「・・・・恋人だ」
「何じゃと?」
俺の言葉を聞いて冬獅郎が息をのんだ
「俺は冬獅郎の恋人だっつってんだ!」
大きな眼を更に大きく見開いて俺を見上げている
「好きなヤツの心配して何が悪い!」

「心配する事は悪い事ではない」
「・・・」
そうか、恋人か・・・とじーさんはブツブツ呟いた
小さく「困ったのぅ」と言ったのが聞こえた
「その関係がどういうことになるのか、考えた事は?」
「・・・俺たちは住む世界が違う」
「そうじゃな」
「俺は人間で、冬獅郎は死神で・・・」
「そうじゃ、お主達は本来出会うべき存在同士では無いのじゃ」

出会うべき存在ではない
じーさんに言われて、一角に励まされ不安を吹っ飛ばしたはずなのに、その事が再び心にのしかかった
「もし日番谷が現世で暮らしたいと言ったら?」
「現世で・・・」
「日番谷は死神で、確かに義骸等を使えば普通に生活できるじゃろう。だが、流魂街出身であるアヤツは死者なのじゃ。現世は生者の世界、死者はそこに戻る事は出来ぬ」
「・・・」
「したがって、お主達の仲は認められぬ」
つまり、別れろと
何も無かった事にしろって事?

そんなの
出来るはずないだろ

「嫌だ」
「嫌とな?」
ああ、そうだ
一角と話した時と答えは同じ
冬獅郎と誰が別れるか!
「誰が反対しても俺は冬獅郎と別れたりしねぇ」
「そうか・・・」
じーさんの眼が冷たく光った
「ならば、ワシは日番谷を罰し、お主を尸魂界を乱す者として討たねばならぬ」
「!待ってください!!」
それまで一言も喋らなかった冬獅郎が庇うように俺の前に出た
「なんじゃ?」
「一・・黒崎は何も悪くありません。全て俺の罪です」
だから罰するなら自分を
何を言ってるんだコイツは
「馬鹿言ってんじゃねぇ!どっちが悪い悪くないって問題か!」
冬獅郎の肩を掴みこちらへ向けさせる
その眼からは涙が流れていた
「・・・だって、俺のせいだ。俺がお前を好きになったから・・・だからこんな事に・・・」
「冬獅郎・・・」
「どうしてお前に会ってしまったんだろう」
震える小さな体を抱きしめる

出会わなければ良かったのだろうか
好きにならなければ良かったのか
お互いの立場を考えて気持ちを伝えなければ良かったのか
そうすればこんな事にはならなかっただろう
だけど・・・

「俺たちは出会ってこうなっちまった。それはもうどうにもならねぇし、今更無かった事になんてできねぇ」
冬獅郎はゆっくりと顔を上げる
「世界の誰もが俺たちを認めないというなら、それでも良い。誰か、なんて関係ねぇ、問題は俺たちがどうなのかだろ?」
「・・・どうなのかって?」
不安でいっぱいいっぱいの冬獅郎に出来るだけ優しく微笑む
「今まで自分の周りに居た奴等暮らしてた世界、それを全部捨ててでも俺と一緒に居てくれるか?」
眼を見開いた冬獅郎だったが、すぐにその表情は笑みにかわる
そしてコクリと頷いた

「さて、話は纏まったようじゃな?」
「ああ。待たせたな」
冬獅郎を下がらせて、俺は一歩前へ出た
じーさんを見据える
「俺たちは別れたりしねぇ。誰がなんと言おうとも」
「そうか・・・残念じゃ」
じーさんはゆっくりと立ち上がり俺たちに近づいてくる
「ならば、このワシ自ら引導を渡してやろう・・・」