七月十五日
PM10:52
「「「お邪魔しましたv」」」
黒崎家の玄関でニッコリと笑顔で挨拶をするのは
乱菊・織姫・たつきの三人
今日は一護の誕生日
高校生にもなってどうかとは思うが
家族と彼女達が中心になってお祝いをしてくれた
勿論、いつもの男どもも入れたメンバーでだ
お祝い
とは名目でただ騒ぎたかったのだろう
最初に「おめでとう」と言いながらの乾杯はあったものの
やれ「酒がない」だの「おつまみ買ってきて」だのと
主役であるはずの一護が一番コキ使われていた
「おう、今日はありがとうな」
男たちは先に帰ってしまっており、残っていたのはこの三人だけだった
「いーのいーの、私たちも楽しんだし」
「楽しかったね、たつきちゃん」
「こんなに遅くまで悪かったね、一護」
本当に・・・と一護は笑う
楽しい夜だった
「ああ・・・でも・・・」
ふと織姫が残念そうな表情をとる
「冬獅郎君・・・来れなくて残念だったね」
「・・・そう・・・だな」
一護は無意識に空へと眼とやった
日番谷冬獅郎
という名の恋人の姿を思い浮かべる
彼も最初は参加予定だったのだが
急遽、二日前に尸魂界へと戻ってしまったのだ
「やっぱり私が行くんだったわね・・・・ごめんね」
十番隊は、隊長・副隊長が揃って現世に来ている
その為、隊の指揮は三席が中心となって行っているのだが
先日、流魂街で大虚が出現
何人かの負傷者が出てしまい、その後始末に冬獅郎が呼ばれたのだ
別に戻るのは乱菊でも問題はなかったのだが
冬獅郎は「俺が行く」といって聞かなかった
一護も冬獅郎がどれだけ十番隊を大切にし
その隊長という席に誇りを持っているのか知っていたので
なにも言わず見送ったのだ
「謝らなくて良いですよ。
別に今日でなくてもアイツからちゃんと別の日に祝ってもらいますから」
PM11:30
「とは言ったものの・・・」
と、一護はベットに仰向けに倒れこむ
本当は一番最初に「誕生日おめでとう」と言ってもらいたかった
誰にも邪魔されず
二人だけで一日を過ごしたかった
「今更グチっても仕方ないか・・・・」
もう一護の誕生日は後30分
出来ることならその日のうちに「おめでとう」と言ってもらいたかったが
無理だろう
もともといつ帰ってくるとも聞いてはいない
一護の誕生日には間に合わせると言っていた
と聞いていたのだが
昼間、乱菊が申し訳なさそうに「間に合いそうにない」と連絡があったと伝えてきた
冬獅郎がそう言ったのだから、本当に間に合わなかったのだろう
でも
もしかしたら
もしかしたら間に合うかもしれない
遅れてすまない
と現れるかもしれない
乱菊たちが帰るまでずっとそう期待していたのだ
「・・・・・冬獅郎・・・・」
俺の誕生日
終わっちまうよ?
「呼んだか?」
PM11:50
それは聞きたいと思っていた声
会いたいと思っていた人物
「と、冬獅郎!!?」
「おう、ただいま一護」
邪魔するぞ
と窓から入ってくる冬獅郎を一護は眼を丸くして見ていた
冬獅郎は死神の姿をしており、義骸ではなかった
恐らく、尸魂界からそのまま一護の所へやってきたのだろう
冬獅郎は一護の寝転んでいるベットに腰かけてニコリと笑った
「?・・・なんだよ?」
「俺が声をかける前、何考えてたんだ?」
何を考えていたか?
冬獅郎が帰ってくる前
一護が考えていたのは
冬獅郎の事
もしかしたら帰ってくるかもしれない
帰ってきて「おめでとう」といってほしい
「・・・・・言わなきゃ解らないか?」
「いや、言わなくても・・・・知ってる」
だったら
言って
だから
言わせて
PM11:59
「誕生日おめでとう、一護」
