あなたの『一番ほしいもの』

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「俺が『贈りたいもの』・・・か」



昨日、松本に言われてからずっと考えてみた

思いつかない



フラフラと街を歩いて色んなものを見てみたけれど、『コレっ』てくるものがねぇ

そもそも自分が一護に何を『贈りたい』のかわからない



なさけねぇな



「日番谷隊長?」

後ろで俺を呼ぶ声、振り返るとそこに居たのは

「朽木」



朽木ルキア 一護が死神代行になった原因。俺が一護と出会ったきっかけ



「どうされたのです?お一人で」

「お前こそ何やってんだ?」

ルキアの手にはウサギのがま口

買い物だってのは見て解る



「明日は一護の誕生日なので」

つまりは俺と一緒、プレゼント選びってことか



「誰かのプレゼントを買うなどと、初めての事なので何を買っていいのやら決めかねてしまって」



どうやら昨日、松本たちと一緒に買いにきたものの、その日には決められず、今日改めて買いにきたらしい



「初めてって白哉や恋次のは?」

「兄さまには、私が贈っても迷惑でしかないのでは?と昔は思っていましたので、恋次とも護廷十三隊に入ってからは縁遠くなってましたし・・・」



そう言えば、このルキアと白哉はあの藍染の一件までギスギスした兄妹だったっけ

あの一件以来、白哉は誰憚ることなく『妹自慢』をしているのだと、恋次が言ってたな



なんとなくルキアについて行ってしまい、彼女のプレゼント選びに付き合うことになってしまった

ルキアはしきりにガラスのコップの辺りをうろついている

ここは昨日松本たちと来た店らしい



「これに決めました」

やがてルキアは一個のグラスを手に取った

何か特別な細工や絵柄が描かれているものではなく、とてもシンプルで、少しだけ青味がかったガラスで出来ていた

「先日、いつも使っているグラスが割れてしまったのだ、と言っておりましたので」



ああ、じゃぁ一護が『欲しかったもの』はグラスだったのか

俺ではなくルキアが買ってしまった

流石にいくら『欲しかったもの』でも二個もいらねぇよな



松本は、俺が贈りたいものをあげればいいと言っていたが、俺にとって『贈りたいもの』はやっぱり、一護の『一番欲しいもの』なんだ



なのに、「それ」を俺じゃない、ルキアが買ってしまった



泣きそうだ



一護にプレゼントが贈れない