかし兄がもっと日番谷から離れていれば、市丸も日番谷に話しかけやすいのでは?」
「「・・・藍染?」」




じっと見つめられた藍染はニコリと笑った




「最後には市丸に取られるんだし、ちょっとくらい良い思いさせてくれても良いんじゃない?」
「「「・・・・」」」
「役得、役得」









その後、「抱くのはまずいかなぁ」ともらした為
危うく卯ノ花に不能にされる薬を盛られる所だった藍染・・・




流石の卯ノ花も日番谷をそんな目に遭わせたくはなかったようです






















その参









「向こうの計画実行日は・・・僕が尸魂界にいない日だね」
「まぁ、当然でしょ」




恐らくその日が彼らにとっても、自分達にとっても決戦の日!




「ってか、もう殆ど両思いなんだし
放っておいても大丈夫なんじゃないか?」
「お馬鹿さんですねぇ」




浮竹の意見をバッサリ切ってしまう卯ノ花
ニコリを微笑まれて、数歩下がる




「えっとぉ・・・」




まだ何かやるつりなのか?といい加減日番谷たちが可哀相になってきた浮竹




「この『私』がまだ何もしてないではありませんか!?」
「へ?」
「私が二人を恋人同士にしたい と言ったのにもかかわらず
まだ一度も何もしてません!」




それを言うなら東仙も狛村も何もしてませんよ
と言いたかったが、命が惜しいのでなにも言わなかった




「そうそう、僕と卯ノ花隊長が日番谷君に大ダメージを与える最高の舞台なんだよ
これが楽しみでこの数ヶ月頑張ってきたのに、ここで止めるなんて勿体無い」
「楽しみですわね」
「全く」




((((うわー、あいつ等気の毒))))




藍染と卯ノ花


最凶最悪のコンビが日番谷たちに襲い掛かろうとしていた


















その四












「そう言えば何で藍染隊長は尸魂界にいたんですかね?」




晴れて恋人同士となった三番隊の隊長と十番隊の隊長が
お昼休憩という名のデートに出かけた後、三番隊副隊長の吉良は
十番隊副隊長 松本の所に遊びに来ていた


日番谷に『仕事をサボるような奴とは一緒にいたくない』と言われたらしい市丸は
それはそれはもの凄い勢いで毎日仕事を片付けていた

日番谷も、その処理速度は護廷一、二を争う早さだが
市丸はもしかすると日番谷よりも早いのではないだろうか
と吉良が思うくらいのスピードで書類を仕上げていた


今までとは比べ物にならない位の早さで仕事が片付いていくのを見て
吉良は日番谷に心から感謝した


『貴方は三番隊の救世主です』と






話は戻って、





そう、自分達は藍染が任務で尸魂界にいない日を狙って行動をおこした
なのに何故尸魂界にいたのか・・・




「・・・・どうやら修兵と射場さんを代わりに行かせたらしいわ」
「そ・・・そんな事して良いんですか?」




いくら副隊長が二人いたとしても
隊長と副隊長とではやはり力に差がある
そして、何よりも『隊長がいてくれる』だけで隊員の士気も違ってくる




「死人は出なかったみたいだけど、散々だったらしいわ」
「でしょうねぇ・・・・」




五番隊隊士の方々
お気の毒でした




と吉良は心の中で合掌した






「・・・にしても、どこから情報が漏れたんだろう?」














その伍













「今回は貴方にもお世話になりました」




ニッコリと笑った卯ノ花は目の前の人物にお茶を差し出した




「お陰で良い映像が撮れ・・・いえいえ、お二人が仲の良い恋人同士になれました」




卯ノ花も一口お茶を口にする

いくら隊長達全員で二人をくっつけようとしても、流石に彼らの行動全てを把握する事は出来ない
一応隊長である為、それぞれがそれなりに忙しいのだ


そこで、市丸が吉良達を仲間に引き入れたように、卯ノ花もまた隊長以外の人物を仲間にしていた




「いえいえ、お陰で私も楽しめましたからVv」




うふふ と卯ノ花と笑いあったのは松本乱菊

彼女は市丸の協力者でもありながら、卯ノ花たちのスパイでもあったのだ




「藍染隊長のいない日を狙って行動されると聞いた時はどうしようかと思いましたわ」
「五番隊の任務、修兵と射場さんだけで足りて良かったですねぇ」
「ええ、本当に」









ニコニコと笑う二人によって、今回の記録が闇ルートで売られるようになるのはこの数ヵ月後の事である

























騒動終わって 夜も更けて















「やっと、落ち着いた」
「せやねぇ」




日番谷に市丸が告白している間
隊長達に身柄を拘束された松本と吉良に事情を説明した二人は
「手伝ったんだから、どんな風に告白されてどんな風に答えたのか教えてくださいよ!」
としつこい松本からやっと逃げられ、市丸の自室で休んでいた


なんやかんやと、もうあと少しで夜が明ける




「徹夜かよ・・・」
「君は非番なんやろ?
ボク、通常勤務なんよ〜」




嫌やぁ と言いながら日番谷の膝の上に頭を乗せる市丸
「こら!」と怒りながらも日番谷はそのままに市丸の髪を撫でる






大変だったけど、結果として幸せになった
なんて事をしてくれたんだと思ったけど、今となっては感謝しなければならないだろう

日番谷は他の同僚達を思い出して微笑んだ








「なぁ?」
「ん?」




市丸は日番谷の髪を撫でていない方の手を取り、口付ける




「な・・・なにすんだよ、恥ずかしい奴」
「ええやん
それよりもな」
「うん」









「いつからボクの事好きやったの?」






「・・・・・」








ボカッ!







「いったー!何すんねん、コラ!!」




日番谷は思い切り市丸の頭を殴ると
ぷりぷり怒りながら市丸の部屋を出て行く




「うっせぇ!
てめぇなんか!てめぇなんか!!」
「な・・・何?」








「大ッキライだ!!!」







夜明け前の三番隊宿舎に日番谷の怒鳴り声が響いた




翌日、市丸の元へたくさんの苦情が寄せられたという





「なんでな〜ん??」

















「あらあら・・・また私たち出番でしょうか?」
「次はどんな手で遊ぶのが良いですかね?」




四番隊隊長と五番隊隊長が怪しい笑みを浮かべながらお茶を飲んでいたところが
多数目撃されたという・・・













その後、日番谷に平謝りした市丸は当時の話を日番谷にされてやっと思い出し
周りが多少ひやかしても動じないバカップルになりました