「このワシ自ら引導を渡してやろう」
俺はじーさんを睨みつけたまま、冬獅郎を抱き寄せる
絶対に離れないように



「・・・と、本来なら言う所なのじゃが・・・」
「あ?」
じーさんは、長い髭をさすりながら笑っていた
「人間の一生などワシらからすれば僅かな間の事じゃ。お主が現世での時間を終え、尸魂界に来れば何の問題もなくなるではないか」
「はぁ・・・」
人間の一生って俺からすれば結構な時間なんだけど・・・
「総隊長・・・」
「驚かせて悪かったの。どれだけお主達が本気なのか知りたかったのじゃ」
俺たちの目の前までやってきていたじーさんは冬獅郎の頭を撫でながら優しく話していた
その姿は祖父と孫のようだった
「良い相手を見つけたようじゃな、日番谷」
「・・・はい。」
本当に嬉しそうに笑う冬獅郎
こんな笑顔は俺も初めて見た
「さて。お主、日番谷を休ませるのではなかったのか?」
「あ」
そうだ。一番の目的はそれだった
じーさんが呆れたように息をはいた
「さっさと連れて行ってやれ」
「さんきゅ!」
冬獅郎を抱き上げて俺はその場を後にした





「一護、ごめんな」
「ん?」
冬獅郎は部屋で横になるとすぐに謝ってきた
「昨日、心配してくれてたのに・・・俺」
ああ、そのことか
「いや、良いんだ。気にしてねぇよ」
「実は・・・折角同じ日に休みだったのに駄目にしちまっただろ?だから・・・」
冬獅郎があんなにも必死に仕事をやっていたのは敬老の日の為だけではなかった
九月にはもう一回連休が存在する
秋分の日
冬獅郎はその日こそ、俺とゆっくり一緒にいるつもりだったらしい
「・・・俺の勝手で仕事を休むんだから、他の誰かにやってもらう訳にはいかなかったんだ・・・」
俺の為に頑張ってくれてたんだ・・・

「ありがとうな、だけどそれで体調を崩したんじゃ嬉しくないぞ」
「ん・・・ごめん」
冬獅郎に添い寝するように横になり、頭をなでてやる
すると気持ち良さそうに眼を閉じた
「もう謝らなくていいよ。だからちょっと寝ろ」
俺が言わなくてももう眠そうだけど・・・
「ぅん・・・一護・・」
「なんだ?」
冬獅郎はきゅっと俺の服を掴んだ
「側に居てね」
「・・・ああ、ずっといるよ」

そして冬獅郎は眠りの世界に落ちていった








「でな、十番隊のヤツらに『お土産りすと』ってのを渡されたんだ」
九月二十三日 秋分の日
冬獅郎は今度こそ本当の連休を利用して俺の所に遊びに来ていた

あの敬老の日の後、調子の良くなった冬獅郎は、乱菊さんを筆頭に十番隊上位席官達からお説教されたらしい
その剣幕に圧倒されたのか、冬獅郎は部下を頼る事を覚えたようだ
やって来た時も今日までに仕上がらなかった分を任せてきているのだと言っていた
その見返りが『お土産』のようだが・・・

「ふ〜ん、どれどれ・・・結構量あるな。持って帰れるのか?」
「あ。一護に持ってもらえと言われた」
あ、そう
「・・・じゃあ、土産は明日買うとして、今日はどこに行きたい?」
「えーっとな・・うーんと・・・」

きっと俺たちはこれからも小さい事で悩んだり、つまらない事で喧嘩したり立ち止まったりするだろう
だけど、俺たちはそれを乗り越えていけると思う
だって俺たちにはお互いや、俺たちを見守ってくれている皆がいるから


「一護。ここ行こう」
「おう、行くか冬獅郎」