モドル

● 繋がる指先 --- 3 ●


あの後
一護にも退院許可が出て、そのまま織姫たちが泊まっているという十一番隊へと向かった

十一番隊の隣は十番隊なので日番谷の様子を見ようと思ったのだが、卯ノ花の言葉が頭から離れず、寄る事が出来なかった





「私たちでは止める事が出来ないんです・・・か」

それから更に二日が経った

十一番隊の一室で、日番谷の姿と卯ノ花の言葉を思い出し一護はため息をはいた

「どういう意味なんだ?」

はぁ・・・ともう一度ため息をはく

「訳わかんねぇ」
「わかんねぇのは俺のほうだ」
「ぅわ!」

まさか誰か居るとは思っていなかった一護だったので、自分以外の声がして酷く驚いた

「剣八!?」
「あたしも〜」
「やちる?」

十一番隊の隊長、副隊長が背後に立っていた

退院してからというもの「勝負だ!」と追い掛け回されていた一護は逃げる体制をとる

「てめぇがその気じゃねぇのに戦えれるか」

逃げるんじゃねぇよ、と剣八はやちるとともに一護の隣に座った

「んで、何がわかんねぇんだ?」
「え?」
「情けねぇ顔しやがって。何があってそんな顔になるんだよ?」
「・・・」

一護はすっと十番隊の隊舎を指差した

「十番隊?」
「あそこの隊長が無茶するのを、卯ノ花さんや松本さん、ここの死神全員が止めれないって・・・何でだ?」
「・・・日番谷か・・・」

剣八は数秒黙った後「アイツは馬鹿だからな」と言った

「?」
「頭良いのに馬鹿なんだよ。頑固だし」
「・・・それ答えになってんのか?」
「それにアホだ。つまらない事考えちまって身動き取れなくなっちまってる」
「つまらない事?」
「ひっつんもアタシみたいにやれば良いのにね〜」

やちるは剣八のひざに乗り、背もたれ代わりに座っていた

「アイツがやちるみたいになったら十番隊は壊滅だな」
「どーゆーいみ〜?」
「そのまんまだ」

剣八はやちるの頭をぐりぐりと無骨な手で撫でてやっていた
やちるも文句を言いながら、その表情は喜んでいた

「とにかく、俺たちが日番谷に何か言う方が逆効果なんだよ」
「でも誰かが止めてやらないと、倒れちまうんじゃないのか?」
「・・・さっき倒れたって騒ぎになった」
「は!?」

一護は口を開けて剣八を見る

「執務室で寝てるって話だ。いってみたら「じゃあな!」」

剣八が言い終わる前に一護は飛び出して行ってしまった
それを見送った剣八は「上手くいけば上手くかもしれないな」と呟いた

「上手くいくんじゃない?」

剣八の言葉を聞いてやちるが答える

「そう思うか?」
「だっていっちーはここの人じゃないでしょ?」
「・・・そうだな」








「冬獅郎!」
「うるさい!」

思い切り叫んで、力いっぱい襖を開けた一護に対し
松本は更に大きな声で叫んだ

「す・・・すみません・・・副隊長〜」
「すみませ〜ん」「ませーん」「ごめんなさい〜」
「あら?」
「あれ?」

一護の背中には数人の十番隊隊員の姿が

「何とか止めようとしたんですけど」
「止められませんでした〜」

なさけない隊員達の姿に松本は眩暈を覚えながら、彼らに職務に戻るように命令した

「すんません・・・」
「良いの。起きなかったから」

松本はソファで眠る日番谷の額の手ぬぐいを水に浸し、再びのせる

「熱・・・あるんスか?」
「ちょっとね」

それで?と松本は一護に向き直る

「あ・・・冬獅郎が倒れたって聞いて・・・それで・・・その」
「お見舞いに来てくれたの?」
「あ・・ハイ」

礼を言いながら松本は悲しそうな表情をした

「きっと『なぜ止めなかったのか』って言いたいんでしょ?」
「え・・・っとぉ」
「駄目なのよ」

松本の表情があの時の卯ノ花と重なってしまう

「俺・・・知りたい・・・どうして冬獅郎を止めれないんですか?」








私たちでは止める事が出来ないんです

俺たちが日番谷に何か言う方が逆効果なんだよ

駄目なのよ


(なんで止めれないんだ?
なんで逆効果なんだ?
何が駄目なんだ?)


それが知りたいと思った



ススム