恋をしよう 第零話
それは、日番谷が市丸に告白する一ヶ月前の話
「そんじゃ、日番谷君に告白する相手は藍染隊長って事で」
「・・・僕なの?朽木隊長でも良いんじゃない?」
「・・・・遠慮する」
「え〜京楽、俺じゃだめなのか?」
ここは一番隊
隊首会が行われている広間
三番と十番を除いた隊長が集まっていた
「浮竹だと彼らが本気にならないでしょ」
「そんな事無いぞ」
「・・・・あのね・・・」
先ほどから彼らは『誰が冬獅郎に告白する役になるか』で揉めていた
事は先月の隊首会でのお話に遡る
「私、先週面白い番組を見ましたの」
という卯ノ花隊長のセリフから始まった
この時、三番隊と十番隊は別々の任地ではあるが
揃って尸魂界を留守にしていた
「面白い?なんだい?」
それに反応するのは藍染と京楽
朽木にいたっては最初から聞いていないし
東仙と狛村も二人でのんびりと会話をしていて
やはり会話に参加していなかった
「現世の番組で、片思い又は両思いなのに
告白できない者達をサポートし、恋人同士にしてしまおう
という番組ですわ」
へぇ〜と感心していると、ちょうど今から始まる時間なのだという
そこで見てみることにした
『恋のキューピッド大作戦』
会社の同僚の男性に長い間憧れていた女性
しかし、男性にとって自分は単なる同僚
特別付き合いがあるわけではない
毎日の挨拶や仕事上での会話しかない
この想いをずっと心にしまっておこう
そう思っていた女性に別の男性から愛を告げられた
『好きな人がいる』と言っても
気が変わるまで待つ、と言ってくれる男性
揺れる彼女
『あの人にこの気持ちを告げないことには、彼に返事ができないんです』
我々は彼女のサポートをすることに
果たして、彼女の恋の行方は???
「・・・・憧れていた男性とくっつく可能性は低いんじゃない?」
「そうだね、殆ど会話がないんじゃね」
「それがどうなるか・・・そこが楽しのではありませんか」
まぁ、それは良いとして
「・・・卯ノ花隊長はどんな意図があって我らにこれを?」
「あら、朽木隊長は鋭い方ですわね」
話題に参加していないと思っていた朽木だったが
しっかりと番組は見ていたようだ
ニッコリと笑った卯ノ花はポッと顔を赤らめてこう言った
「私も、誰かの恋を叶えて差し上げたいのですわ」
と
護廷は平和で隊長達は暇なんだ
とは後日誰かがもらした言葉
それは事実であり、彼らはとことん暇であったようで
卯ノ花の望みは全員の望みとなった
そしてそのまま隊首会は時間延長
急遽『恋のキューピッド大作戦in尸魂界』
の作戦会議が開かれた
「朽木君の所の阿散井君と妹さんなんかどう?」
「・・・ルキアは嫁に出さん」
「・・・うわ〜これから苦労するね、彼」
「檜佐木君は?」
「修兵?」
「松本君でしょ?」
「・・・希望は少ないように思えるが・・・」
「松本君じゃねぇ」
「雛森くんと吉良くんでは?」
「彼女は君にゾッコンじゃないか
結果は眼に見えてるよ」
残念ながらなかなか候補が決まらない
彼らがうんうんと唸っていると卯ノ花が呆れたようにため息をはいた
「皆様ときたら普段何を見ているんでしょうか」
「へ?」
「卯ノ花君、誰か良い候補でも?」
「ええ、とっておきのお二人が」
それが三番隊 市丸ギン と十番隊 日番谷冬獅郎
卯ノ花の話ではこの二人なら必ず上手く行くという事だった
しかし、この二人こそあまり接点のない二人ではないか?
と一同は思った
同位の隊長同士だが
隊首会でも立ち位置が離れているし
元上司と部下でもない
同期でもない
趣味も全く違う
こんな二人で大丈夫か?という声は卯ノ花の微笑で消された
「大丈夫です!私の勘を信じてくださいませ」
結局
藍染=日番谷に告白
卯ノ花=藍染の浮気相手
浮竹=日番谷の相談役
他=状況に応じて何らかの行動をする
(例
藍染が日番谷に告白した店が混んでいたのは
朽木が隊の席官たちを大勢あの店に招待していた為
=藍染と日番谷の話を瀞霊廷に広める為)
「では皆様、作戦成功を祈って乾杯」
「「「乾杯」」」
かくして、市丸と日番谷にとって
迷惑この上なかった計画が始動した
恋をしよう
改め、
恋のキューピッド大作戦in尸魂界
終
」