モドルススム

● 繋がる指先 --- 2 ●

「おはようございます、一護さん」
「んぁ?」

翌朝
一護は花太郎の声で間を覚ました
ぼーっとしながら上体を起こす

「日番谷隊長、おはようございます」
「・・・ああ」

『日番谷』という名前にピクっと反応し、声のした方向を見る

一護の様に体を起こしてはいないが、花太郎としっかりと会話をする日番谷の姿が
夢じゃなかった、と一護は昨日の怒りを忘れて自然と笑っていた

「解りました。お呼びします」
「頼む」

誰かを呼ぶように頼まれたらしい花太郎が部屋を後にする
それを一護は眼で追い、視線を日番谷に戻した所で眼が合った

「!・・・オス!」
「・・・お前が・・・オレンジ髪の旅禍なんだって?」

一護が笑顔で手を上げて挨拶したのに対し、日番谷は一護を睨みつけていた

「旅禍ってのはヤメロ!俺は黒崎一護って名前がある」
「・・・」
「ま、色々言いたいこともあるだろうけど、とりあえず『おはよう』」
「・・・」

黙ったままの日番谷に一護は少しだけムっとした

「朝の挨拶はちゃんとしろよ。人として当たり前の事だろ」
「・・・」
「ほら、『おはよう』」
「・・・はよ・・・」

小さな声だったが日番谷からの挨拶が聞けたので、一護は満足し再び笑顔になる
そんなコロコロ表情の変わる一護に日番谷は「変なヤツ」と先程より小さな声で呟いた








「もう!あまり心配させないでくださいね」

数分後、慌てた様子で部屋に飛び込んできたのは松本で
日番谷が目覚めているのを確認すると、ふぅっと大きく息を吐いた後、嬉しそうに笑った

そして先ほどの言葉を日番谷にむけて言った

「聞いてます?」
「聞いてる。それより、どうなってる?うちの隊の奴等は?」
「皆、泣いてますよ〜『隊長が怪我した〜』って」
「・・・馬鹿言ってんじゃねぇよ」
「これは大マジです。十番隊は別名『日番谷親衛隊』ですから」
「・・・十番隊は馬鹿ばっかりか・・・」

特にする事が無い一護は、聞かれてマズイ話なら自分の前ではしないだろうと考え、なんとなく二人の会話を聞いていた

それに先に気がついたのは松本だった

「黒崎?どうかしたの?」
「え?いやぁ暇だからつい・・・駄目でした?」
「別にかまわないわよ」
「・・・日番谷は人気あるんスね」

松本に許可を貰ったのを良い事に、一護はスススと二人の側まで近づいた

「隊長は十番隊だけでなく瀞霊廷一のあいどるだもの」
「・・・アホなこと言ってんじゃねぇよ」
「へ〜すげぇんですね」
「てめぇも感心してんじゃねぇ!」

そんな感じで松本を交えて会話をしていると、四番隊隊長の卯ノ花がやってきた


「傷の方は綺麗に塞がっております、後も残らず完治するでしょう」
「すまないな」
「いえ。ですが、体力と霊力が回復するまではこちらに居ていただきます」
「いや・・・今すぐ十番隊に復帰する」
「はぁ?」

日番谷の言葉に驚いたのは一護だけで、卯ノ花と松本は「やっぱり」といった表情をした

「何言ってんだお前。そんなの無理に決まってんだろ?」
「昨日から五月蝿いな・・・馬鹿かお前は・・・」
「馬鹿はお前のほうだ!」

睨み合う二人
その間に卯ノ花が入った

「解りました。許可します」
「へ?アンタも何言ってんだ?」
「・・・ですが決して無理をしないと、松本副隊長が無理だと判断したらすぐに休むと約束してくださるのなら」
「・・・解った」

日番谷の言葉ににっこりと笑って卯ノ花は部屋を出て行く
その後を追い、一護は卯ノ花を呼び止めた

「卯ノ花さん!」
「・・・はい?」

卯ノ花はゆっくりと振り返った

「なんで許可したんだ?まだアイツは入院してなきゃ駄目なんだろう?」
「・・・私が何と言っても、あの方は職務に復帰されたでしょう」
「それを止めるのがアンタじゃねぇのか!?」

声を荒げる一護に卯ノ花は「そうしなければなりませんが」と悲しそうな表情をした

「私や松本さん、この瀞霊廷の死神ではあの方を止める事は出来ないのです」
「それって・・・どう言う事なんだ?」

一護の質問に、卯ノ花は「失礼します」と一度頭を下げて去っていった



そして一護が戻ると、日番谷と松本の姿は無く
十番隊へ戻ったのだとわかった

「無茶苦茶だ・・・アイツ」



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