俺は今、凶悪な顔で歩いているんだろう
さっきからすれ違う死神や、前を歩いていた死神が道をあけてくれる
イライラする
何が関係ないだ!
何が心配しなくていいだ!
それならもう心配も口出しも二度としてやるものか!!
「一角!!」
十一番隊の道場へズカズカ上がりこむ
「おう!一護じゃねぇか、何しに来た?」
「ストレス解消!暴れさせろ!!」



それから俺は十一番隊の奴等をぶっ飛ばし続けた

「気ぃ晴れたか?」
どのくらいの時間暴れてたのか解らないが、一角が声をかけてきた時点でまともに喋れるヤツは俺と一角だけになっていた
「まぁまぁだ」
「これだけ暴れといてまぁまぁかよ?やっぱ隊長呼べば良かったか?」
やめてくれ、と首を横に振る
アイツがいたらストレス発散どころか命賭けになるだろうが!
「で?」
「あん?」
「何にイラついてやがったんだ?」
「それは・・・」
言えば情けないし、言わないとここまで付き合ってくれたんだから何だか悪いし・・・どうしよう
「いっっっかくーーーー!」
遠くから一角の名を呼びながら近づいてくるこの声は
「弓親だな」「ああ」
「聞いたんだけど一護と日番谷隊長が・・・って一護いたのか」
「おう」
俺と冬獅郎がなんだって弓親
何を知ってるんだ?
「・・・ただの痴話喧嘩じゃねぇか」
「うっせ!」
「きっとイラついてウチあたりに憂さ晴らしに来ると思ったんだよね。それを一角に伝えようと思ってきたんだけど・・・」
弓親はキョロキョロと辺りを見回し、まだ転がったままの隊員たちを見て笑った
「思いついたら即実行なんだねぇ」
「悪かったなぁ、短絡思考で」


訳を知った一角と弓親に「飲んで忘れろ」と飲み屋に連れ込まれた
(恋次と違って飲むなとは一言も言わなかった)
散々飲んで酔っ払って、再び十一番隊へ
今日はここに泊まらせてもらう
「ぅおい、一護!」
「あ〜?」
「気ぃ晴れたか?」
部屋に入った途端、頭まで真っ赤にした一角がニヤリと笑いながらさっきと同じ質問をしてきた
「・・・まぁまぁだ」
俺は同じ答えを返した
きっと何をしたって気が晴れる事は無い
「ふーん・・・」
それなら、と部屋の戸棚をごそごそやった一角は酒瓶を一本取り出した
「飲みなおしだ!」

「う〜・・・もう飲めねぇ・・・」
一角め。わんこそばじゃあるまいし飲んだら飲んだだけ酒を注ぎやがる・・・もう駄目だ・・・
「なぁにがもう飲めねぇだ!まだイケル!お前ならやれるぞーーー!」
俺を殺す気か!
誰かコイツをなんとかして・・・
俺はバタっとテーブルに倒れた
「あははは!なっさけねぇな、ぶっ倒れやがった」
ハイハイ。俺は情けないヤツですよ
なんかもう・・・弱音吐きたくなってきた
「なぁ一角」
「あ〜?」
「俺と冬獅郎ってこのままで良いのかな?」
「このままって?」
「好きでいていいのかって事」
一角の雰囲気がさっきまでと変わっている
俺の話をちゃんと聞いてくれるみたいだ
「何でそう思う?」
「住む世界が違うし、アイツ隊長やってて大変そうだし、・・・男同士だし・・・」
「・・・誰かに何か言われたのか?」
「いや。だけどいつかは誰かに言われるかもな・・・別れろって」

「んじゃ別れれば?」
あっさりと一角は言いやがった
「ウダウダ考えちまうくらいならさっさと別れたらいいんじゃね?」
「つーかそのほうが良いかもな。隊長は護廷を引っ張っていく一人なんだしお前と付き合ってる場合じゃないよな、んで、お前は現世で人生楽しめば良いし」
「丁度喧嘩もしたし、このまま自然消滅って事で良くねぇ?」
満面の笑みの一角
冬獅郎と別れる?
喧嘩して自然消滅?
そんなの・・・
「絶対にイヤだ!!」
突然叫んだ俺に、一角は眼を大きく開けて驚いている
「アイツと別れるなんてありえねぇ!ふざけんな!てめぇにとやかく言われたくねぇんだよ!!」
一角を思い切り睨みつける
だがコイツはくくく、と笑い出した
「何だよ?」
「なんでぇ。悩む必要ねぇじゃねぇか」
本物の馬鹿だな、と更に笑う
「誰がなんと言おうが別れる気なんてねぇんだろ?」
「だったら、お前のくだらない悩みも答えは最初から決まってんじゃねぇか」